ノウハウ ビジネスで使うRFPとは?記載内容をサンプル付きでわかりやすく解説
更新日:2024年10月17日
投稿日:2024年03月18日
ビジネスで使うRFPとは?記載内容をサンプル付きでわかりやすく解説
自社に新たなシステムを導入するにあたって、「RFP」が必要となることがあります。
RFPとは外部へシステム開発を依頼する際、自社に最適な仕様に開発してもらうために欠かせないものです。
今回はRFPとは何か、RFIとの違いと併せて詳しく解説するとともに記載内容・サンプルや基本的な作成手順もご紹介します。
RFPとは
RFPとは正式名称を「Request for Proposal」といい、直訳すると「提案依頼書」という意味があります。
ビジネスにおいては業務委託の際に発注者が受注者へ提示する文書のことで、システム導入・システム開発の分野で用いられることが多いです。
主な記載内容としては、自社が抱えている課題やシステム導入に至る経緯、自社がシステムに求める機能等があります。
なお、RFPはすでに依頼が決定した受注者へ提示するのではなく、受注者選びに際して候補となっているベンダーへ提示します。
RFPは自社が求めるシステムの仕様を詳細に記載する必要があるため作成に手間がかかりますが、自社が抱える課題解決に効果的なシステムを導入するには欠かせません。
RFPとRFIの違い
RFPに似た用語として、「RFI」があります。
「情報提供依頼書」を意味する「Request for information」が正式名称です。
発注者が開発会社に要望を伝えるRFPに対し、RFIはシステム開発会社の製品に関わる情報提供を依頼するための文書です。
RFIで得られる開発会社の基本情報に基づき、RFPで自社が求めることを明確に提示のうえ、再度開発会社に提案してもらうという流れが一般的です。
RFPを用意する目的
RFPを用意すべき目的は、システム導入後の失敗リスクを下げることです。
システム導入においてよく見られる失敗例としては、以下のようなケースが挙げられます。
・自社に必要なシステムを理解できておらず導入しても課題の解決に至らない ・開発会社から自社に適さないシステムが納品された ・開発途中で修正の必要性が生じて導入までに余計な時間・コストがかかった |
上記のトラブルは、自社と開発会社側の相互理解が不足しており生じることが多いです。
回避するには、開発会社に「どんな機能を搭載したシステムがほしいのか」「システム導入後にどうなりたいのか」といった自社の要望を十分に理解してもらう必要があります。
そういった希望をRFPにまとめて提示することで、開発会社も自社が本当に求めているシステムを開発しやすくなり、導入までスムーズに進行させられます。
RFP作成のメリット
RFPを作成することで得られる主なメリットは、以下の通りです。
・自社の要望にマッチした提案を受けやすくなる ・各社からの提案が比較しやすくなる ・発注側・受注側の認識を合わせやすくなる ・スケジュールや予算の妥当性を見直しやすくなる |
RFPがどのようにして各メリットにつながるのか、以下より解説します。
自社の要望にマッチした提案を受けやすくなる
RFP最大のメリットは、自社の要望に対して的確な提案を受けやすくなることです。
自社がシステムにどのような機能を求めるのか、なぜシステムを導入したいのかといった情報を明確化できるため、開発会社はノウハウを活かしてその要望を叶えるための提案をしてくれます。
まだ具体的な要望が固まっていなかったり、システムに関する知識がなかったりしても、システム導入の軸となる目的をRFPで伝えることができます。
各社からの提案が比較しやすくなる
RFPがないまま複数の開発会社を比較しようとすると、各社に自社の要望を伝える必要があり手間がかかります。
また、開発会社にとっても何を軸として提案すれば良いかが不明なため、各社から異なる方向性の提案が届き比較が難しくなります。
あらかじめRFPを用意しておけば、各社に要望を提示する手間を省けるだけでなく、提案の方向性もある程度定められるため比較しやすくなります。
同じ要望に対してより良い提案をしてくれる開発会社を見極められ、価格相場を把握できる点もメリットです。
発注側・受注側の認識を合わせやすくなる
