ノウハウ 【例文あり】会社内における上申書とは?書き方・ポイントを解説
更新日:2024年10月17日
投稿日:2024年03月18日
【例文あり】会社内における上申書とは?書き方・ポイントを解説
上申書といえば官公庁の手続きに用いられることがある書類ですが、場合によっては会社内でも必要となります。
ビジネスシーンに頻出する書類ではないため、自社内で実際に用いるとなってもどう作成すれば良いのか分からない方も多いはずです。
そこで今回は、上申書の意味・意見書などとの違いといった基礎知識に加え、上申書を用いるシーンや書き方をサンプル付きで解説します。
上申書とは?
上申書とは、上役や上司などへ自分の意見を申し立てる際に用いる文書です。
また、官公庁への申し立てに際して上申書が添えられることもあります。
似たような文書としては「意見書」や「嘆願書」がありますが、用いる目的がやや異なるため、それらの違いについても知っておきましょう。
「上申」とは
本来、上申とは自分よりも上の立場や公的機関に対して意見を述べることをいいます。
ビジネスシーンでも用いられることがあり、会話の中で「上申してみます」といった言葉を耳にする機会があるかもしれません。
なお、ビジネスシーンでは上申を「具申(公的機関へ意見・事情を述べる)」や「進言(上司に意見を述べる)」などと言い換えられる場合もあります。
上申書と意見書の違い
意見書は、文字通り自分の考えや意見を述べるための文書です。
一般的に、地方公共団体の議会が意見を取りまとめて内閣総理大臣や国会などに表明するための文書を指します。
また、特許申請において審査官の拒絶理由通知に対して反論する際にも使われます。
上申書と嘆願書の違い
嘆願書とは権力を持つ人や組織に対して実情を伝え、希望を叶えてもらうために提出する文書です。
刑事事件の被害者が加害者に対する処分の軽減を求めて警察官に提出したり、ハラスメントの被害者が加害者の懲戒処分を撤回してもらうために経営側へ提出したりします。
上申書を作成する目的
上申書が上の立場に意見を申し立てるための文書であることは先述した通りですが、使用目的の具体例としては以下のようなケースが挙げられます。
・警察、法務局、裁判所などの官公庁に対する申し立てや報告 ・交通違反による免許処分の緩和の要求 ・会社内で経営側や上司に対する提案や意見の申し立て |
なお、上申書は法的な文書ではなく、あくまで「自主的に意見を述べるため」に使われる文書です。
提出により意見が通る可能性が高まる場合もありますが、その効果は確約されるものではない点に注意しましょう。
会社内における上申書の種類・特徴
会社内において上申書は、以下のような場面で使われています。
・部下の昇進 ・新部署の設立 ・備品の購入 ・ハラスメントに対する改善要求 |
ここでは会社内における上申書の使用場面ごとに、詳細を解説します。
部下の昇進
自分の部下が優秀な成績を収めていたり、自社に大きく貢献していたりする場合、その部下の昇進を求めて上申書が使われることがあります。
部下の昇進を目的とした上申書には、部下の実績や能力を事実に即して具体的に記述し、直属の上司や人事決定権がある部署に提出します。
書き方によっては提出者の評価に影響する可能性もあるため、慎重に作成する必要があります。
新部署の設立
新たに部署を設立したいときも、上司に対して上申書を提出する場合があります。
新部署の設立を目的とした上申書では、設立が必要な理由や設立された後の具体的な効果、それに必要な人員などについて詳しく書くことが重要です。
最終的な決定には経営側が関わりますが、まずは直属の上司など比較的身近な立場から着実に申し立てる必要があります。
備品の購入
新たに備品の購入が必要となった場合、権限がない従業員は自己判断で購入できません。
そのため、上申書を用いて権限を持つ人へ備品の購入を申請しなければならないことがあります。
備品の購入に際して用いる上申書には、品名・モデルや価格、数量と併せてその備品が必要な理由も記します。
