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ノウハウ 電子帳簿保存法のスキャナ保存要件とは?スマホ保存についても解説

更新日:2024年10月31日

投稿日:2024年04月1日

電子帳簿保存法のスキャナ保存要件とは?スマホ保存についても解説

電子帳簿保存法のスキャナ保存要件とは?スマホ保存についても解説

2022年より、電子帳簿保存法での「スキャナ保存」に関していくつかの要件が変更されました。

社内DXの一環として紙からスキャナ保存への切り替えを検討している企業は、電子帳簿保存法で定められた要件を事前に知っておく必要があります。

 

そこで今回は、電子帳簿保存法の改正後のスキャナ保存要件をはじめ、スキャナ保存の対象書類やメリット・デメリットなどを徹底解説します。

 

 

電子帳簿保存法におけるスキャナ保存とは

電子帳簿保存法における「スキャナ保存」は、紙で受け取った契約書・領収書・請求書などの対象書類をスキャンして、電子データとして保管することです。

 

対象書類をスキャナ保存するにあたって、タイムスタンプを付与したり検索機能を確保したりといった要件を満たさなければなりません。

その要件を定めた法律が、電子帳簿保存法です。

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法とは、国税関係帳簿・決算書類・取引書類などの電子保存を認める法律です。

電子保存の形式については、書類のカテゴリごとに以下の3種類に分類されています。

 

保存形式

概要

電子帳簿保存

パソコンで作成した国税関係帳簿・決算関係書類・取引関係書類のデータを保存する際の形式

スキャナ保存

紙で受け取った取引関係書類をスキャンのうえ保存する際の形式

電子取引のデータ保存

電子データで受け取った書類や明細などを保存する際の形式

 

電子帳簿保存法では上記それぞれの保存形式で要件が定められており、対象書類を電子保存する際はその要件を満たせるように環境を整える必要があります。



▶【徹底解説】電子帳簿保存法改正とは?要件、対象の事業者などをわかりやすく解説

2022年に改正電子保存法が施行!スキャナ保存要件の変更点とは

2022年1月1日に施行された改正電子帳簿保存法では、本記事のテーマであるスキャナ保存の要件についても複数の点が変更されています。

 

まずはスキャナ保存要件の主な変更点についてご紹介します。

税務署長の事前承認制度(届出)の廃止

改正前の電子帳簿保存法では、スキャナ保存を行う前に所轄の税務署長から承認を得るための届出が必要でした。

しかし改正後は事前の届出が不要となり、環境さえ整えればいつでもスキャナ保存を開始できるようになっています。

タイムスタンプ要件の緩和

タイムスタンプは、特定の時刻に対象の電子データが存在しており、それ以降改ざんされていないことを証明するための技術です。

 

従来の電子帳簿保存法では、スキャナ保存の際に書類を受け取ってから3日以内に自署とスキャンデータへのタイムスタンプ付与が必要でした。

改正後は、自署が不要かつタイムスタンプ付与までの日数が「最長2ヵ月+おおむね7営業日以内」と大幅に変更されています。

適正事務処理要件の廃止

適正事務処理要件とは、国税関係書類の受領から入力までの事務処理に関する規定に基づき定められた要件のことです。

スキャナ保存の場合は、この要件を満たしながら事務処理をする必要がありました。

 

改正後は適正事務処理要件が廃止されたため、スキャナ保存のハードルが下がりました。

検索要件の緩和

電子帳簿保存法におけるスキャナ保存では、保存している書類データを絞り込み検索ですぐに確認できる状態が求められています。

 

改正前は取引年月日や勘定科目などの項目を検索条件に設定する必要がありましたが、改正後の現在は以下の3つを満たせば問題ありません。

 

・取引年月日、取引金額、取引先の3つで検索できること

・日付か金額の範囲指定で検索できること

・2種類以上の任意の項目を組み合わせて検索できること

 

なお、税務職員からのダウンロードの求めに応じられる場合は、「日付か金額の範囲指定」と「2種類以上の任意の項目の組み合わせ」を満たす必要はありません。

解像度・階調・大きさに関する情報保存の廃止

電子帳簿保存法では、スキャナで読み込む際の解像度・階調・大きさに関しても要件が定められています。

従来はそれらの情報保存が必要でしたが、改正後は不要となりました。

ただし、改正後も解像度や階調などの読み取りに関する要件そのものは変わらないため、要件を満たせているか都度表示するなどして確認できるようにしておく必要があります。

スキャナ保存に必要な要件

先述した変更点を踏まえ、電子帳簿保存法をもとに定められたスキャナ保存要件の全体像をご紹介します。

 

