ノウハウ 電子証明書とは?発行方法・費用などをわかりやすく解説
更新日:2024年10月17日
投稿日:2023年11月21日
電子証明書とは?発行方法・費用などをわかりやすく解説
電子証明書はオンラインで確定申告や不動産登記などを行う際に不可欠なものです。ただし、取得しないと利用することはできません。
この記事ではそもそも電子証明書とはどのようなものなのか、電子署名やマイナンバーとの関係性とあわせて解説します。
有効期限や更新手続き、取得にかかる費用についてもまとめました。
電子証明書とは?
オンライン上で手続きを行う際、本人によって手続きされたことを証明するためのものです。
紙面上のやりとりの印鑑証明書にあたります。
会社・法人の代表者であることを証明する電子証明書もあります。法人向けの証明書は登記所が発行する「商業登記電子証明書」というものです。
電子署名との違い
電子署名とは押印や署名にあたる行為をオンライン上で行うことです。
本人が確実に押印・署名したことを証明するのが印鑑証明書であるなら、電子署名(紙面への押印・署名の役割を果たすデータを作成すること)を本人が行ったことを証明するのが電子証明書、という関係です。
紙面上の手続き | オンライン上の手続き | |
本人を証明するもの | 押印や署名 | 電子署名 |
本人が手続きしたことを証明するもの | 印鑑証明書 | 電子証明書 |
マイナンバーとの関係性
電子証明書の使用例のひとつがマイナンバーです。マイナンバーカードに電子証明書が搭載されることで、行政手続きの効率化を期待できます。
マイナンバーカードに格納できる電子証明書は下記の2種類です。
- 署名用電子証明書
- 利用者証明用電子証明書
署名用電子証明書は、オンライン上で電子データを作成・送信する際に使用するものです。例えば確定申告をe-taxで行う時などに使います。
作成・送信されたデータが本人が作成・送信したものと証明できます。
利用者証明用電子証明書はマイナポータルへのログインなど、ウェブサイトにログインする際に使用します。
ログインしているのが本人であることを証明するものです。
電子証明書の種類
個人用・法人用共にICカード形式とファイル形式の2種類あります。どちらも機能面の違いはありません。
ICカード形式はICカードに格納された電子証明書です。カード内が電子証明書の役割を果たすため、手続きの際はカードを読み込むためのカードリーダーが必要です。カードリーダーとパソコンを接続して使えます。
ファイル形式はパソコンやクラウドサービスなどに格納された電子証明書です。
重要な情報が含まれることは共通するので、いずれも管理にご注意ください。
電子証明書の仕組み
電子署名を行ったのが確かに本人であることを証明する電子証明書ですが、なぜ本人だと証明できるのでしょう。まずは電子署名の仕組みが分かると、理解しやすいかと思います。
電子署名は「公開鍵暗号方式」という暗号技術が用いられています。
電子文書をはじめ、電子的な情報を暗号化したり元の状態で見られるようにする際に使われるのが「暗号鍵」というデータです。公開鍵暗号方式は2つの暗号鍵が揃ってはじめてデータの暗号化と復元ができます。一方の暗号鍵で暗号化した情報は、ペアとなるもう一方の暗号鍵でないと読み込めない、という仕組みです。
電子署名した人がひとつの鍵を「秘密鍵」として用意し、秘密鍵を用いて電子データを暗号化します。暗号化されたデータを先方が復元する際に必要となるのがもう一方の暗号鍵である「公開鍵」。公開鍵を暗号化されたデータとあわせて先方に共有する必要があります。
公開鍵で暗号化されたデータを復元でき、元のデータと相違のないことを確認できることで、公開鍵とペアの秘密鍵の持ち主がデータの作成者と認識できます。また、データの一致によって改ざんされていないことも確かめられます。
暗号鍵とセットの暗号鍵を割り出すのは困難だと言われるものの、セキュリティの穴がないとは言い切れません。受け取った公開鍵が間違いなく取引相手のものだという証明がなければ、電子署名をした人を特定できないためです。
そこで、信頼できる第三者機関(認証局)が公開鍵の持ち主を証明します。認証局が公開鍵の持ち主を証明できた時に電子証明書が発行されます。電子証明書を電子データなどと一緒に共有することで、作成者を確認できます。
電子証明書の利用シーン
- 電子契約で本人が内容を確認した上で契約したことを証明する
- 印鑑証明のオンライン請求
- 国税・地方税の申告
e-taxなら国税の納税までできます。
- 不動産登記
- 動産、債権譲渡登記
- 成年後見人登記
- 自動車保有関係手続のワンストップサービス
上記は個人・法人共に電子証明書が必要になります。
法人では以下のような場面でも電子証明書を使うことになります。
- 社会保険・労働保険関係の手続き
- 特許のインターネット出願
- オンラインによる支払い督促の手続き
など
電子証明書の信頼性
オンライン契約を締結したことのある方であれば、電子証明書は電子印鑑のように自分で作成できるのではと思うかもしれません。
しかし、誰もが自由に作成したものでは、やりとりを行う相手は本当に本人が手続きしているか不安になるのではないでしょうか。
そこで、手続きしていた人を証明して証明書を発行する役割を担う第三者として認証局が存在します。
