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ノウハウ CSRとは?企業が行う3つのメリットと国内外の活動事例

更新日:2024年10月17日

投稿日:2023年12月22日

CSRとは?企業が行う3つのメリットと国内外の活動事例

CSRとは?企業が行う3つのメリットと国内外の活動事例

現代の企業は単なる利益追求だけでなく、地域社会や環境に対する責任を果たすことが求められています。本記事では、企業が持つ社会的責任(CSR)の概念に焦点を当て、基本的な意味から、メリット・デメリット、広まった背景までその背後にある意義に迫ります。

 

実際に取り組む際に参考になる国内外の企業の事例についてもあわせて紹介しています。

 

 

CSRとは

Corporate Social Responsibilityの頭文字をとった言葉で、「企業の社会的責任」という意味です。

社会的責任は顧客、取引先、投資家、地域社会や環境など、企業活動が影響を与える広い範囲に及びます。

 

どのような責任を負うかは企業によって異なります。例えば、環境に配慮した製品の製造・販売をミッションに掲げる企業があれば、発展途上国の健康増進を使命とする企業もあるということです。

 

どのような形で製品・サービスに反映して消費者などに還元するかは、組織ごとに違いはありますが、「説明責任」はどの企業にも求められます。

例えば、製品に問題が発生した時。すぐに公表し、解決策や今後の対策を示せる企業か否かで信頼が左右されます。

関わる全ての人・社会と良い関係を保ちながら発展し続ける企業であるためにも、CSR、特に説明責任は重要です。

CSRが広まった背景

日本の企業に普及した理由は、国内の企業の不祥事に対する批判の声が大きくなってきたからです。

 

きっかけは、1970年代のオイルショックまでさかのぼります。

オイルショックで、物不足への懸念が高まりました。結果、人々は買い占めに走るようになりました。

需要に対して供給が追いつかなければ、価格の高騰はあり得ます。しかし、中には騒動に便乗して値上げするような販売店や、価格の高騰を見越して売り控えする小売店も出てきました。

便乗値上げや売り惜しみを行う事業者に対する批判が相次ぎました。

 

2000年代以降には、食品偽装といった企業の不祥事が次々と発生しました。問題を起こした企業の信頼は、失われました。

 

いくつもの企業のネガティブな事例を経て、不祥事を防ぎ、信頼できる組織であり続けるためにはCSR(企業の社会的責任)を果たすことが重要と考えられるようになりました。

 

インターネットやSNSが身近になった現代では、企業の不祥事はすぐに知れ渡って拡散されます。

消費者が信頼できる企業か否か判断する目は厳しくなっています。企業の社会的責任を負わないような組織に対して不信感を持ち、利用を控えるまでが早くなっています。言い換えると、不買が広がりやすいということです。

消費者に選んでもらえなくなると、経営に影響します。クリーンな企業であり続けるためにも、CSRは意識すべきものになっています。

 

海外に展開する企業の場合、社会的責任は世界に及びます。海外進出する企業は、日本だけではありません。CSRの重要性も万国共通です。世界進出する過程で、CSRに関するガイドラインなどが各国で作成されました。

多様な国とやりとりする際、どの国の企業にも共通の社会的責任の基準が求められるようになりました。そこで、ISO(国際標準化機構)は、2010年に世界共通の組織の社会的責任に関する規格としてISO26000を発行しました。CSRは、世界でビジネス展開する上で欠かせないものと見なされるようになりました。

コンプライアンスとの違い

コンプライアンスとは、法令や社会規範を遵守することです。コンプラとも略されます。

ISO26000の7つの原則とも関係があります。

 

7つの原則とは、CSRの基本概念となるものです。

以下が7つの原則です。

  • 説明責任
  • 透明性
  • 倫理的な行動
  • ステークホルダーの利害の尊重
  • 法の支配の尊重
  • 国際行動規範の尊重
  • 人権の尊重

 

組織の意思決定や企業活動の透明性を保つ、顧客や株主や従業員といった利害関係者に配慮する、法令や世界的に自明とされる規範を守る、倫理的に問題視される活動を行わない、人権を尊重した事業を行うなどが挙げられています。

