ノウハウ 納品書の保管期間・電子化方法・保管方法など徹底解説
更新日:2024年10月17日
投稿日:2023年11月29日
納品書の保管期間・電子化方法・保管方法など徹底解説
商品に関わる物品の仕入れや消耗品などを業者から購入する場合、「納品書」という書類が同梱されているのを見たことがある方は多いはずです。
実は、納品書を受け取った場合は一定期間保管しなければならないと法律で決められています。
今回は納品書の具体的な保管期間に加え、電子化して保管する場合や電子取引で保管する際に知っておきたいメリット・デメリットなども詳しく解説します。
納品書とは
納品書とは、一般的に商品やサービスのやりとりで受注者が発注者へ発行する書類のことです。詳細は後述しますが、納品書には発注を受けて納品された商品の種類や数量、金額などが記載されています。
発注者としては、複数種類の商品を数十個または数百個単位で発注すると、納品された商品の種類や数量を確認することは困難です。しかし商品名や数量が明記されている納品書も付属していれば、発注通りの商品が納品されているか容易に確認できるようになります。
受注者としては発行する義務はない書類ですが、上記のような事情も考慮し、スムーズな取引を可能とするためにも納品書と商品を同梱するケースが多いのです。
納品書発行の流れ
納品書は、商品やサービスの取引が行われる際に以下のような流れで発行されます。
1 【発注者】見積依頼書を送付 2 【受注者】見積書を送付 3 【発注者】見積書の内容に同意のうえ、発注書を送付 4 【受注者】受注した商品と納品書を送付 5 【発注者】納品物を確認し、受領書を送付 6 【受注者】納品物にかかる代金の請求書を送付 7 【発注者】代金を支払う 8 【受注者】入金の確認後、領収書を送付 |
なお、業者によっては納品書と請求書を兼ね備えた書類(納品書兼請求書)を納品物に同梱することもあります。
受け取った納品書の保管は義務
発注者は納品書を受け取った場合、それを一定期間保管しなければなりません。納品書は法律で保存義務が定められている「証憑書類(しょうひょうしょるい)」の1つだからです。
証憑書類とは取引の事実があったことを証明する書類であり、納品書の他にも請求書・領収書・契約書なども該当します。主に取引の当事者間でトラブルが起きたときに証拠として用いたり、税務調査の際の参考にしたりします。
なお、商品やサービスの依頼を受注する側には納品書を発行する義務はありません。しかし上述の通り、納品書は万が一のトラブルの際に役立つ重要な証拠となります。そのため、商品やサービスを提供する際に納品書を発行する受注者が多いです。
7年?10年?納品書の保管期間と法律
納品書の保管期間については、法人税法・会社法・所得税法で定められています。企業(法人)なら税法と会社法の期間、個人事業主や雑所得を得ている人なら所得税法の期間が適用されます。
適用される法律によって保管期間は異なるため、あらかじめ理解しておきましょう。
納品書の保管期間一覧
企業と個人事業主に適用される法律ごとに定められている保管期間は、以下の通りです。
法律 | 保管期間 |
法人税法 | 7年間 |
会社法(法人) | 10年間 |
所得税法(個人事業主) | 5年間 |
なお、上記の保管期間はいずれも納品書を受け取ったタイミングからカウントが始まるわけではありません。
次項より、各法律の概要と保管期間の詳細について解説します。
【企業】法人税法
法人税法は法人が事業活動で得た所得に対して課税される国税、「法人税」に関することを定めた法律です。法人は、法人税法第67条の2に従い納品書を7年間保存することが義務付けられています。
上記の通り、納品書の保管期間は受け取った日から7年の間ではなく「確定申告の提出期限の翌日から7年間」となっているため注意が必要です。
例えば2024年3月末に決算を控えている法人が、2023年11月に納品書を受け取ったとします。その場合、確定申告の提出期限は2024年5月末となるため、納品書は2030年5月末まで保管する必要があります。
【企業】会社法
会社法は、法人の中でも事業によって利益を上げることを目的とした法人(会社)に適用される法律です。会社法でも納品書の保管期間に関して定められており、第435条第4項にて納品書を含む「計算書類」は10年間保存しなければならないと明記されています。
ただし、会社法で定められた保管期間は「計算書類の作成から10年間」となっています。確定申告の提出期限ではなく、決算の締め日の翌日から10年間保存する必要があるため注意しましょう。
【個人事業主】所得税法
個人事業主や雑所得を得ている個人には、法人税法や会社法は適用されません。その代わり個人の所得に課税される税金、「所得税」について定めた所得税法が適用されます。
所得税法上、納品書は「現金預金取引等関係書類に該当する書類以外のもの」として扱われ、5年間の保存が義務づけられています。青色申告者・白色申告者にかかわらず適用される保管期間です。
