ノウハウ 法的リスクとは?業種別の種類とコントロールする方法
更新日:2024年10月17日
投稿日:2023年11月21日
法的リスクとは?業種別の種類とコントロールする方法
信頼できる組織であり続けるためには、企業を脅かす法的リスクに備えることが重要です。
企業にはいくつものリスクが想定されます。業種によっても特に対策すべきリスクは異なります。
そこで、本記事では業界ごとに予測しておくべき法的リスクを紹介します。
リスクを上手く対処できない時に起こり得ること、対策・対処法についても分かるようになっています。
法的リスクの種類
法的リスクとは法令違反に伴うリスクです。
法的な問題が起こると、企業が損害を被ることになります。どのようなリスクが想定されるのか、業種別に紹介します。
製造業・メーカー
製造・メーカー業は分業が進んでいます。多様な雇用形態の人が働いており、契約内容も一律ではありません。
労務管理が行き届かない、契約内容に誤りが生じるなどのリスクが懸念されます。
人手不足や離職率の高さは業界の課題です。人材が集まらなければ、長時間労働につながりかねません。
働き方改革の流れは製造・メーカー業も無視できません。インターネットが当たり前の存在となったことで、労働者も法令などを容易に調べられるようになりました。自社の時間外労働は法令に違反しているのでは、未払いの残業代があるのではなどに気づきやすく、会社に違反を訴える例も少なくありません。
どの企業・業種にも言えることですが、コンプライアンス(法令や社内規則、道徳観などの遵守)にも厳しくなっています。
コンプライアンスに反する企業は信頼を失いやすいです。顧客も積極的に取引したいとは思えず、結果、売上減に至る恐れがあります。
薬品工場や危険な作業を伴う工場など、事業所によっては製造過程で取り扱いを誤ると、重大なケガや健康被害につながりかねないリスクを秘めています。
労災保険だけでは対応しきれない労働災害が起きてしまうと、損害賠償責任や業務上過失致死傷罪などに問われることが懸念されます。労働基準法など労働に関する法令違反と認定されることもあります。
電気・ガス
2016年の電力自由化をきっかけに電気事業法は大きく変わりました。今の活動が適法か否か確実に判断できないと、法令違反をしているかもしれません。
事業に関係する制度の変更にも対応が必要です。
電気そのものに違いはありませんが、安定した電力を提供できる、お得なプランを扱うなど、事業者ごとの特色はあります。
事業者の特徴の違いが顧客の違いです。関わる法令も異なるでしょう。自社の顧客や提供するサービスに関係する法令を把握していないと、違反を犯しかねません。
2017年にはガスの自由化も始まりました。ガス会社に関連する法制度の改正もあります。内容によっては事業者の収支への影響が懸念されます。
個人情報の流出やコンプライアンス違反が起こると、お客様からの不信感につながることはもちろん、対応にかかる費用が経営を圧迫するかもしれません。
サイバー攻撃に遭えばお客様の個人情報流出だけではなく、都市ガスの製造や供給に影響することもあります。
脱炭素化が進んでガスの需要が少なくなれば、現在の料金を維持したまま提供することが難しくなるかもしれません。自社を選んでくれる人が減れば、売上減による経営悪化が懸念されます。
電気もガスも大切なインフラです。少しの違反でも信頼を失い、安心して利用してもらえなくなる恐れがあります。
運輸・通信
運送業もまた人材不足が課題の業界です。離職率の高さを解消できなければ、残された労働者の長時間労働が深刻になるかもしれません。
インターネットショッピングの普及で、自社だけで人材をまかなうのが難しくなっています。
外部委託などで人材を確保している事業者も少なくありません。直接雇用か否かという、契約の複雑化が見られます。業務におけるルールの周知徹底にも手間がかかります。万が一社内のルールが守られないことでお客様に不手際があれば、信用問題につながります。
長距離の運送を少ない人数で担当するとなると、長時間労働のリスクが高まります。休息が足りず健康状態に問題がある中で業務に就くとなると、事故などを引き起こしかねません。万が一の事態となれば民事責任や刑事責任を問われたり、労働関連の法令違反による処分が下されるかもしれません。
多様な分野でオンライン化が進んでいるために、情報通信業やIT企業もなくてはならない存在です。通信トラブルなどの時にはすぐに対処できるようにしなくてはならず、時には時間外労働や不規則な勤務になってしまいます。
顧客と契約内容の解釈に相違があれば、問題が起きた時にお客様の納得できる対応に至らないとクレームにつながります。
特許権や商標権、著作権といった知的財産を扱うことが多いため、機密情報の漏えいとなると損害賠償を負わなければならないことも想定されます。
個人事業主
働く時間や場所が自由な働き方で近年増加しています。企業と業務委託契約を交わすことで、契約に基づく仕事を期限内に提供します。
副業・専業問わず個人事業主の増加を受け、国は個人事業主のための法制度を進めています。
厚生労働省の資料を読むと、企業が個人事業主と取引する際に気をつけるべきリスクが見えてきます。
業務委託契約の締結時は必ず契約書を作成しましょう。仕事内容と報酬、例えばコンテンツ制作○円といった記載がないと、後にトラブルとなる恐れがあります。
どの仕事も付随する仕事はつきものですが、個人事業主の報酬は成果に対して支払われます。付随する仕事も報酬に含むか否か明記することで、報酬面でのトラブルは減らせるでしょう。
