ノウハウ e-文書法とは?電帳法との違いやタイムスタンプもわかりやすく解説
更新日:2024年10月17日
投稿日:2024年02月13日
e-文書法とは?電帳法との違いやタイムスタンプもわかりやすく解説
会社文書の保管スペース・コスト削減には電子保存が有効ですが、会社文書を電子保存するには「e-文書法」という法律を理解しておく必要があります。
今回はe-文書法とはどんな法律なのか?という基礎知識をはじめ、電子帳簿保存法との違いや要件、電子署名・タイムスタップなどについて徹底解説します。
e-文書法に対する理解を深め、会社文書の電子保存を有効に活用しましょう。
e-文書法とは?
e-文書法とは、法令で保存が義務付けられている書類を電子保存することを認める法律です。
厳密には、書類の電子保存に関して取り決めた以下2つの法律の総称として「e-文書法」という言葉が用いられています。
・民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律(通則法) ・民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(整備法) |
通則法は電子保存における一般的なルールを決めた法律、整備法は個別法の一部改正により通則法ではカバーしきれない部分を整備した法律です。
これらは2005年4月から施行され、請求書や国税関係書類といった民間企業が保存するべき書類の他、カルテなどの医療書類の電子保存にも適用されます。
なお、e-文書法と混同されがちな法律として「電子帳簿保存法」もあります。
詳細は後述しますが、電子帳簿保存法とは適用される文書などが異なるため注意が必要です。
e-文書法の処罰について
e-文書法の取り決めに従わず対象の文書を保存しても、特に罰せられることはありません。
本来、文書の保存方法に関する規制緩和を目的に制定された法律だからです。
とはいえ、e-文書法の要件を満たさない電子文書は正式な文書として認められず、それを用いる様々な手続きが行えなくなる可能性があります。
電子帳簿保存法とは?
先述した電子帳簿保存法とは、国税関係帳簿書類の電子保存を認める法律です。
正式名称を「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といい、1998年に施行されました。
重要な文書を電子保存することを認める、という点はe-文書法と共通しています。
しかしe-文書法とは異なる特徴がいくつかあるため、併せて理解しておくと良いでしょう。
e-文書法と電子帳簿保存法の違い
e-文書法と電子帳簿保存法の間で異なる特徴としては、主に以下の3つが挙げられます。
適用される文書
まず知っておきたい点が、それぞれの法律が適用対象としている文書の種類です。
e-文書法は、会社法・税法・商法などに基づく「民間企業で保存が義務付けられた法定文書」が対象です。
一方で電子帳簿保存法は、財務省や国税庁が管轄する「国税関係文書(帳簿類・決算書類・取引関係の書類など)」が対象となっています。
民間企業で保存が義務付けられた法定文書については、後ほど具体例を挙げて解説します。
要件
e-文書法と電子帳簿保存法には、それぞれ電子保存する文書について要件が定められています。
電子保存した文書が公的な文書と認められるには、その要件を満たさなければなりません。
e-文書法と電子帳簿保存法の要件は、以下の通り異なります。
e-文書 | 電子帳簿保存法 |
・見読性 ・完全性 ・機密性 ・検索性 | ・可視性 ・真実性 |
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e-文書法で定められた4つの要件については、後ほど1つずつ解説します。
承認の有無
e-文書法では元より文書の電子保存に際して特別な承認は不要ですが、電子帳簿保存法は対象の文書を電子保存するために税務署長から承認が必要とされていました。
そのため、従来は承認の有無もe-文書法と電子帳簿保存法における大きな違いの1つでした。
しかし2021年に電子帳簿保存法が改正され、2022年4月1日以降に電子保存された文書に関しては事前承認が不要となっています。
つまり、現在はe-文書法と電子帳簿保存法の間で承認に関する違いはありません。
e-文書法が制定された背景
e-文書法の制定前、世界的なIT化に伴い海外企業の労働生産性が向上し、国内企業と比べて経営におけるスピード感の差が広がっていることが問題視されていました。