なお、この5年間は受け取った日から5年間ではなく、確定申告の提出期限の翌日から5年間です。個人の確定申告は毎年3月15日が提出期限とされているため、そこから年数を数えましょう。
納品書の保管方法
納品書は電子データか紙媒体で保管することになりますが、保管方法に関しても法律で定められていることはご存知でしょうか。
ここでは、納品書の保管方法に関する法律の詳細や電子データと紙媒体の納品書を保管するポイントを解説します。
電子帳簿保存法に基づき電子保存が義務化
電子帳簿保存法が改正され、2022年1月1日以降に電子データとして受け取った納品書は、電子保存しなければならないとされています。
猶予期間である2023年12月31日までは電子データで受け取っても紙に印刷して保存しても問題ありませんが、2024年1月1日以降は全面的に電子保存が義務化されるため注意が必要です。
ちなみに、紙で受け取った納品書を電子化して保存することは電子帳簿保存法で認められています。電子データと紙媒体の納品書が混在すると煩雑になりがちで管理の手間がかかるため、すべて電子化して保存するという手段も検討すると良いでしょう。
▶関連記事:電子帳簿保存法改正の猶予期間は2023年12月まで。宥恕期間後のリスクは?
納品書を電子化して保管する方法
納品書を電子保管するにはどうすれば良いのでしょうか。
以下より、電子取引で納品書を受け取った場合と紙媒体で納品書を受け取った場合に電子化して保管する方法を解説します。
電子取引で受け取った納品書の場合
電子取引にて、電子データとして受け取った納品書はそのまま電子保存する必要があります。
従来はプリントアウトして紙媒体で保管しても良いとされていましたが、2024年1月1日以降は全面的にプリントアウトしての保管は認められなくなります。
保管の際は必要なときにすぐ確認できるような管理体制と、データの改ざん・消失を防ぐためのシステム構築が重要です。
紙媒体で受け取った納品書の場合
紙媒体の納品書を電子化のうえ保管する場合は、スキャンでPDFデータにしましょう。
ただし、紙媒体の納品書の電子化については、電子帳簿保存法で条件が定められています。保存されたデータが改ざんされていないことを証明するための項目を満たしたり、保存時の解像度・階調・大きさが決められていたりと、様々な条件があるため注意が必要です。
なお、電子帳簿保存法の改正前は紙媒体の納品書を電子化のうえ保存する場合、事前に国税庁への承認申請が必要とされていました。
改正後の現在は承認申請が不要になったため、環境を整えればいつでも電子保存の体制にシフトチェンジが可能です。
納品書を紙媒体で保管する方法
紙媒体で納品書を受け取った場合は、そのまま紙媒体で保管しても電子化して保管しても問題ありません。
紙媒体のままなら、保管方法は基本的にファイリングが適しています。ファイリングすれば必要となった際に見つけやすく、紛失も防止できます。また、月や年度ごとに分けたボックスにファイルをまとめておくと過去の納品書を遡りやすくなります。
事業者によっては毎月・毎年のように膨大な量の納品書が溜まるため、煩雑にならないような工夫が必要です。オフィスのスペースに入りきらない場合は外部の倉庫や書類預かりサービスを提供している業者を利用するか、ペーパーレス化に向けてシステムを導入することをおすすめします。
▶関連記事:【電子帳簿保存法対応】納品書の電子化は義務?電子化のメリットや注意点
納品書を電子化するメリット・デメリット
紙媒体の納品書の電子化には、メリット・デメリットが等しく存在します。
納品書を上手に管理するためにも、具体的なメリットとデメリットの両方を理解しておきましょう。
メリット
納品書を電子化するメリットとしては、以下の4つが挙げられます。
・簡単に過去のデータを遡ることができて業務効率化につながる ・印刷代や郵送代などのコストがかからない ・クラウド上に保存できるので災害による消失のリスクがない ・アクセスやダウンロードに制限がかけられるため第三者に見られない |
納品書の電子化は、主に管理・コスト・セキュリティ面でのメリットが大きい手段と言えます。
デメリット
納品書を電子化する際のデメリットは、以下の通りです。
・セキュリティ面のリスクがある ・従業員が業務フローの変化に慣れるまで時間がかかる |
電子化した納品書は紙媒体よりも情報漏洩のリスクが低い一方で、サイバー攻撃を防ぐためのセキュリティ対策は必須となります。
また、USBメモリなど持ち出し可能な記録媒体への保存を制限するなど、データが物理的な方法で外部へ出ないための対策も重要です。
もう1つのデメリットとして、突然の電子化に伴う業務フローの変化に従業員がついていけず、業務効率が低下する可能性もあります。
電子化の導入前に十分な時間を確保し、操作方法や今後の業務フローについて周知する必要があります。
納品書にはどんな項目が記載されている?
