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ノウハウ 損害賠償条項は必要?契約書に書くこととは【テンプレート付き】

更新日:2024年10月17日

投稿日:2024年02月29日

損害賠償条項は必要?契約書に書くこととは【テンプレート付き】

損害賠償条項は必要?契約書に書くこととは【テンプレート付き】

民法では損害賠償が規定されていますので、契約書にその記載がなくても請求は認められます。ただし、自社が不利にならないように損害賠償責任を明確にするためには、契約書に明記することが望ましいです。

 

本記事では、損害賠償条項と違約金を比較しながら解説しています。契約書に記載すべき事項についてもまとめており、責任が生じるケースや金額の上限を設定する場合など、記載すべき事項別の例文も提供しています。契約書における損害賠償条項の書き方を知りたい方にも役立つ内容です。

 

 

損害賠償条項とは

契約相手が契約に違反した時や、違反の結果、自社に損害を与えられた時に金銭を請求できることを定めたものです。

 

「違約金」と何が違うか気になる方もいるかと思います。

契約書の内容に反する行為があった時に請求できる金銭であることは、違約金も損害賠償も共通です。

 

ただ、「損害賠償」については、どういった場合に発生し、請求することができるかが民法に規定されている一方、違約金は規定されていません。その意味で、損害賠償と違約金の違いは、契約書に記載がなくても請求できるかできないかにあります。

民法に規定される損害賠償

民法第415条では、債務不履行(約束した義務・責務を果たさない果たせない)時、契約違反によって生じた損害の賠償を請求できるとしています。

 

第709条でも、故意・過失によって、他人の権利や法律上保護される利益を損害した人にも、損害賠償を負う責任があるとしています。

契約書に損害賠償条項を定める理由

民法で定められていることから、損害賠償条項がなくても損害賠償請求は可能です。

しかし、基準が分からないと、責任の所在を証明できないことを理由に応じてもらえないことが懸念されます。

条項が定められていれば、損害賠償責任が生じる場合や責任を負う範囲などを明確にできます。民法に則る対応をする場合であっても、民法に従う旨は記載した方が良いです。

 

民法と異なる対応をできることも、契約書に含めるべき理由です。

民法の定めと契約書の定めだと、契約書による内容が優先されます。民法の賠償責任の範囲を広げたい、もしくは狭めたい時には、損害賠償条項が必要となります。

損害賠償条項の記載内容

自社に極端に不利な内容にしないよう、賠償責任の範囲や金額が契約書で分かるようにすることが大切です。

以下について記載することが一般的です。

  • 損害賠償の発生要件
  • 賠償金額の上限
  • 賠償責任の範囲

損害賠償の発生要件

どのような場合に損害賠償請求できるか定めます。

民法第415条に「債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない」との記載があることから、「故意・過失による債務不履行の時」には、損害賠償責任を負うことは想定されます。

 

民法の要件以上を求める場合は、「故意・過失を問わず責任を負う」と契約書に記載する必要があります。

民法の要件を狭めて損害賠償責任を問う場合、「故意がある場合のみ」「故意・重大な過失がある場合」といった記載をします。

 

賠償金額の上限

賠償金額の上限を定めることは必須ではありません。しかし、決めておくと損害賠償を請求された時に法外な金額を請求されずに済みます。上限額の低さが原因による補償に納得できないというトラブルを防ぐためにも、一定程度の上限は必要です。

 

「○万円」のように具体的に設定することもあれば、商品・サービスの対価と同等とする、報酬金額のみとする、といった決め方もあります。

 

賠償責任の範囲

どこからどこまで賠償責任を負うかを決めます。

 

  • 通常損害と特別損害
  • 直接的な損害か間接的な損害か
  • 財産的損害と精神的損害
  • 弁護士費用

 

上記がポイントとなります。

 

通常損害とは、民法第416条第1項の「通常生ずべき損害」のことです。債務不履行によって損害が生じた、要するに債務不履行との因果関係が認められれば、通常生じる損害を意味します。

特別損害とは、民法第416条第2項の「特別の事情によって生じた損害」で、通常損害以外の損害で特別の事情により発生した損害に予見可能性(予想できたか否か)がある場合に、通常生じる損害以外の損害を指します。

全ての通常損害が損害賠償の対象となる一方、特別損害は当事者が想定できた場合に限られます。特別損害を損害賠償責任の範囲に含めるか否かがポイントになると言えます。

 

直接的な損害は、修繕費など金銭的な損害です。

間接的な損害は信頼が失われるなど、金銭的ではない形のない損害を表します。

間接的な損害は幅広いものが考えられる故、条項では賠償責任から外されることも珍しくありません。また、直接損害や間接損害については民法上の定義がなく、複数の解釈があり得ますので、契約書に記載する場合はその定義を定めた方が安全です。

 

財産的損害は、本来ならば不要な支払いが生じたり、将来的に受けられる利益の損失(逸失利益)などのことです。直接的な損害と同じものと考えて良いでしょう。

精神的損害は名誉棄損などを指します。「慰謝料」という形で損害賠償を負うことが多いです。

 

