ノウハウ BPRとは?メリット・デメリットや進め方などわかりやすく解説
更新日:2024年10月17日
投稿日:2024年03月18日
BPRとは?メリット・デメリットや進め方などわかりやすく解説
近年、国内企業の間で「BPR」の注目度が高まっています。
BPRの実施により、生産性や業務効率の向上・リスクマネジメントの強化・コストの削減といったメリットを得られます。
今回はBPRの意味や目的・注目される理由・メリットとデメリット・進め方などについて分かりやすく解説します。
BPRの成功事例もご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
BPRとは?
BPRとは「Business Process Reengineering」の略称で、業務改革という意味があります。
業務本来の目的に併せて既存の業務プロセスを全体的に見直し、業務フロー・組織体制・情報システムなどを再構築するという考え方です。
業務プロセスとは具体的に、特定の業務開始から終了までの一連の流れを指します。
なお、「業務改善」や「DX」と混同されることもありますが、それぞれ異なる意味を持つ言葉です。
以下より、BPRが行われる目的や業務改善・DXとの違いを解説します。
BPRの目的
BPRを実施する主な目的としては、業務効率化・生産性向上・コスト削減・従業員満足度の向上などが挙げられます。
社内部署の分業化・専門化が進むにつれて、各部署における業務が個別に最適化されていくのはよくあるケースです。
結果として全体の業務プロセスが分断されて効率が低下する他、無駄な業務の発生によるコストの増幅なども起こり得ます。
そのような事態を防ぐための取り組みが、BPRです。
BPRと業務改善の違い
業務改善とは、業務に関わる人・モノ・情報といった一部の要素の無駄を削減する取り組みを指します。
BRPのように業務プロセスそのものは変更しないことが特徴で、必要な部分だけ見直し・改善してスムーズに業務を遂行できるようにします。
BPRとDXの違い
DXは「デジタルトランスフォーメーション」の略称で、デジタル技術を活用して業務を改善する取り組みです。
クラウドやAIなどのデジタル技術で組織体制や業務プロセスを改善し、ビジネスモデルを変革して企業としての優位性の確立を目的としています。
一方で、BPRは既存の内部プロセスを見直して無駄を削減し、業務改善を図るのが目的です。
DXのように、ビジネスモデルの変革のために行うものではありません。
BPRが注目される背景
BPRは1990年初頭にアメリカで提唱された概念ですが、なぜ30年以上もの時を経て再び注目を集めているのでしょうか。
その背景には、近年の「社会的・市場的変化」と「デジタル技術の活用推進」があります。
社会的・市場的変化
『2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について(経済産業省)』で提示された生産年齢人口比率グラフでは、2020年から減少傾向が見え始めています。
また、2050年には人工1億人をし玉あり、生産年齢人口比率はピーク時の50%程度にまで減少する見込みです。
働き手の不足により既存の業務プロセスでは対応しきれなくなり、何らかの対策を講じなければ業務の縮小を余儀なくされます。
加えてグローバル化の影響による企業競争の激化も見込まれることも踏まえ、国内企業におけるBPRの重要性が高まっているのです。
デジタル技術の活用推進
『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(経済産業省)』ではDXを推進しないことによる企業にとってのリスクや現状の課題などがまとめられており、BPRと同等にDXの重要性も説かれています。
ビジネスモデルに変革をもたらすDXを推進するにあたって、既存の業務プロセスを維持したままでは思うように取り組めない可能性が高いです。
したがって、DXの推進が求められる現代の傾向に合わせてまずはBPRから取り組む必要もあります。
BPRのメリット
企業がBPRに取り組むことで、以下のようなメリットを得られます。
生産性向上と業務効率化の促進
BPRでは既存の業務フローから組織体制を見直すことになるため、業務プロセス全体の現状を俯瞰的に把握できます。