納品書は法律で記載項目が定められているわけではなく、各事業者が独自に定めたフォーマットで記載されています。
ただし、どの事業者も基本的な記載項目は共通しています。
納品書に記載される基本的な項目は、以下の通りです。
項目 | 内容 |
宛名 | 発注した担当者の氏名や企業の名称 |
納品書発行元 | 納品書を発行した担当者の氏名・企業名、住所、電話番号、メールアドレスなど |
発行年月日 | 納品書を発行した年月日 |
納品物の内容 | 納品された商品やサービスの名称、納品数、単価、税額など |
合計金額 | 納品された商品やサービスの金額と消費税額の合計 |
なお、実際には納品していない商品やサービスを記載するなど内容に誤りがあればすぐに納品先へ連絡のうえ正しい納品書を再発行しましょう。
納品書の内容と事実が異なると相手方に迷惑がかかり、信用の失墜にもつながります。
受け取った納品書を捨ててしまったときの対処法
受け取った納品書を誤って破棄したり紛失した場合は、発行元に連絡して再発行を依頼しましょう。
本来納品書は発行義務がない書類であり、取引先が納品物を把握しやすくなるような配慮として慣習的に発行されているものです。
そのため再発行に関しては特に制限がなく、依頼すればほとんどの発行元は再発行に応じてくれます。
ただし、再発行後に紛失したと思っていた納品書が出てきた場合は注意が必要です。
同じ内容の納品書が2つ存在すれば後から混乱する恐れがあるため、再発行の際は「記載項目はすべて同じにすること」「再発行であることを明記すること」も併せて依頼しましょう。
納品書以外に保管が必要な書類と保管期間
先述の通り、納品書は証憑書類に含まれる書類であり税法で一定期間の保管が義務となっています。
証憑書類は大きく分けて5種類あり、納品書以外にも数多くの書類が含まれています。
種類 | 書類 |
金銭のやり取りに関わる書類 | ・請求書 ・領収書 ・支払い証明書 など |
物品やサービスに関わる書類 | ・注文書 ・納品書 ・受領書 ・見積書 ・検収書 など |
契約に関わる書類 | ・業務委託契約書 ・賃貸借契約書 ・取引基本契約書 ・秘密保持契約書 ・銀行取引約定書 など |
雇用に関わる書類 | ・雇用契約書 ・給与明細書 ・賃金台帳 など |
その他 | ・通帳 ・議事録 ・稟議書 |
会社法においては、賃借対照表や損益計算書などの決算書類、総勘定元帳など事業に関する重要書類は10年間の保存が必要です。
会社法に定めがない国税関係の書類(領収書、棚卸表、契約書など)については、法人税法で7年間、所得税法で5~7年間の保存義務があります。
また、賃金台帳や労働者名簿など労働に関する重要書類は、労働基準法に従い5年間保存しなければなりません。
納品書の保管期間は最低7年!楽に管理するなら対応システムの導入を
納品書は企業なら最低7年、個人でも5年間の保管が法律で義務付けられています。
保管方法は基本的に電子データ・紙媒体のどちらでも良いですが、紙媒体で受け取った納品書を電子化する場合は電子帳簿保存法の要件を確認する必要があります。
とはいえ改正により要件は緩和されているため、いつでも簡単に納品書のペーパーレス化を開始することが可能です。
納品書を電子化すれば管理が楽になる他、オフィスのスペースが圧迫されずコスト削減にもつながります。
安全な管理システムなどアウトソーシングも上手く活用しながら、納品書を適切に保管しましょう。