その大きな原因となっていたのが、あらゆる書類を紙媒体で管理する「紙文化」です。
紙文化が根強く残る国内企業では、文書の入力・コピー・押印・ファイリング・書庫やキャビネットでの保管・膨大な書類の中から必要なものを探す作業…など様々な間接業務が発生することで、主要な業務の効率性に影響が及んでいました。
そんな紙文化のデメリットを解消するために制定された法律が、企業にとって重要な文書を電磁的方法で管理できるようにするe-文書法です。
e-文書法の条文
e-文書法(通則法)第1条には、以下のような記述があります。
“この法律は、法令の規定により民間事業者等が行う書面の保存等に関し、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法(以下「電磁的方法」という。)により行うことができるようにするための共通する事項を定めることにより、電磁的方法による情報処理の促進を図るとともに、書面の保存等に係る負担の軽減等を通じて国民の利便性の向上を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。” |
国内の企業活動や業務効率を阻害していた紙文化から電磁的方法による管理の負担を軽減させることで、国民生活や国民経済の発展を促すという目的が明確に記されています。
紙による文書保存が労働生産性を阻害する理由
紙文化が労働生産性を阻害する主な理由としては、以下のような紙媒体ならではのデメリットが挙げられます。
・保存スペースの確保に伴うコスト ・ファイリングに労力を割かれる ・文書をスムーズに遡れない |
紙による文書保存は人員にかかる負荷の増幅だけでなく、保存スペースの確保に伴うコストも伴います。
日常的に多くの取引を行っている企業ほど深刻化しやすいデメリットです。
e-文書法の対象文書
e-文書法の適用対象となるのは、約250本もの法律で保存や交付などが義務付けられている文書です。
対象の法律は、会社法・所得税法・法人税法・地方税法・銀行法・保険業法などがあります。
各法律で保存や交付などが義務付けられている文書、つまりe-文書法の対象文書の具体例としては以下の通りです。
・営業報告書 ・財産目録 ・事業(業務・事務)報告書 ・付属明細書 ・組合員名簿 ・議決権行使書 ・規約等 ・資産負債状況書類 ・取締役会議事録 ・定款 など |
上記のような書類かつ、後述するe-文書法の要件の要件を満たしていれば電子化しても公的な文書として認められます。
e-文書法の対象外になるケース
重要な書類でも、以下のような書類はe-文書法の対象外となっています。
・免許証 ・許可証 ・機械や乗り物の安全手引書 など |
上記のように緊急時にすぐ読める状態が求められる書類や現物性が高い書類等に関しては、e-文書法の対象外です。
e-文書法の要件
e-文書法では電磁的方法で保管する対象文書に関して、以下4つの要件を設けています。
いずれにしても「見読性」を満たすことは必須ですが、文書の種類によっては不要な要件もあります。
見読性
見読性とは、「必要に応じて文書の内容をすぐに読み取れること」です。
電子化された文書は、そのままの状態で視覚的に内容を確認できません。
そのためパソコンやモニターのディスプレイに表示させたり、プリンターで印刷したりして、文書の内容を明確かつ即座に確認できることが求められます。
完全性
完全性は、「保存している間に改ざん・消失・破損されないような対策を講じていること」です。
電子保存する以上は第三者による改ざんやデータの消失・破損といったリスクを伴うため、タイムスタンプや電子署名を用いるなどして原本の状態を確保することが求められます。
機密性
機密性は、「許可された人だけがアクセスできるようにすること」を指します。
第三者による不正アクセスや情報漏えいを防ぐため、データにアクセスできる人間を限定したうえでパスワード管理に徹するなどの対策が求められます。
検索性
検索性とは、「必要な文書をすぐに取り出せるようにすること」です。
保存されている膨大なデータの中から、必要なタイミングですぐに検索して取り出せるようなシステムを整える必要があります。
e-文書法に関わる省庁ごとの施行規則とガイドライン
e-文書法で定められているのは、企業で保存などが義務付けられている文書の電子保存に関する基本的な規則です。
各省庁はe-文書法に基づき、管轄している文書の電子保存に関する施行規則・ガイドラインを設けています。