これにより、業務プロセスの中に潜む生産性・業務効率の低下を招く要因を的確に見つけることが可能です。
そのため、生産性向上・業務効率化において精度の高い対策を実行できるようになります。
顧客満足度・従業員満足度の向上
BPRの実施により業務プロセスに生じた無駄を省くことで、各従業員の負担の軽減につながります。
業務負担が軽減すれば労働時間の短縮につながり、各従業員がコア業務に集中しやすくなるため、満足度およびパフォーマンス向上にも期待できます。
結果として顧客へより良質なユーザー体験を提供でき、顧客満足度の向上という効果も現れます。
リスクマネジメントの強化
特定の従業員がいなければ進められない業務があるという、「業務の属人化問題」を抱えている企業にとってもBPRのメリットは大きいです。
業務の属人化が進むことで、以下のようなリスクが生じます。
・業務のブラックボックス化により効率が低下する ・業務の品質管理が難化する ・担当社員の退職により業務の継続が困難となる |
BPRに取り組めば業務プロセスを抜本的に見直すため、改めて業務を標準化させたりマニュアルを作成したりといった対応ができ、属人化の解消が可能です。
主に属人化に伴うリスクマネジメントを強化する手段としても、BPRは有効と言えます。
コスト削減
事業を続けていると、知らぬ間に業務プロセスの中に無駄な工程が生じており本来は不要な経費や人件費を出し続けていたというケースも珍しくありません。
BPRに取り組めば、業務プロセスの見直しを通じて無駄なコストが発生している要因も把握できます。
その要因に合わせた対策を講じることで従来よりも資金に余裕が生まれ、自社の成長に向けてより多くの投資ができるようになります。
BPRのデメリット
BPRは企業に様々なメリットを生み出す一方で、以下のデメリットも潜んでいるため慎重な実施が重要となります。
工数・費用に関する課題
BPRは業務プロセス全体を対象として再構築に取り組むため、相応に多くの工数と費用を要します。
詳細は後述しますが、基本的な工程だけでも従業員へのヒアリングや観察を通した現状の把握、データ分析、対応策の検討は必須です。
予想以上に手間がかかるからといってBPRを途中で断念すると社内に混乱が生じ、更なる状態の悪化につながります。
また、対応策の内容によっては新しい設備やシステムの導入に伴い多額のコストが発生する可能性もあります。
そのためBPRを実施するなら、一連のフローを完遂させるための入念な計画と実施後の費用対効果を意識した対策検討が必要です。
社内調整が必要
BPRの実施にあたって従来の業務プロセスから大きな変更が生じる場合もあり、従業員によっては混乱したり抵抗感を覚えたりする可能性も考えられます。
従業員が被る影響を考慮し、BPRの実施が決定したらその必要性や具体的な変更内容を社内に周知することが大切です。
これを怠ると、経営層と従業員の間に軋轢が生じてプロジェクトが失敗に終わる恐れもあります。
BPRを進めるには
BPRは、どのような流れでどのように進めるべきなのでしょうか。
ここでは、BPRの基本的な進め方と手法をご紹介します。
BPRの進め方
BPRの基本的な進め方は、以下の通りです。
1【検討】 BPRの目的・ゴールと対象業務範囲について検討する 2【分析】 現状の業務プロセスを見直して課題を洗い出す 3【設計】 洗い出した課題に基づき、改善するための戦略や方針を策定する。 さらに改善で大きな効果が見込めるものから優先順位をつけてプロセスを設計する。 4【実施】 BPRを実施する。 その間、取り組みが方針から逸れていないか・目的は達成できているかを定期的に確認する。 5【モニタリングと評価】 プロセスの問題点の有無や進み具合、実際に現れた効果の程度などを評価する。 必要に応じて修正も行う。 |
BPRの手法
BPRに用いられる代表的な手法は、以下の通りです。
手法 | 概要 |
業務の仕分け | 既存の業務を詳細に見直して優先順位をつけ、優先順位が低い業務は廃止やアウトソーシングを検討する |
ERPの活用 | 財務会計管理・予算管理・人材管理・在庫管理などの業務に活用できる「ERP(基幹系情報システム)」で日々の業務を管理する |