スキャナ保存要件は、大きく分けて「機器の設置」「システム要件」「運用方法の要件」があります。

それぞれの具体的な内容は、以下の通りです。

機器の設置

対象書類をスキャンするためには、以下の要件を満たせる機器を設置する必要があります。

 

・200dbi(A4サイズで約387万画素相当)以上の解像度

・カラー画像による読み取り 一般書類の場合、カラー画像ではなくグレースケールでの保存可

システム要件

スキャンしたデータを保存するシステムについては、以下の要件が定められています。

 

画像の解像度

200dbi(A4サイズで約387万画素相当)以上

色調

・重要書類:カラー画像(赤・青・緑の階調が256階調以上)

・一般書類:グレースケールでも可(注)

タイムスタンプ付与

・重要書類:1データ単位で所定の期間内に付与すること

・一般書類:1データ単位で適時付与すること

バージョン管理

書類データの記録事項について訂正・削除を行った場合、その事実と内容を確認できること(または訂正・削除が不可能であること)

帳簿との相互関連性の確保

・重要書類:スキャンした書類データとそれに関対応する帳簿の記載事項の関連性を確認できること

・一般書類:不要

検索機能の確保

以下の要件による検索が可能であること

・取引年月日、取引金額、取引先

・日付か金額の範囲指定

・2種類以上の任意の項目の組み合わせ

見取可能装置の備え付け

・重要書類:14インチ以上のカラーディスプレイ、カラープリンター(見取可能装置)と操作説明書を備え付けること

・一般書類:グレースケールでの保存なら、カラー対応でない見取可能装置でも可

システム書類の備え付け

スキャナ保存に対応したシステムの概要書や操作説明書などを備え付けること

(注)一般書類向けのルールを採用する場合は、事務の手続(責任者、入力の順序や方法など)を明らかにした書類を備え付ける必要があります。

 

なお、重要書類とは契約書・納品書・請求書・領収書など、一般書類は見積書・注文書・検収書などが該当します。

運用方法の要件

スキャナ保存を実施する場合の運用方法についても、要件が定められています。

 

重要書類の場合、受領してから以下2通りのうちどちらかの方式で記録・保存をしなければなりません。

 

早期入力方式

書類を受領からおおむね7営業日以内に記録・保存する

業務処理サイクル方式

業務の処理に係る通常の期間(最長2ヵ月)の経過後、おおむね7営業日以内に記録・保存する

 

原則として早期入力方式をすることになっていますが、業務処理の期間が社内規定で定められている場合、書類を受領してから最長2ヵ月+7営業日以内に記録・保存する必要があります。

 

一般書類には運用方法の要件がないため、適時記録・保存すれば問題ありません。


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スキャナ保存の対象書類

電子帳簿保存法におけるスキャナ保存の対象は、「国税関係書類」という大枠にある「取引関係書類」です。

取引関係書類には、資金や物の流れに直結・連動する重要書類と資金や物の流れに直結・連動しない一般書類があります。

 

それぞれに該当する書類の具体例は、以下の通りです。

 

重要書類

・契約書

・領収書

・請求書

・納品書

・預金通帳

・信用証書

・小切手

・輸出証明書  など

一般書類

・見積書

・注文書

・検収書

・入庫報告書

・貨物受領書  など

対象書類のスキャナ保存は義務?任意?

先述した対象書類を紙で受け取った場合、それをスキャナ保存するかどうかは任意です。

ただし、スキャナ保存をするのであれば電子帳簿保存法に基づく要件を満たす必要があります。

スキャナ保存はメリット・デメリットのどちらも存在するため、自社の状況に合わせて実施を検討しましょう。

スキャナ保存に対応するメリット

スキャナ保存に対応することで得られるメリットとしては、以下の3つが挙げられます。

保管スペースを節約できる

スキャナ保存の対象である国税関係書類は、法人・個人にかかわらず一定期間の保存が義務付けられています。

しかしすべて紙で保管していると、書類が増えるにつれて保管に必要なスペースも広がっていきます。

 

