ノウハウ 社内DXの進め方とは?成功事例や役立つツールも紹介
更新日:2024年10月17日
投稿日:2024年02月21日
社内DXの進め方とは?成功事例や役立つツールも紹介
企業におけるDX推進の重要性が説かれている現代、その一環として「社内DX」に取り組む企業は増えています。
社内DXを進めることで、業務効率化や競争力の強化といった大きなメリットが得られます。
そこで今回は、社内DXとは何をするのか?どう進めるべきなのか?などについて詳しく解説します。
社内DXに役立つツールや実際の成功事例もご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
社内DXとは?
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、ITやデジタル技術を活用して自社のビジネスモデルに変革をもたらすことです。
DXにあたる取り組みは様々なものがありますが、その中でも組織の体制や働き方など、範囲を社内に限定して変革を図る取り組みを「社内DX」といいます。
例えば従来は紙で管理していた書類を電子化したり、単純なデータ入力作業をITツールで自動化したりといったことも社内DXに含まれます。
社内DXが重要視される理由
企業にとって、社内DXは非常に重要性の高い取り組みです。
その主な理由としては、以下の5つが挙げられます。
BCP(事業継続計画)対策のため
BCPとは、災害など予期せぬ事態に陥っても事業を継続・迅速に再開できるようにする対策のことです。
地震や台風などの自然災害が起こりやすい日本の企業にとって、BCP対策の強化は必須と言えます。
書類のペーパーレス化を進めたりオンライン会議システムを活用したりといった社内DXに取り組めば、自然災害・事故の発生時でも重要な書類や情報を失わず、各従業員がテレワークで安全に業務を続けられるといった効果が得られます。
業務プロセスの効率向上
社内DXでは基本的に何らかの業務プロセスをデジタル化するため、効率性に悩む企業にとっても有効な改善策になります。
ペーパーレス化により書類管理の手間を省く、手作業で行っていたデータ入力の自動化といった社内DXにより、少ない労力でより多くの業務量をこなすことも可能です。
また、ヒューマンエラーのリスクも下がるため生産性の向上にも有効です。
迅速な意思決定
従来は、経営側の経験を参考に自社の指針を定めるケースが一般的でした。
しかしそれは主観的な考えに他ならず、外側の意見やデータを参考にしようにも収集に手間がかかります。
社内DXとしてITツールを導入すれば、社内外に分散するデータの収集から分析まで容易に行えるため、迅速かつ精度の高い意思決定が可能になります。
競争力の強化
情報技術が発達している現代社会において、その時流に沿った内部体制を整えなければ競争力において他社と大きな差がつきやすくなります。
今や消費者は自ら情報を収集のうえ製品やサービスを選択することが当たり前になっており、ただ製品・サービスを提供するだけでなく、いかに付加価値を提供するかが競争力を落とさないためのカギです。
社内DXを推進すれば顧客対応のスピード・満足度や品質の向上につながり、企業競争力の維持・強化がしやすくなります。
従業員エンゲージメントの向上
従業員エンゲージメントとは、各従業員が会社の理念に共感して自発的に貢献しようとする意欲のことです。
少子高齢化問題や正規雇用にこだわらない人が増加傾向にある現代、人員不足を防ぐには従業員エンゲージメントの向上が重要になります。
社内DXを進めて社内に蓄積された情報のデジタル化やテレワークツールなどを導入すれば、各従業員が自分に合ったスタイルで働きやすくなり、結果として従業員満足度の向上からエンゲージメントの向上につながります。
社内DXの進め方
社内DXの基本的な進め方は、大きく以下5つのプロセスに分けられます。
1.目標、目的を設定する
社内DXに失敗する原因として特によく見られるものが、社内DXを目的として取り組んでしまったというケースです。
社内DXはあくまで企業に改革をもたらすための手段であるため、「なぜ社内DXに取り組むのか」「社内DXでどんな効果を得たいのか」という目標・目的から定める必要があります。
2.課題を掘り起こす
目標や目的を設定するにあたって、自社の現状を把握のうえ課題を掘り起こしていきましょう。
