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ノウハウ 企業の法務部必見!社内で行う法務研修の目的・テーマ・内容とは

更新日:2025年02月21日

投稿日:2024年02月21日

企業の法務部必見!社内で行う法務研修の目的・テーマ・内容とは

企業の法務部必見!社内で行う法務研修の目的・テーマ・内容とは

企業では従業員に向けて様々な研修を実施しますが、その中の1つに「法務研修」という研修があります。

法務に関わる知識が主なテーマとされていますが、法務部だけでなく新入社員や管理職なども受けるべき重要な研修です。

 

今回は法務研修の具体的な内容や目的、対象者、代表的なテーマなどについて詳しく解説します。

 

 

法務研修とは何をする?

法務とは、法律に関わる問題のアドバイスや法律事務、契約書の作成・管理など、企業における法律関連の業務を指します。

そして法務を行ううえで欠かせない法律関連の知識や考え方を理解するために行う研修が、法務研修です。

 

企業のコンプライアンス違反に対する目が厳しくなっている昨今、法令違反は自社に大幅な損害を与えかねない深刻なリスクです。

そのリスクを低減させるためには、法務研修が欠かせません。

法務の役割

企業における法務が持つ役割は、大きく分けて以下の3つがあります。

 

予防法務

法的なトラブルの発生を予測し、未然に防ぐための対応を行う(社内規定の策定・更新、従業員に対するコンプライアンス教育、法的リスク評価・管理など)

臨床法務

実際に法的なトラブルが発生した際に対処する(クレーム対応、訴訟対応、倒産処理など)

戦略法務

経営者が考えた事業戦略に、法的な視点からアドバイスやサポートを行い、法に則りながら利益の拡大を図る(新規事業に対するリスク評価、業務提携に関する意思決定の問題点の評価など)

 

法務は法律関連の知識をもって、企業を守ると同時に競争力の向上もサポートするという役割を果たしているのです。

 

また、経済産業省は「第四次産業革命の進展による企業の競争関係が複雑・多様化していく中で法務機能を積極的に活用し、使いこなせる企業とそうでない企業とでは競争力の差がますます拡大していく」などの見解から、法務機能強化の必要性を説いています。

参考:国際競争力強化に向けた 日本企業の法務機能の在り方研究会 報告書 

 

企業の規模・業種にかかわらず、健全な経営活動を続けていくには現行の法令と未来の法改正を見据えながらビジネス方針を模索することが重要です。

そのために必要な知識を持つ法務部門の設置と強化が、現代社会で「生き残る」企業となるために必要な取り組みと言えます。

 

▶関連記事:「法務部お困りあるある」とは?課題解決の方法とあわせて解説

法務研修を行う目的

自社の法務機能を確保・強化するために必要な研修が法務研修です。

法務が重要なことに関しては先述した通りですが、なぜそれを確保・強化するべきなのでしょうか。

 

法務を確保・強化するための法務研修を行う具体的な目的を、以下より解説します。

法律違反の防止

経営活動を行う中で、契約法・労働基準法・会社法・税法・独占禁止法など多岐にわたる法律と関わることになります。

自社が関わる法律を理解していなければ法律違反を犯すリスクが高まり、重い罰則や社会的イメージの損失により経営活動の継続が不可能となりかねません。

 

そういったリスクを回避するためには、法務研修を通じて法律の知識を深めておく必要があります。

コンプライアンス違反の防止

1990年代~2020年代に渡り企業の不祥事が増加したことで、コンプライアンス違反に対する社会の目が厳しくなっている傾向にあります。

コンプライアンス違反が一度でも発生すれば、法的に定められた罰則に加えて社会的なイメージを著しく失うというペナルティも生じます。

 

法務研修や企業倫理研修など、あらゆる視点からコンプライアンスの考え方を身に付けて違反を防止することも必要です。

法的トラブルへの対応方法を知る

どれだけ対策を講じていても、法的なトラブルの発生を完全に防ぐことはできません。

特に、顧客からクレームを受ける・個人情報が流出する・特許権侵害・契約を巡る紛争などのトラブルは常について回ります。

 

例え自社に非がないトラブルだったとしても、無理に事実の隠ぺいを図ったり不適切な態度をとっていたりすると、事態の悪化を招きます。

 

万が一法的トラブルが発生したとき、その後スムーズに対処できるようにするためにも法務研修で正しい対応方法を知っておく必要があります。

法務部だけじゃない!法務研修の対象者

法務研修は「法務部が受けるもの」とイメージされがちですが、様々な従業員に対して実施することが望ましいです。

 