しかし要件を満たしたスキャナ保存に対応すれば、書類の保管にスペースを確保する必要がなくなり、業務環境の改善につながります。

検索性が上がる

過去の取引について確認が必要となったとき、ファイリングした書類を1枚ずつめくって遡っては手間と時間がかかります。

一方で書類をスキャナ保存しておけば、取引の日付や取引先などの条件で絞り込み検索をして、すぐにデータを引き出すことが可能です。

検索性の向上により、生産性も改善されます。

業務効率化につながる

書類を紙で保管する場合、後から遡ることができるように書類をファイリングし、そのファイルにラベルをつけてキャビネットなどに規則どおり入れる…という作業を伴います。

また、書類の保存期間が過ぎて処分する際にも、情報漏えい対策を考慮したやり方を考えなければなりません。

 

スキャナ保存で電子データに変換すれば、上記のような作業は不要です。

所定のシステムにデータを保存し、不要となれば画面上の簡単な操作で破棄できるため、その分業務効率も改善されます。

スキャナ保存に対応するデメリット

スキャナ保存には複数のメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあるため注意が必要です。

機器の購入などでコストがかかる

スキャナ保存には、要件を満たしたスキャナやディスプレイなどの機器が必要です。

要件を満たした機器を所有していないとなれば、導入のために少なくないコストがかかります。

法律を遵守するための運用ルールの整備が必要

電子帳簿保存法を遵守する形でスキャナ保存するためには、まず定められた要件の把握とそれに合わせた運用ルールの整備が必要です。

また、受領した書類をスキャンする作業も必要になるため、従来の業務フローに変更が生じる可能性もあります。

スムーズにスキャナ保存を導入するためには、スケジュールに余裕をもって運用ルールの整備に取り組まなければなりません。

運用ルールの周知に手間がかかる

スキャナ保存に対応した運用ルールを整えたら、担当者に正しくスキャナ保存を行ってもらうための周知も必要です。

場合によっては社内研修や教育に取り組まなければならず、スキャナ保存の開始までに手間と時間がかかります。

スキャナ保存に対応する場合の注意点

スキャナ保存をスムーズに導入し、適切に運用していくには以下の点に注意が必要です。

破棄リスクを伴う書類がある

スキャナ保存の対象書類には契約書も含まれていますが、紙で受領した場合はできるだけ原本も保存しておきましょう。

万が一契約について紛争が生じたとき、「証拠になるかどうかの確実性という点」は紙が勝ります。

 

また、収入印紙も原本は破棄せず保管しておきましょう。

印紙税法では、スキャナ保存された収入印紙のデータはコピーという扱いになり、納税した証拠としての効力は持たないからです。

スキャナ保存要件に対応したシステムを活用する

スキャナ保存ではタイムスタンプや検索機能の確保など数多くの要件が定められており、すべてを自社で対応するとなれば多くのリソースを割くことになります。

より手軽にスキャナ保存を導入するのであれば、スキャナ保存要件に対応したシステムの活用がおすすめです。

 

例えば「ContractS CLM」では、スキャナ保存した書類へのタイムスタンプ付与が可能など、要件を満たしながらの運用を無理なく続けられる機能が搭載されています。

スキャナの性能が要件を満たすか調べる

書類をスキャンするための機器をすでに所有している場合でも、スキャナ保存の導入前に性能を確認しておきましょう。

解像度やカラー対応の有無など、要件を満たすための性能を備えていなければ正しいスキャナ保存は実施できません。

スキャナの代わりにスマホを使った書類保存はあり?

書類をスキャンするための機器といえば、「スキャナ」や「複合機」がイメージされがちです。

しかし、電子帳簿保存法上はスマホのカメラ撮影よるスキャナ保存でも可能です。

 

もちろんスマホを使った保存でも、スキャナ保存の要件を満たす必要があります。

十分な解像度で写真撮影が可能なスマホを使い、撮影した書類のデータをシステムにアップロードしてタイムスタンプを付与するなど、要件を満たすための運用フローを定めておきましょう。

スキャナ保存するなら要件の把握とシステムの活用が重要!

契約書や請求書などの「国税関係書類」は、紙で受け取った場合もスキャナで電子データに変換して保存できます。

 

しかし、対象書類をスキャナ保存する場合は機器・システム・運用方法に関する様々な要件を満たさなければなりません。

 

また、スキャナ保存にはメリット・デメリットも等しく存在します。

スキャナ保存を導入する際は、それが自社に適した手段かどうかをよく考え、要件を把握のうえ正しく保存するためのシステムを活用することが大切です。

 

▶電子帳簿保存法対応のシステム選びのポイント

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