そのためには、現場の従業員から意見を収集する必要があります。
現状の業務で不満に感じていることや社内DXで改善を求めることなど、様々な意見を集めましょう。
その中で優先度を評価し、どんな課題から解決していくかを定めます。
3.DX化を行う対象業務、部署を決める
明確化した課題を元に、優先度の高い課題から社内DXによる解決方法を策定していきます。
課題を解決するために、どんな業務や部署のDX化に取り組むかを決めましょう。
4.DX化後の業務プロセスを描く
対象業務・部署を定めたら、現状の業務プロセスと既存のシステムに潜む問題点を整理します。
そのうえで、DX化に取り組んだ後の業務プロセスを見直し改めていきましょう。
例えばペーパーレス化や電子契約、データ入力の自動化などは比較的簡単に導入できます。
DX化のために通常業務を停止することはできないため、まずは手軽にできる取り組みから着実に業務プロセスへ組み込んでいくことも1つの手です。
5,DX化ツールの検討
DX化後の業務プロセスを描いたら、どんなツールやシステムでそれが実現できるのかを考えます。
ハードウェア・ソフトウェア・通信環境・操作性など、様々な観点から最適なツールを定めて選ぶことが大切です。
社内DXを成功させるためのポイント
社内DXは、ただ基本的な進め方をなぞっただけでは成功につながりません。
以下3つのポイントを意識しながら、自社に適したやり方で進める必要があります。
DX化プロジェクト担当者を設定する
社内DXを効率的に進めるには、設定した目的・目標へ向かって正しくプロジェクトを進行させるための担当者が必要です。
特に、DXでは以下のようなスキルを持つ人材がいるかどうかが重要になります。
・プロジェクトをマネジメントする能力がある人
・ビジネスにおけるデジタル技術やデータ活用に対する理解が深い人
・社内DX推進の重要性を理解している人
また、DXを進めるには社内全体の理解も必要不可欠です。
担当者を集めたチームには、DX研修を行うなどして社内の理解を深める役割もあります。
DX人材を設ける
DXプロジェクト担当チームを設ける場合、DXに関する知見が豊富な人材も重要になります。
最先端のIT技術に精通しており、なおかつ社内での影響力も持つ人材が理想的です。
自社に適した従業員がいなければ外部のDX人材育成セミナーに参加してもらうなどして育成したり、DXプロジェクトに携わった経験を持つ人材を採用したりしましょう。
DX支援を活用する
DX支援とは、DX人材の育成や基幹システムの整備など、企業のDX推進を専門的にサポートするサービスのことです。
DXを推進する目的を明確化する方法からIT技術の導入・運用まで、総合的なサポートを受けられます。
初めてDXに着手する場合や、すでに着手したものの期待した効果が得られなかった場合はDX支援の活用も視野に入れましょう。
また、政府もDXに取り組む企業の支援制度を設けており、条件を満たせば「IT導入補助金」や「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」などを利用して必要な資金を調達することも可能です。
社内DXに活用できるツール
DX推進に役立つツールは数多くありますが、目的や対象業務などによって選ぶべきツールは異なります。
社内DXに活用できるツールとしては、大きく分けて7種類あります。
ここでは、社内DXで活用できるツールの種類と特徴を詳しくご紹介します。
RPAツール
RPAツールとは、ロボットを利用して業務を自動化できるシステムのことです。
データ入力やコピー&ペーストといった、単純な反復作業の自動化に活用できます。
Excelなどに搭載されている「マクロ」と似ていますが、RPAツールはプログラミングがなくても簡単な操作で業務の自動化を設定できることが大きな違いです。
処理量が多く、人の判断を必要としない業務に導入すると効果的なツールと言えます。
SFAツール
SFAツールは「営業支援システム」とも呼ばれており、顧客情報・案件情報・営業活動の行動と結果などを管理できるツールです。
営業活動のプロセス・進捗や顧客へのアプローチ方法・結果を簡単に報告できたり、それらの情報を可視化して営業活動の分析とフィードバックができたりという効果を得られます。
BIツール
BIツールとは、企業に蓄積された膨大なデータから必要な情報を集約・分析して経営や業務に活かせるように支援するツールです。