開発会社へ口頭で要望を伝えると、自社の要望やシステム導入後のビジョンなどが適切に伝わらなかったり伝え漏れが生じたりするリスクを伴います。
これにより後から「言った・言わない」のトラブルが起こり、プロジェクトの進行に遅れが生じるケースも珍しくありません。
RFPならそれらの情報を文書として明確にまとめられるため、発注側・受注側それぞれの認識を合わせやすくなります。
双方で同じ認識のもとプロジェクトを進められることから、進行に影響が及ぶ心配もありません。
スケジュールや予算の妥当性を見直しやすくなる
RPFの提示後、各開発会社から納期・作業スケジュールや費用概算を記した見積書が共有されます。
システム開発の知識がないとスケジュール感や費用感は具体的にイメージしにくいものですが、RPFがあれば自社が求めるシステム導入に必要な時間・費用を客観的に示してもらえます。
これによりプロジェクトを進めるための適切な予算・時間が把握でき、必要に応じて調整できるようになります。
RFPの記載内容
RFPのフォーマットに決まりはありませんが、基本的には以下のような構成で作成されます。
概要 | ・システムを導入する目的 ・システムの導入に至るまでの経緯や自社の課題 ・システム導入後の目標 ・納品までのスケジュールや予算 ・システム運用の体制(利用人数や保守体制など) ・現在利用中のハードやソフト など |
提案要件 | ・提案してほしいシステムの内容 ・提案の範囲(システム開発だけか保守も含むのかなど) ・システムに搭載してほしい機能 ・プロジェクトの体制 ・システムテストに関する要望 ・運用保守に関する要望 ・新システムのレクチャーに関する要望 など |
選考に関すること | ・提案書の提出期限 ・提案書の提出先情報 ・評価基準 など |
その他 | ・資料や画像の提供に関する取り決め ・法務条件(契約条件や保守義務など) など |
RFPの記載サンプル
上述した構成を踏まえ、RFPの記載例をご紹介します。
概要
概要 販売管理システム導入プロジェクトに関する提案依頼書 システム導入の目的 ・販売管理業務の負担軽減と効率化 ・売上・購買データの有効活用の促進 ・ ・ 現状の課題 ・現在はExcelにデータを手入力しており、業務負担に伴う効率性の低下が目立つ ・ ・ システム導入後の目標 ・現状の課題の解決 ・〇〇万円以内でのプロジェクトの完了 ・〇〇〇〇年〇月〇日までに稼働を開始 ・ |
提案要件
提案に必要な範囲 ・システム開発 ・セキュリティレベルでの保守 ・運用メンバーへの教育 ・ 機能要件 ・見積もり作成・検索機能 ・見積もりデータを引用した受注データの自動作成 ・ ・ プロジェクトの体制 プロジェクトマネージャーを含め4人以上での開発体制を希望 システムテスト要件 単体テストから結合テストまでのテスト仕様書の提出、結果の報告を希望 運用保守要件 サーバーのセキュリティレベルでの保守を希望 教育体制 運用メンバー4名、営業部メンバー7名への運用教育を希望 サポート体制 システム本稼働後のサポート体制・受付時間・緊急時窓口などの明示を希望 概算費用 以下費用の合計金額と内訳の明示を希望 【初期費用】 ・システム開発費 ・機器導入費 ・メンバーへの運用教育費 ・ ・ 【月額費用】 ・システム保守費 ・サポート費 |
選考に関すること
提案書の提出期限 〇〇〇〇年〇月〇日 〇時まで 提案書の提出先 電子ファイル形式で以下の宛先まで提出をお願いいたします。 株式会社〇〇〇〇 〇〇部 〇〇課 〇〇〇〇 選考スケジュール 〇〇〇〇年〇月〇日~〇〇〇〇年〇月〇日:提案書の説明会開催 〇〇〇〇年〇月〇日~〇〇〇〇年〇月〇日:質問の受付期間 〇〇〇〇年〇月〇日~〇〇〇〇年〇月〇日:提案書の提出期限 〇〇〇〇年〇月〇日~〇〇〇〇年〇月〇日:一次評価の通知 〇〇〇〇年〇月〇日~〇〇〇〇年〇月〇日:提案書のプレゼンテーション 〇〇〇〇年〇月〇日~〇〇〇〇年〇月〇日:最終評価結果の通知 評価基準 ・本RFPの要件をすべて満たしていること ・短時間かつ低費用で機能の追加が可能なこと ・データの信頼性・保全性・可用性が高いこと ・サポートが充実していること ・初期費用・月額費用に関して優れた提案であること ・ ・ |
RFPの作成手順
RFPを作成するにあたって、まずはシステム導入のプロジェクトチームを設けましょう。