弁護士費用は、損害賠償条項に記載することで賠償責任とすることが可能です。

誰が負担するのか、弁護士の依頼にかかった費用のどこまでを請求するのかについて記載します。

 

損害賠償に関する契約書の書き方

民法とは異なる要件を設定する場合はもちろん、民法に則る場合でもトラブル防止のために損害賠償については契約書に記載すべきです。

 

損害賠償の文言は一度作成しておけば、あらゆる契約書で使えます。

本記事ではいくつかのパターンの書き方を紹介します。

契約書 損害賠償の例文

  • 民法に従う場合
  • 損害賠償の発生要件が民法と異なる場合
  • 賠償金額の上限を設ける場合
  • 弁護士費用を賠償責任に含める場合
  • 違約金を請求予定の場合
  • 賠償責任の範囲を明記する場合
  • 請求期間を設定する場合

上記の例文を紹介します。

 

民法に従う場合

甲または乙は、本契約に違反して相手方に損害を与えた場合、その損害を賠償しなければならない。

 

損害賠償の発生要件が民法と異なる場合

故意か過失いずれかの場合に賠償責任が生じる時、以下のような文言となります。

甲または乙は、本契約に違反して相手方に損害を与えた場合、故意または重大な過失の場合に限り、その損害を賠償しなければならない。

 

故意・過失に関係なく賠償責任が生じる場合は以下のように記載します。

甲または乙は、本契約に違反して相手方に損害を与えた場合、故意または過失を問わず、その損害を賠償しなければならない。

 

賠償金額の上限を設ける場合

~損害を賠償しなければならない。ただし、損害賠償の上限は○万円とする。

 

弁護士費用を賠償責任に含める場合

甲または乙は、本契約に違反して相手方に損害を与えた場合、故意または過失の場合に限り、その損害(損害賠償請求に要する弁護士費用を含む)を賠償しなければならない。

 

違約金を請求予定の場合

前述のとおり違約金は損害賠償請求と違い、契約書に記載がなければ請求できません。契約違反時に違約金の請求を考えているのであれば、必ず明記しましょう。また、違約金という文言だけでは、原則として「違約金」=「賠償額の予定」と推定されます。別の意味で使う場合は、しっかりと定義を定めた方が安全です。

 

甲または乙は、本契約に違反して相手方に損害を与えた場合、違約金として○万円を支払う。ただし、実害が違約金を上回る場合は、実際に生じた損害の賠償を請求できる。

 

賠償責任の範囲を明記する場合

通常損害・直接的な損害に限定する場合、以下のような文言となります。

甲または乙は、本契約に違反して相手方に損害を与えた場合、故意または過失の場合に限り、直接的な損害(通常損害に限る)を賠償しなければならない。

 

請求期間を設定する場合

~損害を賠償しなければならない。ただし、契約満了の期間から○年間に限られる。

 

よくある質問

 

  • 賠償責任を問える期間は決められているのか
  • 契約書に損害賠償の記載がなくても請求できるか

 

上記は損害賠償請求に関して気になる方が多い事項です。

2つの疑問にお答えします。

契約書で損害賠償を請求できる期間は

不法行為による請求期間は、損害と加害者を知った時から3年以内かつ、不法行為から20年以内です。

債務不履行による請求期間は、権利を行使できると知った時から5年以内かつ、権利を行使できる時から10年以内です。

 

2017年の民法改正で、2020年からは人の生命・身体が侵害された場合は、異なる期間が設けられています。

不法行為の場合、損害と加害者を知った時から5年以内かつ、不法行為の時から20年以内

債務不履行の場合、権利を行使できると知った時から5年以内かつ、権利を行使できる時から20年以内と定められています。

 

契約書に損害賠償の記載がない場合に請求は可能か

既にご説明の通り、損害賠償請求は民法で定められています。故に、契約書に損害賠償条項がなくても請求することは可能です。

 

ただし、一方の当事者が極めて不利な責任を負わないようにするためには、契約書に条項があった方が良いとされています。

民法と契約書であれば契約書の内容が適用されるため、民法で定められた要件や賠償責任の範囲を変えたい場合は、条項が必要なのは自明のことです。民法に従う場合でも、契約書のおかげで責任の所在を明らかにできます。



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まとめ

損害賠償条項とは契約違反や違反で損害が生じた際、相手に賠償責任として金銭を請求できるよう定めたものです。

損害賠償請求は民法で認められたものなので、契約書になくても請求できます。ただし民法の内容は絶対ではなく、契約書で異なる条件が明記されていれば契約書の内容が優先されます。

つまり、民法とは異なる要件などを定める場合は、条項が必須ということです。

 

損害賠償条項を設定する際、損害の範囲や賠償金額の金額、どのようなケースで賠償責任が生じるか、弁護士費用の有無など、自社が不利にならないよう慎重に検討して設定しましょう。

 

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