ここでは、特に優先して法務研修を実施したい従業員を4つのカテゴリに分けて解説します。

法務部・総務部

契約関連業務など日常的な業務で法律に関わっている法務部や総務部に、定期的な法務研修は必須です。

どんな法律も時代の流れに合わせて改正が行われるため、その都度知識をアップデートしなければ正しく業務を遂行することができないからです。

 

また、法務部や総務部は他部門の従業員に対する規律の指導を主体的に実施するケースもあり、法律に関する知識の十分な理解が求められます。

新入社員

新人研修の一環としても、法務研修は必要です。

 

新卒入社した社員は社会経験やそれに基づくコンプライアンス意識が完全に身に付けられておらず、何の知識も与えず業務を実践させるとコンプライアンス違反が発生しやすくなります。

まずはコンプライアンス遵守のためにどんな法律を理解すべきなのか、法律違反含むコンプライアンス違反で自社にどんな影響が及ぶのかといった基礎知識を、法務研修で理解してもらいましょう。

 

また、近年はSNSの普及により自社や個人の情報が流出する可能性も高くなっています。

ただ基礎知識を羅列するだけではなく、時流を踏まえたケーススタディも重要です。

管理職

管理職にあたる従業員は、実務に関わる法律の知識をより深く・広く理解する必要があります。

管理職は部下である従業員の行為について責任を取ると共に、経営に関する基礎知識も深めて健全な組織の構築に貢献する役割もあるからです。

また、管理職のコンプライアンス意識が低いと人員の離職につながります。

 

管理職に対する法務研修では、情報管理や内部統制、法的トラブル発生時の対処法など幅広い分野の理解を深めることが大切です。

営業部

営業部門の従業員は、日々の業務で取引先や顧客との契約行為が発生します。

また、取引先や顧客からの信用を保つため、コンプライアンスを意識した規範的な行動も重要です。

 

そのため営業部門の従業員は、法務研修で契約関連業務に関わる法律や業務で起こり得るトラブルのケースとその対処法を理解する必要があります。

契約関連業務とは

法務研修を行う目的には、「契約関連業務を正しく行えるようにすること」も含まれています。

 

契約関連業務とは、契約書の作成・内容に関する交渉・契約締結・契約管理という、契約に関わる一連の業務を指します。

契約法などの法律が関わるため、それを理解している法務部が専門的に携わるケースは多いですが、総務部が兼任で契約関連業務を行っている企業もあります。

 

作成した契約書で自社にとっての損害リスクが残らないようにすると同時に、自社が望む取引を円滑に進めるためには、正しい法律知識に基づく契約関連業務が重要です。

 

企業法務の役割とは?実務の例や必要スキル、内製化のポイントまで総合解説

法務研修の代表的なテーマ

法務研修は、目的に応じて様々なテーマで実施されています。

その中でも代表的な法務研修のテーマは、以下の通りです。

ビジネス法務研修

ビジネス法務研修とは、営業活動に関わる法律を学ぶためのプログラムが組まれた法務研修です。

コンプライアンスを遵守しながら営業活動を行い、法的トラブルや顧客とのコミュニケーションでトラブルを起こさないために重要となります。

以下より、ビジネス(営業活動)に関わる主な法律の例をご紹介します。

民法

民法は、国や行政以外の個人(私人)間の日常生活において適用される法律です。

 

営業活動を行ううえで欠かせない「契約」は民法にて定義されており、契約書の作成時は民法に基づく条項を記載する必要があります。

“第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。”

引用:民法 | e-Gov 法令検索 

自社が不当な契約をしない・させないためには、民法における契約の知識を身につけることが重要です。

 

ビジネス法務研修では、民法上の契約に関して以下のような内容を学びます。

 

・契約の定義

・契約の基本条項(契約解除、損害賠償、不可抗力など)

・契約書の種類

・押印や署名の意味

会社法

会社法とは、会社(法人)の設立・運営・仕組み・株式・資金調達などについて定めた法律です。

会社が事業活動を行ううえで守るべきルールが明確に定められており、経営者はもちろん、従業員も基礎知識を身につけることが自社のコンプライアンス確立に重要となります。

労働法

労働法とは、労働者と使用者の雇用関係について定めた法律の総称です。

 

一般的に、雇用関係においては労働者へ報酬を支払う使用者の方が立場が強い傾向にあります。

これにより労働者が不当な条件で労働を強いられることを防ぎ、労働者の権利を守る役割を担っている法律です。

 