各関係部署の要望に合ったシステムを導入するためにも、システムの利用メンバーを中心として各部署から人員を選んで編成するのがおすすめです。
チームを設けたら、以下の手順でRFPを作成します。
1 現状の把握とシステム導入目的の設定 2 課題の解決策の決定 3 RFPの作成と提出 4 各ベンダーからの提案・見積もりを比較 5 契約するベンダーの決定 |
1 現状の把握とシステム導入目的の設定
自社とシステムのミスマッチを防ぐため、最初にシステムを導入する目的を明確にする必要があります。
関係部署の現状から解決すべき課題を洗い出し、その課題の解決をシステム導入の目的として定めましょう。
2 課題の解決策の決定
現状の課題を把握したら、如何にしてその課題を解決するかを考えます。
課題の解決に際してシステムをどう活用すれば良いのか、システム導入にあたって社内でどんな教育が必要となるのか、運用から保守までに必要な人員を自社内だけで補うかなどを定めましょう。
その際、関係部署の要望をヒアリングのうえ参考にすることが大切です。
3 RFPの作成と提出
課題とその解決策まで明確にしたら、発注先の候補となるベンダーをリサーチのうえ複数ピックアップします。
候補を絞り込んだら、ヒアリングやRFIを通じて情報を提供してもらいましょう。
その情報に基づき、自社でRFPを作成のうえ各候補に提出します。
4 各ベンダーからの提案・見積もりを比較
RFPを提出すると、各社から内容について質問される場合があるためその都度回答しましょう。
その後は期限までに提案書や見積書が提示されるため、選考チームで内容を比較しながら発注先を決定します。
5 契約するベンダーの決定
必要に応じて各社と調整を行いながら、RFPに記載した通りの基準で評価のうえ発注先の最終決定をします。
決定後はベンダーへ連絡し、必要に応じて提案書の調整を行いながら契約に進みましょう。
RFP作成時のポイント
ベンダーから的確な提案をしてもらうには、いくつかのポイントを押さえて作成することが大切です。
以下より、RFP作成時に意識したい3つのポイントをご紹介します。
システムに関する希望条件は漏れなく記載する
RFPで最も重要なポイントは、システムに関する自社の希望をすべて記載することです。
詳細は後述しますが、RFPの提出・契約後は希望条件の追加が難しくなります。
システムに搭載してほしい機能はもちろん、障害発生時のサポート体制・機能拡張の対応・データのバックアップ・保守体制など、システムを円滑に運用するための希望もすべて記載しましょう。
また、希望条件の抜け漏れや誤認につながる表現を防ぐため、複数人で内容を確認しながら仕上げていくと良いでしょう。
現状に最適な要求かどうかを見直す
システムに関する希望をRFPへ記載する前に、その希望が自社の身の丈に合ったものかどうかを見直すことも重要です。
特に、システムに搭載してほしい機能のボリュームは精査することをおすすめします。
多機能なシステムは便利なように思えますが、現場で実際に必要とされていない機能まで搭載すると操作性が悪くなったりデータ入力の手間がかかったりして、業務の効率悪化を招きます。
また、過度にハイスペックなシステムを求めると開発に必要な費用・日数が増幅し、当初設定した予算やスケジュール内に収まりきらない恐れもあります。
RFPに記載していない要件の追加は避ける
RFPを提出すると、ベンダーはその内容に基づいた費用・スケジュール・開発体制を提案してきます。
しかし提出後にRFPには記載していなかった要件を追加すると、ベンダーは新たにその要件も加味した見積もりを作成し直すことになります。
結果としてスケジュールに遅れが生じ、当初予定していたシステム導入日に間に合わなくなる可能性があります。
RFPを正しく作成して自社に最適なシステム導入へ繋げるべし
RFPとは、主に外部の事業者へシステム導入・開発を依頼する際に作成する「提案依頼書」です。
どんな機能を搭載したシステムを求めるのか、運用保守も求めるのか、予算やスケジュールはどれくらいかなど、自社の希望を漏れなく記載します。
的確な提案を得るためのRFPを作成するには、複数人のプロジェクトメンバーによる承認プロセスの構築が必要不可欠です。
まずはプロジェクトチームの編成と課題の洗い出しから始め、課題の解決に効果的な仕様のシステムを検討のうえRFP作成に取り組みましょう。