そのため、特定の文書を電子保存する際はe-文書法だけでなく関係する省庁が発令した施行規則・ガイドラインにも目を通す必要があります。
ここでは主な省庁がe-文書法に基づいて発令した、施行規則やガイドラインの例をご紹介します。
併せて知りたい「電子署名」と「タイムスタンプ」
電子保存した文書の完全性や機密性を確保するには、電子署名・タイムスタンプの活用が効果的です。
ここでは、電子署名とタイムスタンプそれぞれの特徴について解説します。
電子署名とは (当事者型)
電子署名(当事者型)とはデータ化した電子文書に対して付与される署名で、紙文書のサインや印鑑の役割を果たすものです。
電子契約書などをやりとりする際、発信者は認証局で「電子証明書」を発行して本人確認を行います。
その後「公開暗号方式」という暗号技術で発信者しか知り得ない秘密鍵と、その秘密鍵を解錠できる公開鍵が発行されます。
そして電子証明書付きの文書が発信され、受信者は電子証明書に格納された公開鍵でデータを復元して閲覧できるようになります。
このような仕組みでやり取りが行われる電子署名付きのデータは、本人が作成し、なおかつ内容が改ざんされていないという真正性を保証できるのが特徴です。
万が一電子契約に関してトラブルが起きても、電子署名法第3条に基づき電子署名が付与された電子文書なら真正に成立したものと推定できます。
参考:電子署名及び認証業務に関する法律 | e-Gov法令検索
電子署名とは (事業者型)
電子署名(事業者型)とは、契約の当事者が契約に合意する場を提供し、契約締結に無関係な第三者であるサービス提供事業者がその合意形成の立会人として、当事者の依頼で電子署名を付与します。
サービスへのログイン認証と、サービスに登録したメールアドレスで認証メールを受信できたことにより本人確認が行われます。
締結相手側も証明書を取得する必要がある当事者型の電子署名とは違い、電子契約を締結したい人は、メールアドレスさえ取得していれば簡単に署名でき、締結相手側の負担が少ないこともあり多くの企業で採用されています。
タイムスタンプとは
タイムスタンプは、スタンプを付与することで電子データがその日時に存在していたこと、それ以降は改ざんされていないことを証明する技術です。
電子文書の作成後、タイムスタンプを付与するにあたって認証局に発行を依頼します。
文書のハッシュ値を時刻認証局へ送信し、時刻認証局がそのハッシュ値に時刻情報を加えたタイプスタンプを発行します。
このような仕組みで発行されたタイムスタンプの付与により、文書の存在と非改ざん性を客観的に証明することが可能です。
文書を電子化するメリットについて
企業が文書の作成や管理を電子化することで、以下のようなメリットにつながります。
・コピーやファイリングなど事務工程の時間短縮につながる ・保管スペースがかさばらず、オフィスを有効活用できる ・災害による紙の破損や紛失リスクを回避できる ・場所を選ばず文書を確認して業務を遂行できる |
主に業務効率や省スペースにおけるメリットが大きく、電子署名やタイムスタンプといった技術を活用すれば高い安全性も確保できます。
契約書を電子化するメリットについて
各種文書の電子化に合わせて、これからは紙の契約書を使わない「電子契約」への切り替えもおすすめです。
電子契約に切り替えることで契約書の作成や管理に伴う工程・コストを削減できる他、「コンプライアンス強化」というメリットにもつながります。
契約成立までのプロセスが可視化されることに加え、データの閲覧権限についても厳しく管理ができるため、第三者に内容を見られる恐れがなくなります。
また、バックアップを取っていれば万が一データを紛失してもすぐに復旧が可能です。
このような電子化ならではの恩恵で、紙の契約書を取り交わすよりもコンプライアンスを強化できます。
e-文書法で押さえておくべきポイントのまとめ
e-文書法とは、会社法・所得税法・法人税法・地方税法など約250以上もの法律で保存や交付などが義務付けられている文書の電子保存を認める法律です。
4つの要件を満たせば国税関係の文書や請求書などの取引書類などを電子保存でき、業務効率の向上や保管スペースの無駄遣いを減らすといったメリットにつながります。
契約書においても、電子署名やタイムスタンプといった技術で契約書の存在や非改ざん性を証明できます。
社内の業務効率を改善させたい企業こそ、e-文書法の理解を深めて文書の電子化を推し進めることが重要です。