パワハラや長時間労働などによる心身の被害という問題に注目が集まる昨今、労働法の知識は使用者・労働者のどちらにも重要です。

 

また、労働法に含まれる法律は頻繁に改正されています。

すでに労働法に関わる研修を実施した企業も、常に最新の適正条件で雇用関係を継続させるため、最新情報を確認のうえ知識をアップデートする必要があります。

独占禁止法

独占禁止法は、正式名称を「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」といいます。

企業の公正で自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で活動できるようにルールを定めた法律です。

 

具体的には「事業活動の私的独占」や「不当な取引制限(カルテル)」など、自由な競争秩序をゆがめる活動を禁止するなどのルールを定めています。

特に、入札や価格決定に関わる部門にとっては重要性の高い法知識です。

 

自社のコンプライアンス体制をより確かなものとするためにも、経営者・従業員それぞれが独占禁止法の基礎知識を身につけておく必要があります。

商法

商法とは、商人の商売活動に関する規制や構造を定めた法律です。

商人は「自己の名をもって商行為をすることを業とする者」であり、個人・法人のどちらにも適用されます。

 

商法は、民法の中に含まれる特別法(特定の分野・事項のみ適用される法律)です。

売買契約に関する規定など、民法と重複する内容については商法のルールが優先的に適用されます。

 

ただし、会社に関する規定で商法と重複した箇所については、会社法が優先されます。

会社法は商法に含まれる特別法だからです。

 

企業経営の透明性と公正な運営を実現するには、民法・会社法と併せて商法の基本的事項も理解しておくことが大切です。

知的財産法

知的財産法は、「知的財産権」に関する規定がある法律の総称です。

具体的には、特許法や意匠法、著作権法などがあります。

 

知的財産とは、新しい発明・デザイン・ブランドへの信頼・創作物など、「誰かの創造的な活動で生み出された、形のないもの」を指します。

人々が豊かにする産業の発達や文化の発展のため、知的財産を持つ者に権利を与えてその利用を保護するための法律が知的財産法です。

 

ビジネスにおいては、広報誌や外部へ配布するパンフレットにキャラクターイラストを使用するなど、何気ない行動で他人の知的財産権を侵害する可能性があります。

逆に、自社が生み出した意匠やコンテンツなどが他社や個人に模倣され、知的財産権を侵害されるリスクも懸念すべきです。

 

自他の知的財産権保護の意識を高め、従業員の適切な法的思考力を育成するためにも、知的財産法を学ぶ機会が求められます。

ハラスメント研修

ハラスメント研修は、主に従業員同士のパワハラやセクハラといったトラブルを防ぐための研修です。

ハラスメントの内容によっては嫌がらせの度を超えて犯罪行為となったり、見過ごすことで従業員満足度が落ちて人員が流出したりといったリスクがあります。

自社の健全な経営だけでなく、従業員の心身を守るためにも重要性が高い研修です。

コンプライアンス研修

法律に加えて、社会における規範や企業が持つべきとされる倫理などの総称として「コンプライアンス」という言葉があります。

ただ法に則った経営活動を行うだけでなく、コンプライアンス遵守の意識を高めることは自社の社会的な信頼を獲得するためにも必要です。

 

社内全体がコンプライアンス遵守の意識を高く保てるように、すべての従業員を対象としてコンプライアンス研修を行うのが一般的です。

リスクマネジメント研修

リスクマネジメント研修では、企業の経営活動に潜むリスクとその対策について学びます。

 

一口にリスクといっても、発生確率や影響度はそれぞれ異なります。

どのように優先順位を付けてどんな対策を実施するのかを考える必要があり、それに必要な知識を学ぶための研修です。

通常、管理職・マネージャー職や経営層を対象として行われます。

法務研修の主な内容

先述した法務研修では、具体的にどのような法律が研修内容となっているのでしょうか。

ビジネス法務研修・ハラスメント研修・コンプライアンス研修・リスクマネジメント研修で取り入れられる主な内容は、以下の通りです。

 

ビジネス法務研修

・契約に関連する法律(民法、商法など)