企業が持つデータの中には、売上データや生産管理データなど、部署や店舗など異なる場所に分散されてしまうものもあります。
BIツールを使えばそのようなデータも1つのシステムでまとめて管理でき、経営状況の傾向や新たなビジネスの可能性を見出すことができます。
タスク管理ツール
タスク管理ツールとは、チームメンバーごとのタスクを簡単に管理できるツールのことです。
メンバーごとのタスクの開始・終了日時や進捗状況がカレンダー上に表示されるため、タスクの優先順位が分かりやすくなるうえに全体のバランスを見ながら効率的にスケジュールを立てられます。
製品によってはチャット機能もあり、メンバー間のコミュニケーションを円滑化させる効果も期待できます。
人事管理ツール
人事管理ツールとは、従業員の採用・評価・勤怠管理・労務管理・給与計算など人事業務の効率化に役立つツールの総称です。
製品によって特化している業務は異なるため、DXを進めたい業務内容に合ったものを選ぶ必要があります。
人の手で行われていた人事業務の工数削減や、精度の高い人事評価が可能になることが大きなメリットです。
ワークフローシステム
ワークフローシステムは、業務の中で発生する「申請・承認・決裁」といった手続きの流れをシステム化できます。
フォーマット化した申請書類を使って各種申請ができ、内容に合わせたルートで承認が進んでいくため工数の削減とヒューマンエラーの防止につながります。
ナレッジマネジメントツール
ナレッジマネジメントとは、従業員が持つ知識・経験・ノウハウといった「ナレッジ」を社内で共有したり活用したりする取り組みです。
優秀な従業員のノウハウを他の従業員も真似して社内全体のパフォーマンスが向上したり、業務の属人化を防止できたりといった効果があります。
ナレッジマネジメントツールは、ドキュメントやFAQなどの機能でスムーズなナレッジ共有の実現をサポートし、ナレッジマネジメントの効果を高めるのに有効なツールです。
社内DXの成功事例
実際に社内DXに成功した企業は、どのような課題に対してどのように取り組んでいたのでしょうか。
ここでは、経済産業省が公表した「DX Selection 2023」に掲載されている成功事例を2つご紹介します。
受発注・生産・在庫等の一気通貫の管理が可能なシステムを活用
菓子メーカーである池田食品株式会社では、長年培われたノウハウを活かして北海道産豆菓子の美味しさを世界に伝えること、そして令和時代の新しい企業風土をみんなで創りあげることを目的にDX推進に取り組みました。
DX担当チームと各部門との理解の差が大きい中でのスタートでしたが、社長自らもSler講座を受講するなどして全社を牽引する、DX推進リーダーが自ら現場の現場の業務に携わって現場の理解を深めるといった努力を行いました。
その結果、システムを用いて各部門でバラバラに行われていた数値管理を一元化することに成功し、在庫把握に要する時間の大幅な短縮と事務負担の低減につながっています。
また、自動集計された各種データを用いた議論で精度の高い販売戦略立案も可能となりました。
製作指示書のペーパーレス化
室内建具・造作材製造業を手掛ける株式会社田代製作所では、独自の生産管理システムの構築・進化で「納期の短縮」と「品質向上によるクレームの削減」を目的にDX推進に取り組みました。
社内にITやDXに詳しい人材がおらず、何から手を付けるべきかも定められなかった同社は外部のDX支援事業者に相談してプロジェクトを進めます。
DX支援事業者の助言を元に、従来は紙にコピーのうえ配布していた製作指示書のペーパーレス化を目標と定めました。
独自システムを開発のうえ生産管理システムの開発及び各工場作業員へタブレット端末の支給を進めた結果、従来と比較してコピー用紙の70~80%削減に成功。
さらに指示書をコピー・配布する時間がカットされたことで、出荷までのリードタイムを変更せずに制作時間を延ばすことも実現しました。
社内DXは「手段」!自社の目標に適した手法とITツールで推進を
自社のBCP対策強化・業務効率化・競争力の強化を実現させるには、社内DXの推進が必要不可欠です。
しかし、ただ社内DXに取り組めば自然とメリットが発生するという訳ではありません。
現状の把握と課題点の明確化、それを解決するための手法とITツールの活用が重要になります。
効果的な社内DXを目指して取り組みましょう。