 

法令遵守が基本にあることから、CSRの基礎にコンプライアンスの遵守があると言えるでしょう。ただし、コンプライアンスを守るだけでは、企業の社会的責任を十分に果たしたとは言えません。

 

CSRは法令にとどまらず、組織の資源を用いて関係する人や社会への貢献まで求められるためです。

企業が自社の使命を踏まえた指針を掲げて守る必要があるということです。

 

サステナビリティとの違い

サステナビリティは持続可能性と訳します。企業活動と関係する文脈では、環境や社会への悪影響を最小限に抑えながら、企業の発展だけではなく、環境も社会全体も持続していく活動を目指す、というニュアンスです。

 

どちらも社会に良い影響を与えるための考え方である点は共通します。違いは主体です。

CSRは企業が負うものです。対してサステナビリティは、地域や国全体、個人までも考えて取り組むことが求められます。

SDGsとの違い

SDGsとは持続可能な開発目標という意味で、Sustainable Development Goalsを略したものです。

2015年の国連サミットで採択され、2030年までに実現を目指す世界共通の目標が掲げられています。

「貧困の解消」「住み続けられるまちづくり」など17の目標が定められました。

 

企業の信頼を持続させるための方向性や取り組みを決める上で、SDGsは参考になります。SDGsに配慮した活動の開示をするなどは、SDGsもCSRも果たしていると言えます。

しかし、組織のミッションをどのように設定するかは異なります。

SDGsは世界共通の目標が提示されていますが、CSRは企業ごとの指針が求められます。

 

CSR活動の種類

  • 企業統治
    弁護士といった社外専門家との協力体制を築いたり、監査役を選定するなど
  • 従業員への人権教育やコンプライアンス研修
  • 人種差別的な採用活動を行わない
  • 労働慣行
    働きやすい職場環境を整える、長時間労働の対策に取り組む、ワークライフバランスの両立を目指す、ハラスメント対策など
  • 環境への配慮
    オフィスの省エネや二酸化炭素の排出量削減に取り組むなど
  • 私的独占や下請け企業に無理な条件での契約の禁止
  • フェアトレード製品の取り扱い
  • 消費者への情報開示
  • 消費者とのコミュニケーションの機会を設ける
  • ボランティア
  • 地域のスポーツチームとの協力 など

 

CSR活動は多岐にわたります。

自社の得意を活かす、コストとリターンのバランス、担当する従業員の負担などに気をつけてできることから始めましょう。

CSR活動を行うメリット

  • 信頼の獲得
  • 法令違反のリスク軽減
  • 従業員の定着や応募者の増加

 

CSRに取り組む企業は、不祥事を起こしにくいといったプラスのイメージを持たれる傾向です。

良いイメージの企業の製品を利用したい、安心して取引できそうというように、消費者からも顧客からも選ばれる可能性が高まります。結果、利益アップを期待できます。

 

説明責任や法令遵守は、CSR活動の前提とされています。CSRに基づく風土ができあがれば、従業員も自然とコンプラ意識が高まります。結果、不祥事も起こりにくくなることが見込まれます。

 

また、CSR活動をきっかけに、働きやすい職場環境が整いやすいです。

職場環境の良さは、従業員満足度を高める要因のひとつです。社会に貢献している実感も持ちやすくモチベーションアップによる生産性の向上と従業員の定着率アップを見込めます。

職場の働きやすさ定着率の高さは求職者へのアピールにもなり、優秀な人材を確保できる可能性を高めます。

 

クリーンな印象で選ばれる企業として事業活動が続くことで、安定経営につながります。経営が順調であれば、給与アップや職場環境の改善といった形で、従業員にも還元できるでしょう。

CSR活動を行うデメリット

  • コストの圧迫
  • 人手不足
  • 業務効率の低下

 

CSR活動がすぐに売上に直結するとは限りません。一方で、活動のためのコストが増えることは珍しくありません。例えば、環境に配慮した製品の取り扱いによって、製造や販売にかかるコストが増えるなどです。