・独占禁止法

・不正競争防止法

・独占禁止法

・金融商品取引法

・下請法

・景品表示法  など

ハラスメント研修

・ハラスメントの定義や種類

・省庁などによる実態調査の結果などに基づくハラスメント防止の意義

・ハラスメントがもたらす影響

・労働施策総合推進法

・男女雇用機会均等法

・育児・介護休業法  など

コンプライアンス研修

・個人情報保護法

・労働基準法

・知的財産法

・著作権法  など

リスクマネジメント研修

・企業を取り巻くリスク(法的・金融・環境・情報リスクなど)について

・リスクマネジメントの必要性

・リスクマネジメントのプロセス  など

法務研修を実施する方法

法務研修を実施する方法は、大きく分けて「社内での実施」と「外部での実施」の2通りがあります。

社内で実施する

自社が持つ知識や企業理念を浸透させるための研修であれば、社内での実施が望ましいです。

しかし社内での実施に限定すると自社にはない専門性の高い知識を得る機会を失うため、学ぶ内容に合わせて分けることが大切です。

資料の準備方法

社内で法務研修を実施する場合、研修に用いる資料作成が必要です。

 

しかし、各法律の条文は難解かつ一文が長く、法知識に触れる機会が少ない従業員の場合は理解しにくい可能性があります。

そのため、研修資料作成時は重要なポイントを強調し、不要な文面は省略することを意識しましょう。

要約した文面と併せて、図やグラフなど視覚的な情報で補足するとさらにイメージが深まります。

 

より効率的に資料を作成するなら、WEBで配布されているテンプレートを利用するのも手です。

外部で行う

法務研修を実施したいものの、社内に人的リソースがない、質の高い研修を行うことが難しい場合は外部研修を検討しましょう。

 

外部研修は、外部の事業者・組織などに特定の研修を委託することです。
主催者が指定した日時・場所にて研修を受講したり、自社のニーズに合わせてカスタマイズした内容の研修を受けたりと、提供者側によって対応方法は異なります。

外部セミナーとは

外部の企業や専門家が実施する研修(セミナー)に参加することで、より専門性の高い知識を身に付けられます。

 

また、社内で研修内容を考えたり教材を揃えたりといった手間も不要なため、社内で実施するよりも工数が削減できることもメリットです。

 

企業向けに法務研修を提供しているサービスとしては、以下のようなものがあります。

 

 

それぞれのサービスで必要な費用や特化しているポイントが異なるため、資料を取り寄せて比較検討すると良いでしょう。

法務研修を実施するタイミング

法務研修は任意のタイミングで実施できますが、より有用な研修とするなら以下のような機会での実施がおすすめです。

 

・新入社員の入社直後

・従業員の昇進や役職が変動したとき

・法改正の実施後

・法的なトラブルの発生後

 

日々の業務をこなしながら、各従業員が自主的に法知識を学ぶ時間を確保することは難しい場合もあります。

適切なタイミングで法務研修を実施し、法務学習の後押しをしましょう。

法務研修と併せて検討したい「ビジネス実務法務検定」

従業員に法務の知識を浸透させるなら、法務研修の他にも「ビジネス実務法務検定」の受検を推進させるという手もあります。

ビジネス実務法務検定とは、東京商工会議所が主催している検定試験です。

契約関連業務・会社法に基づく財産管理・労働基準法に準じた雇用契約書の策定など、業種を問わず通用する法律の知識を学べます。

 

各級に受験資格はありませんが、初回は本人のスキルや経験に合わせて3級または2級から受検すると良いでしょう。

ビジネス実務法務検定の3級とは

ビジネス実務法務検定3級は社会人全般・学生が対象で、ビジネスパーソンとしての最低限の法律実務知識が試されます。

合格率は例年70%~80%台となっており、難易度は比較的低いです。

 

出題内容としては民法が中心で、ビジネス実務法務の法体系、契約に関する知識、企業活動に関する法規則などがあります。

ビジネス実務法務検定の2級とは

ビジネス実務検定2級は主に社会人全般を対象としており、特に管理職や管理職候補に適した資格です。

民法が中心の3級と違い、商法や会社法など問われる知識の範囲が拡大しています。

例年の合格率は40%~50%台となっており、より入念な試験対策が必要です。

 

3級の出題内容に加え、民事保全法や金融商品取引法、労災保険、雇用保険などが追加されます。

企業の規模にかかわらず法務研修の実施は要検討

企業が経営活動を続けるうえで法務研修は必須ではありませんが、法律の知識を持たないとあらゆるリスクを背負うことになります。

特にコンプライアンス意識が高まり続ける現代社会において、一度の法律・コンプライアンス違反は自社にとって命取りとなりかねません。

どんな企業でも、健全かつ持続的な経営活動に法律の知識は必要不可欠です。

自社に必要な法的知識とテーマを定め、場合によっては外部の力も借りて法務研修を実施しましょう。

 

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