ハラスメントに対する改善要求
上司などから受けたパワハラなどを会社へ報告し、改善に向けた働きかけを要求する際に上申書を提出する場合もあります。
自分にハラスメントを行った人物の名前や具体的にどのようなハラスメントが行われていたのか、その行為が自分や業務にどのような影響を与えているのかなどが主な記載内容です。
なお、訴訟も検討している場合は上申書をコピーしておくと証拠として役立ちます。
会社内で用いる上申書の書き方
ビジネスシーンにおいて上申書を作成する機会は少ないため、いざ作成しようにもどのように書けば良いのか分からないというのはよくある悩みです。
ここでは、会社内における上申書の具体的な書き方をご紹介します。
会社内の上申書の構成
会社内で用いられる上申書のフォーマットに明確な決まりはありませんが、基本的な構成は他の社内文書と大きな違いはありません。
社内文書は、基本的に以下のような構成となっています。
①前付け ②本文 ③付記 |
各項目の具体的な内容について、以下より解説します。
前付け
前付けとは、文書の作成者・宛先・発信日を示す部分を指します。
一般的には以下のような情報を含むことが多いです。
・文書番号 ・発信の日付 ・宛名 ・発信者 |
文書番号とは、その文書を公文書として管理・識別するための番号です。
会社によって取り決めは異なり、文書番号が不要な場合もあるため事前に確認しましょう。
本文
文書内で伝えたい内容を伝える部分が本文です。
本文には、以下のような内容が含まれています。
・件名 ・主文 ・記書き |
複数の内容を伝えるときは、主文に加えて文書の下部に「記」と記したうえで、重要な内容を箇条書きにしてまとめます。
付記
付記では、以下のような補足事項を記します。
・追記 ・末尾 ・担当者の氏名、部署、内線番号 |
追記では、添付書類・追って書き・内容の根拠としている資料を添付します。
また、発信者と担当者が異なる場合は担当者の名前や連絡先も併記しましょう。
例文
上述した構成を踏まえて記載した、上申書のサンプルは以下の通りです。
令和〇年〇月〇〇日 〇〇部 部長 〇〇〇〇様 〇〇部〇〇課 〇〇〇〇 上申書(〇〇についての上申) 標記の件につきまして、下記に記した通り、上申いたします。 記 1.要旨 [要望する内容] 2.詳細 [要望するに至った背景やそれが必要な理由] 例:〇〇部〇〇課では先般の〇〇により~~~~という現状となっております。 つきましては、〇〇のために~~~~を上申いたします。 3.参考資料 別紙1 以上 |
会社内の上申書を作成するうえでのポイント
上申書は必ずしも要望を叶えてもらえる文書ではありませんが、適切かつ効果的な内容に仕上げることで要望が通る可能性は高くなります。
効果的な上申書をスムーズに作成するためにも、以下のポイントを意識すると良いでしょう。
上層部が読むことを前提に書く
上申書は上層部に呼んでもらう重要な文書であるため、終始丁寧に書くことを意識しましょう。
特に誤字・脱字の有無は入念なチェックが必要です。
万が一表記を誤ったまま上申書を発信すると、要望が十分に伝わらないだけでなく発信側の評価が落ちる恐れもあります。
なお、上層部宛てとはいえ上申書は社内文書なので、過度な敬語表現や事項の挨拶などは不要です。
基本的にです・ます調を守った文体であれば問題ありません。
シンプルかつ読みやすい内容にする
上申書を含め、社内文書において最も重要なポイントは「読みやすさ」です。
まず、主文では最も伝えたいことや結論を冒頭に記します。
会議やプレゼンなどの場では問題や経緯から話の主旨へつなげていくことで円滑に話し合いが進むこともありますが、上申書はあくまでも要望や共有事項を迅速かつ正確に伝えるのが目的の文書です。
そのため、まずは結論から記して「この上申書は何に関する要望が書いてあるのか」を真っ先に把握してもらう必要があります。
また、全体を通して「一文一義」の文章を心がけることも大切です。