第三者が不正に電子証明書を作成する恐れはないか心配な方もいるかと思いますが、信頼できる第三者機関が発行することで、電子証明書の信頼性が担保されています。信頼できる第三者機関とは総務省の基準を満たす認証局のことです。
例えば、デジタル庁が整備・運用しているe-Gov電子申請に使える電子証明書を発行する認定局はe-Gov電子申請のサイトから確認できます。
電子署名と電子証明書の関係 なぜ必要なのか
電子署名は印鑑と比較すると改変やコピーがしやすく、有効なものと証明する難しさがあります。なりすましではなく間違いなく本人が電子署名し、電子データの改ざんなどが行われていないことを電子証明書が示します。
信頼できる第三者機関によって発行された証明書である故、電子署名とあわせて提出することで効力を持ちます。
電子証明書の仕組みでご説明した通り、電子署名は「公開鍵」と「秘密鍵」で成立しています。
紙面上のやりとりの際、印鑑と印鑑証明書の組み合わせで印鑑の持ち主本人によるものと証明できますが、印鑑証明書に当たる電子証明書がなぜ電子署名した本人であると証明できるのでしょう。電子証明書が本人によって電子署名されたことを示せる理由は、電子証明書に公開鍵と、証明書を発行した認証局の情報が含まれているからです。
電子署名のデータと信頼できる発行元が分かるおかげで、電子証明書が信用に値すると判断できます。
電子証明書の取得方法
電子証明書の取得には下記の手順を取ります。
- 電子証明書を取得するためのソフトウェアをインストール
- 暗号鍵など電子証明書の発行・申請に必要なファイルの作成
- 電子証明書の発行申請
- 電子証明書のダウンロード
会社・法人が取得する場合、「証明書発行申請ファイル」を作成し、電子証明書を発行申請する際に本店の所在地を管轄する登記所への提出が必要です。
電子証明書の有効期限
電子証明書は発行申請したら一生使えるものではありません。
電子証明書に使われている暗号技術のおかげで、不正の起こる可能性は低いとされているものの、コンピューターの性能が年々高くなることを考えると、セキュリティが脆弱となる可能性は否めません。
安全性を確保するためにも、有効期限が設けられています。
個人用の場合、有効期限は電子証明書を発行した日から5回目の誕生日までです。
商業登記電子証明書は3ヶ月から3ヶ月おきに、最長27ヶ月の期間から選択できます。
更新手続きの流れ
期限の切れた電子証明書は手続きに使えなくなります。
個人用の電子証明書は有効期限満了日の3ヶ月前から手続きできます。有効期限前に更新すると、発行申請した日から6回目の誕生日まで有効になります。
商業登記電子証明書は、失効したら新たに取得が必要です。有効期限内でも内容に変更があれば証明書は無効となる場合がありますが、一定の条件を満たせば手数料不要で更新できます。条件や手続きなどは管轄の登記所までお問い合わせください。
マイナンバーカードに格納された電子証明書は、以下の流れで更新できます。本人が手続きする場合と代理人が手続きする場合にわけてまとめました。
本人が手続きする場合 | 代理人が手続きする場合 |
|
|
有効期限通知書は郵送されます。更新手続きに予約が必要な自治体もあるので、ホームページなどで確認してみてください。
また、更新手続きはオンライン上でできません。オンラインで手続きしたのが間違いなく本人だと示す証明を発行するには、対面で厳格な本人確認が重要、という理由のためです。
電子証明書の利用料金
電子証明書の取得にかかる費用は認証局によって異なります。ただし、マイナンバーカードの交付申請が当面無料のため、個人の電子証明書は、マイナンバーカードを無料で取得できる間は無料ということになります。
紛失や破損など、自己責任でマイナンバーカードの再発行が必要な場合は1,000円の手数料(電子証明書の発行手数料200円+マイナンバーカードの再発行手数料800円)がかかります。
商業登記電子証明書は有効期限に応じて手数料がかかります。
3ヶ月 | 6ヶ月 | 9ヶ月 | 12ヶ月 | 15ヶ月 | 18ヶ月 | 21ヶ月 | 24ヶ月 | 27ヶ月 |
1,300円 | 2,300円 | 3,300円 | 4,300円 | 5,300円 | 6,300円 | 7,300円 | 8,300円 | 9,300円 |
失効するケース
電子証明書の有効期限に達するのはもちろん、有効期間内でも失効はあり得ます。
例えば証明書の本人が亡くなった時です。
氏名や住所が変更になった場合も失効します。引っ越しなどで個人情報に変更があった時には申請し直す必要があります。
商業登記電子証明書も同様です。会社・法人の代表者や本店、商号などに変更があった際には失効することもあります。
まとめ
電子証明書とは電子署名したのが確かに本人であることを証明するためのものです。印鑑証明書と押印・署名のような関係です。
電子署名には複雑な技術が用いられているため、電子署名のデータの改ざんなどは起こりにくいとされています。しかし、契約などを交わす相手は、電子署名した本人が本当にやりとりしているのか不安に思う人もいるでしょう。
そこで、電子署名した本人であることを証明する電子証明書が必要となります。電子証明書は、法務局によって認定された第三者機関に発行されるため、信頼性が担保されます。
電子証明書には有効期限があります。また、法人用の証明書の取得には費用がかかります。
登録内容に変更があったなどの時には更新手続きが必要な点もご注意ください。