契約期間と更新についても必ず記載しましょう。
報酬は提供されてから60日以内に支払わないといけなくなっています。締め日・支払い日も契約時に確認の上契約書に記載しないと、いつ支払われるか分からず、未払いを疑われます。
労働時間など労働基準法が適用されないフリーランスですが、ハラスメントと捉えられるような言動をしたり、育児や介護など個人事業主の諸般の事情に配慮できないと、不信感を抱かれてしまいます。
契約書の作成など、企業が個人事業主と契約する際に守るべき事項が守られていないと、行政指導の対象となる可能性もあります。
卸売・小売・飲食業
製造業や運送業などと同様、飲食業なども人手不足が問題となっている業種です。
人手が集まらなければ、少ない人数で店舗を回さないとなりません。結果、長時間労働や十分な休日を与えられないなど、労働基準法違反に該当してしまうことが懸念されます。
ブラック企業と言われやすい業界であるが故に、有名店だと取引先や消費者からのイメージが悪化し、利用を控えられて売上が減る恐れもあります。
消費者と直接関わる労働者が多いため、理不尽なクレームを寄せられるリスクが高いです。クレームを減らすための取り組みを行わないことで、従業員が心身の不調による休職・退職に迫られる事態が想定されます。
従業員の働く環境を守れないと、人材確保は困難です。労働関連の法令違反を防ぐことも難しくなってしまいます。
金融・保険業
違約金や損害賠償金、和解のための罰金などが想定されます。
マネーロンダリングといった内部の不正、不正アクセスやサイバー攻撃といった外部の不正は信用問題に関わります。場合によっては損害賠償に応じることとなり、収支に影響を及ぼします。
サービス業
サービス業も消費者と接する機会の多い業種です。不当なクレームがいつ寄せられるか分からないため、従業員を守る体制を築けていないと、従業員の離職が増えるかもしれません。結果、人手不足に拍車がかかり、残った従業員の長時間労働などの要因になります。
店舗に問題があればお客様に迅速な対応が求められます。しかし、理不尽なクレームの対応マニュアルがないと、現場の従業員には大きな負担がかかります。
企業において法的リスクが高い影響
訴訟を起こされれば、信用が失われたり損害賠償を負うことになります。
取引や契約が法令に反していれば、契約自体が無効となります。業務停止命令といった行政処分が科されることもあります。
リスクコントロールの方法
企業にはあらゆる法的リスクが想定されます。リスクを未然に防ぎ、問題が発生したとしても不利益を最小限にするために取り組んでおきたいことが3つあります。
社外弁護士をつける
問題が発生した、トラブルが起きたといった時に弁護士に相談できると安心です。
訴訟を起こされた場合以外でも弁護士を頼ることはできます。例えば契約書に不備がないかチェックしてもらうなどです。契約書の問題がなければ、法的なトラブルが起きるリスクを小さくできます。
問題が大きくなるほど解決までの労力がかかります。早めに相談してほしいと思っている弁護士は少なくないので、何かあったらすぐに相談できる体制となるよう、相談するタイミングの基準を設けておくと良いでしょう。
提携する弁護士をこれから見つける場合、早めに見つけることをおすすめします。費用面などの条件が合わなければ、一から他の弁護士を探さないといけません。依頼する弁護士が見つかるまで時間がかかることを想定すると、早めに動いておくと良いでしょう。
システムを導入する
既に紹介したように、企業活動にはあらゆるリスクが想定されます。ビジネスに直接かかわるものの代表に契約書があります。契約書の期限、保管管理などを正しく行えるように体制を整えておくことが重要です。
自社で考えられる、また、既に問題となっているリスクを洗い出せて、適切な対処方法が見えるようなシステムの活用を検討してみてください。
リスクモニタリングができる社内体制を作る
リスクにいち早く気づいて対処できる環境は重要です。しかし、施策がリスクの緩和に有効だったのか分からないままでは今後に活かせません。また同じ問題が発生してしまい、対応できないかもしれません。
リスクを共有し、原因を分析、対策を考えて実行後に上手くいっているか、改善点はないかまで責任を持てる体制が必要です。
自分たちだけで調査から対策の評価まで行うのは大変です。
SNSの投稿によって企業の信頼が失われかねない、店舗でトラブルが発生しそうなどの時には、AIでモニタリングするシステムの導入を検討する価値があります。すぐにリスクを察知し、対処法を提示してもらえます。
事態が沈静化しない時には外部のサポートを得られるサービスもあります。
まとめ
業種によってあらゆる法的リスクが想定されます。特に、人材確保に苦戦していると、人手不足による問題、例えば長時間労働などが起こりやすいです。
消費者と接する機会が多いと、不適切なクレームが寄せられた時の対応を考えておくことも求められます。
雇用や取引など何かしらの契約を締結する際には、内容を確認した上で契約書を交わさないと、後に不都合が生じます。最悪の場合、訴訟や損害賠償に応じなければなりません。
法的リスクをコントロールするには、リスクにいち早く気づいて対処できる社内体制を整えることも一つの対処法です。
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