一文一義とは「1つの文中で1つの事柄を伝える」という意味で、これを意識すれば簡潔で分かりやすい文章に仕上げられます。
社内文書は簡潔さも重要となるため、冗長な表現は避けてA4用紙1枚に収まる程度の簡潔な文章としましょう。
どうしても1枚に収まらない長さとなったら、ページ番号を割り振り別紙として用意すると良いでしょう。
意見と事実を混同させない
上申書で述べる内容では、自分の意見と実際に起きている事実を混同させないことも大切です。
例えば部署内の現状を述べる場合、事実に即した言葉選びが必要になります。
そのため「~と思われます」と曖昧な書き方はせず、事実と共に断言するのが望ましいです。
一方でその現状に対しどんな措置を講じる必要があるのかについては、自分の意見として考えを記すことが重視されます。
「意見」と「事実」のどちらを述べるべきかはケースバイケースなので、線引きを明確にして書くことを意識しましょう。
必要に応じて提出前に部下へ共有する
上申書で伝える要望によっては、提出前に部下へ共有しておくことをおすすめします。
例えば部下の昇進を求めて提出する上申書では、事実に合わせて部下の長所や成績といったポイントを詳細に記載します。
しかし作成者が認識しているからといって、部下本人が長所となり得るポイントを自覚しているとは限りません。
そして作成者もまた、部下本人の実績をすべて把握できているとも言いきれません。
作成者の自己判断だけで部下本人の長所を記した上申書を提出すると、後で行われる上長と部下の話し合いで認識の齟齬が生じる恐れがあります。
そのような事態を防ぐため、上申書を作成したら一度部下に共有して内容を確認してもらい、最適な内容に調整してから提出しましょう。
会社内での上申書の提出方法
会社内における上申書の提出方法は、会社ごとに異なります。
提出前に、必ず自社の承認フローを確認しておきましょう。
上申書について把握していない上司に提出したり、提出する部署を誤ったりすると適切に上申書が受理されず、スムーズに対応できない場合があります。
なお、上申書の提出から決裁までの有効期限に関して取り決めはないため、いつ提出しても問題はありません。
しかし上申書を通じて現状を変えるための案を伝える以上、ほとんどのケースで早めに提出することが望ましいと言えます。
会社内における上申書の一般的な承認フロー
会社内において、上申書の提出から承認・決裁までの一般的なフローは以下の通りです。
1 現状の把握と起案 2 作成した上申書を上長や関係者へ回す 3 上長や関係者などから承認を得る 4 決裁者に上申書を提出する 5 決裁をもらう |
承認フローによっては、複数人に上申書を回して承認を得る必要があります。
そのため紙媒体の上申書は共有が遅れる・承認が漏れる・オンラインでの承認ができないなど、重要度の高い要望を通すに際して懸念すべきデメリットが生じます。
社内での共有や承認フローの進行状況、文書の正確な管理をしやすくするなら、電子決裁システムの活用もおすすめです。
クラウド型の電子決裁システムなら、インターネット環境さえあれば場所を選ばず文書データの共有が可能なため、承認の迅速化につながり決裁までの時間を短縮できます。
また、セキュリティ対策はサービスを提供する事業者が行っているため、最小限の手間で文書の紛失・漏えいを防止することも可能です。
社内で意見を通すなら上申書を正しく・分かりやすく書くことを忘れずに
上申書とは要望や意見を上の立場や公的機関に申し立てる文書のことです。
会社内においては、部下の昇進や部署の新設といった要望を上長へ伝える際に作成する場合があります。
上申書はあくまで要望や意見を伝えるだけの文書であるため、作成してもそれが必ず通るとは限りません。
しかし簡潔かつ分かりやすく、適切な書き方を心がけることで要望や意見が通りやすくなったり作成者の評価に良い影響が及ぶ可能性もあります。
自社の承認フローに合わせてクラウド型システムの活用も検討しつつ、いざ必要となったときに備えて上申書作成のポイントを理解しておきましょう。