従業員へのCSR教育にも、コストがかかります。教育のための時間が必要となる点も、要注意です。

 

成功すれば、長期的に見ると企業にプラスになります。しかし、上手くいかないと資金繰りが苦しくなるだけで終わってしまいます。コスト面を考えた上で計画を立て、無理なく続けられそうかシミュレーションして、CSR活動を取り入れるか検討しましょう。

 

CSR活動の実施にあたり、担当する従業員の業務量は増えてしまいます。通常業務もCSRに関する業務も高い質を保ちたいとなると、多くの人手が必要になります。ところが、コストのことを考えると、すぐに人材確保に動けない企業は少なくないでしょう。結果、人手不足に至ることが懸念されます。

 

CSR活動のメリットを考えると、優秀な人材を確保できる可能性を秘めているものの、現状、人手に余裕がない、業務負担が大きいといった場合は、慎重に考えなくてはなりません。

 

CSRに取り組むということは、売り上げ以外にも注視する必要があります。時には、CSR活動をする前より業務効率が悪くなることもあります。

業務効率が下がったとしても、組織の信頼獲得など将来的にはメリットを受けられそうか否か見極められることが求められます。

 

海外の企業のCSR事例

CSR活動の盛んな海外企業の例は自社で実施する活動を考えるうえで参考になります。

Amazon

カーボンニュートラル達成に向けた取り組みとして、2025年までに現場で使う全ての電気を、再生エネルギーに切り替えることを目指しています。

 

従業員など幅広い人への支援も忘れません。

非正規雇用労働者を含むオペレーション担当の従業員の大学授業料の負担、低所得者とその家族のための住宅助成金、災害援助などを行います。

 

Google

奨学金や寄付金として1億米ドル以上の寄付の実績を持ちます。

気候変動や国境を越えた健康問題の活動(グローバルヘルス)、飢餓への対策などには特に力を入れています。

 

スターバックスコーヒー

コーヒー農場の不法労働の是正、人種や性別や年齢に関係ないサービスの提供、環境への負荷の小さいカップへの切り替えやフードロス削減などに取り組んでいます。

 

ロレアル

化粧品の安全性を検査する際、動物実験を行いません。代わりに、ヒト皮膚モデルを用いて人間の皮膚での働きを評価します。

開発したヒト皮膚モデルを政府や病院へ提供し、動物実験の撤廃や治療に活かすよう働きかけています。

 

日本企業のCSR事例

最後に、日本企業の取り組みを紹介します。

 

富士フイルム

自然保護をテーマとした民間企業による公益信託を、日本ではじめて設立しました。「富士フイルム・グリーンファンド」という公益信託です。

再生可能エネルギーへの転換など、幅広く環境問題に取り組んでいます。

 

ITを活用して医師・看護師の負担軽減、新興国での診断技術指導と健康増進なども目標に掲げます。

 

ブリヂストン

災害復興支援、琵琶湖の水の保全と研究の支援に加えて、子どもや地域住民のための活動にも力を入れています。

例えば、交通安全活動への協力、子供たちに安全な自転車の乗り方を教えるなどです。

 

小松製作所(コマツ)

建設機械作動中の二酸化炭素排出量の削減、次世代や海外の人材育成に取り組んでいます。

カンボジアの地雷除去に関しては、機械の無償提供にとどまらず、除去後の土地の整備、例えば農地の開拓や小学校の建設までサポートしています。

 

まとめ

CSRとは、企業が関わる全ての人・社会に対する社会的責任です。扱う製品・サービスや強みが企業によって異なるように、取り組むべき活動も組織の数だけ考えられます。

しかし、外部からも内部からも信頼され、法令違反のリスクを下げられるというメリットは共通です。人材確保や従業員の定着率アップなどにも貢献しますが、取り組みにかかるコストには気をつけなければなりません。担当する従業員の業務負担にも注意が必要です。

 

コストなどの現状を踏まえながら、他社の事例も参考に、CSRに取り組めそうか、そして、自社だからこそできる活動は何か考えてみましょう。