BPOの活用 | 「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)」で特定の部門やビジネスプロセスをそのまま外部企業に委託する |
シックスシグマ | 統計学を利用して事業経営の中で起こるミスを最小限に抑え、顧客満足度向上と品質改善を図る手法。 |
BPRを成功させるポイント
BPRは簡単な取り組みではなく、やり方を誤ると失敗に終わるリスクも十分に考えられます。
BPRを成功へ導くには、以下のポイントを意識することが大切です。
自社が抱える問題を明確化させる
BPRを実施するにあたって、現状の見直しと課題の洗い出しは必要不可欠です。
このフェーズを怠ると、BPRの方向性を定められずプロジェクトの開始すらままならない状態となります。
現場の従業員に任せきりにせず、経営層自らが自社の現状を理解したうえでBPRの方針を明らかにして組織全体に伝える必要があります。
プロジェクトのリーダーに適した人材を探す
BPRの実施前に、プロジェクトのリーダーを自社の人材から選任できるかどうかも確認しましょう。
企業によっては外部のコンサルタントに協力を依頼することもありますが、コンサルタントは必ずしも自社内に常駐したり完遂までフォローできるわけではありません。
プロジェクトの進捗状況を常時把握・管理して目標通りの方向性に導くプロジェクトリーダーは自社の人材が望ましいため、事前に探しておくことが大切です。
PDCAサイクルを継続させる
BPRの効果を高めにあたって、主要なプロセスを完遂したらそれで終了ではなく効果測定・改善・試行を繰り返す必要があります。
BPRの実施中に情報収集できる仕組みを構築し、評価結果に基づいてその都度異なる改革手法を採用する企業も多いです。
契約業務におけるBPRの成功事例
BPRを実施した企業は、具体的にどのような効果を得ることができたのでしょうか。
ここでは、「ContractS CLM」を用いたBPRの成功事例を2つご紹介します。
契約フローのすべてをContractS CLMで可視化
株式会社清和ビジネスでは従来、契約業務の多くを紙ベースで運用していました。
担当者は法務業務から契約書チェックまですべて担っており負担が大きいだけでなく、契約依頼・敬意の確認やレビュー内容などの情報も一元管理できておらず、情報の煩雑化が問題に。
そこで「ContractS CLM」を活用し、契約書作成・レビュー・承認・締結・管理まで、契約業務におけるすべての工程を一元管理する方法に切り替えます。
その結果、業務量や「収入印紙・郵送費」といったコストの削減に加え、契約業務に関する情報が一箇所に集約されたことで属人化の解消と業務効率化にもつながりました。
全国支店の契約業務を集約
日本システムバンク株式会社は「システムパーク」ブランドで全国7,000ヵ所にコインパーキングを展開しています。
コインパーキングを開設する際、土地所有者との契約締結は基本的に紙ベースで行っており、契約書の作成は総務部が担っていました。
しかし契約書の管理体制は全国に位置する各拠点でバラつきがあり、本社で進捗状況が把握できなかったり、拠点から届く契約書作成依頼の方法が異なったりして契約業務が煩雑化。
この現状を改善すべく、同社は契約書依頼から管理までの業務を「ContractS CLM」で対応し、全国7,000ヵ所の契約を集約させます。
本社で拠点ごとの契約進捗状況を管理できるようになった他、過去の契約書もContractS CLMにアップして検索性が向上したという効果も現れました。
BPRで大きな効果を得るなら正しい理解と慎重な進行が重要
BPRとは既存の業務プロセスを抜本的に見直して改革することで、生産年齢人口の低下やDX推進の必要性が説かれている現代において重要な取り組みです。
BPRは時間・コストや社内調整に伴う手間がかかりますが、生産性・業務効率・従業員満足度・顧客満足度の向上やリスクマネジメントの強化など大きなメリットが得られます。
進め方としては検証から評価までの5ステップが基本的な手順ですが、どのような手法を採用すべきかは各社が臨むビジョンによって異なります。
本記事でご紹介した成功事例も参考に、BPRを正しく理解のうえ慎重に計画を立てて自社の成長を促進させましょう。