ノウハウ 覚書とは?契約書との違いは?電子化方法や印紙の扱いも徹底解説
更新日:2024年10月31日
投稿日:2023年09月26日
覚書とは?契約書との違いは?電子化方法や印紙の扱いも徹底解説
「覚書と契約書・念書との違いとは?法的拘束力はある?」
「覚書に収入印紙は必要?電子化した場合は?」
覚書(おぼえがき)について、このようにお悩みの方はいませんか?
日常的な意味ではメモ書き程度の意味で利用されている覚書ですが、ビジネスの場では強力な拘束力をもつ可能性もあることをご存じでしょうか。
この記事では、覚書の意義や契約書との違い、作成される場面について分かりやすく解説します。また、覚書に収入印紙が必要なのかどうかや、電子化するメリットについても解説します。
覚書とは?意義や契約書等との違いを解説
まずは、覚書の意義や契約書・念書との違いについて解説します。
そもそも覚書(おぼえがき)とは
覚書は、日常用語としては単なるメモ書きという意味で用いられますが、ビジネスの現場では簡易的な契約書という意味で用いられることが多いです。また、場合によっては覚書というタイトルでも非常に重要な効力を持つ場合もあります。
タイトルが「覚書」とされている文書であっても、中身をみると実質的に契約書と変わらない性質をもつことがあり、このような場合にはタイトルに関わらず契約書としての法的拘束力が当事者に対して生じることになります。
このように「覚書」という言葉の使用方法は状況や人によって異なることがあるため、覚書を取り交わす際には、その内容に細心の注意を払って確認することが重要です。
覚書と契約書の違い
覚書と契約書との間には、基本的に違いはありません。
もっとも、保証契約などの一部の例外を除き、法律上、契約書の作成は義務付けられていません。
コンビニエンスストアでおにぎりを買う際、わざわざ売買契約書を作成しないのと同様に、 たとえ1億円の物品であっても契約書の作成は任意とされています。契約書とは、あくまで法的紛争に発展した際に契約が実在したことを証明する証拠であり 、タイトルなどの形式は問題とならないものです。
そのため、文書のタイトルが「覚書」であれ「契約書」であれ、その法的拘束力や当事者拘束力の強さは文書の内容によって判断されます。
実務上は、「契約書」よりも「覚書」のほうが心理的に軽い印象があるため、「覚書」の語が用いられることがあります。
覚書と念書の違い
覚書と似た性質をもつ文書に「念書」があります。
念書の場合も同様に、タイトルがどうであれ文書のもつ効力はその内容によって判断されます。すなわち「念書」というタイトルであっても、契約書と同等の効力をもつこともありえるということです。
一般的に、覚書や契約書が当事者双方の合意のもとに作成・締結されるのに対し、念書は片方の当事者から相手方に対して一方的に作成・送付されることが多いです。
念書はあまりビジネスの場で用いられることは一般的ではなく、同一の意味で「誓約書」が用いられることがあります。
覚書を作成するケース
覚書は、契約書を作成する場合と同様に、様々なケースで作成されます。
特に、契約書を締結するほどの厳密さは必要ないが、合意内容を明確に記録しておきたい場合に活用されます。覚書を上手に活用することで、将来の誤解や紛争を回避することが可能です。
実際に覚書が作成されるケースとしては以下のような状況が考えられます。
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前述のとおり、覚書は契約書のように心理的負担をもたせることなく、簡便に作成できる点が利点です。
一方で、その内容によっては契約書と同等の法的拘束力をもつため、特に重要な契約においては、覚書によって契約を補足するのではなく、新たに契約書を取り交わすほうが望ましい場合もあります。
覚書に収入印紙は必要?
覚書に収入印紙の送付が必要かどうかはその覚書の内容によって判断されます。
タイトルが「覚書」であっても、その文書の内容からみて、印紙税法上の課税文書に該当する場合には収入印紙の貼付が必要です。
課税文書に該当するかどうかは、その文書に記載されている内容に基づいて判断することとなりますが、当事者の約束や慣習により文書の名称や文言は種々の意味に用いられています。そのため、その文書の内容判断に当たっては、その名称、呼称や記載されている文言により形式的に行うのではなく、その文書に記載されている文言、符号等の実質的な意味を汲み取って行う必要があります。
【引用:課税文書に該当するかどうかの判断 – 国税庁】
したがって、例えば文書のタイトルが「請負業務に関する覚書」であっても、その内容が請負契約に関するもの(請負人の仕事完成義務、注文者の報酬支払義務)であり、報酬額が1万円を超える場合には200円の収入印紙の貼付が必要です。
課税文書となる対象については、国税庁のWebサイトからも確認できます。
【参照:印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで – 国税庁】
【参照:印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで – 国税庁】
覚書を作成する場合の注意点
覚書を作成する際には、いくつかの注意点を押さえることが重要です。
先述の通り、覚書の法的効力はその内容によって変わり、契約書と同様の拘束力をもつこともあります。そのため、内容を適切に確認した上で署名や押印を行い、リスクヘッジを行うことが重要です。
また、覚書という用語の使い方についても注意が必要です。人によっては覚書の意味や重要性に異なる理解があるかもしれません。そのため、覚書を作成する前に、当事者間で覚書の意義や効果についてしっかりと確認し合うことが重要です。
このように双方の理解を一致させることで、将来的な誤解や紛争を避けることができます。覚書は合意や取り決めを明確にするための有用な手段ですが、その法的性質や認識の差異に注意しながら作成することが大切です。
覚書は電子化可能!覚書を電子化するメリット3つ
ここまで解説してきたように、覚書と契約書との間にはほとんど違いはありません。
そのため、電子帳簿保存法などの制定により契約書の電子化が可能になった今では、覚書 も電子化することが可能です。
実は覚書を電子化することには様々なメリットがあります。以下からはその代表的な3つのメリットを紹介します。
検索とアクセスが容易
覚書を電子化するメリットとして、特に検索やアクセスの容易さが挙げられます。
通常、覚書は契約と密接に関連して作成される文書であり、これを紙の形式で保管していると、紛失の危険性や必要な時に探すのが困難な状況が生まれることがあります。
それに対して電子化された覚書は、関連する他の文書との連携もスムーズにできる上、特定のキーワードや日付で瞬時に検索が可能です。
このような電子化の恩恵により、業務のスピードや正確性が大幅に向上するだけでなく、関係者も必要なデータを手間なく確認できるようになります。
契約業務の効率化
覚書を電子化することの大きな利点として、契約業務の高度な効率化が挙げられます。
伝統的に紙ベースでの覚書の取り扱いは、作成、保存、共有といった各ステップにおいて多くの時間や手間が必要でした。
しかし、電子化によってこれらの作業が大幅に簡略化され、特に多数の関係者間での情報の共有や、文書内容の迅速な更新が求められるシチュエーションでその効果を最大限に発揮します。
複数の当事者が関わる契約業務や変更が頻発する状況では、電子的な覚書の利用は情報の鮮度を保ちつつ迅速な共有を可能にします。
この結果、業務の速度は上がるのみならず、文書の誤りや矛盾を避けるための精度も格段に向上します。
収入印紙が不要
覚書を電子化する際の重要なメリットとして、収入印紙が不要となる点が挙げられます。
紙ベースの覚書や契約書には、金額に応じて収入印紙を貼付する必要があります。この作業は、印紙を購入する手間や、正確な金額の印紙を選定する作業、さらにそれを文書に貼り付ける作業など、複数のステップを要するため、業務の効率を阻害する要因ともなります。
しかし、電子化することでこれらの手続きが不要となります。収入印紙のコストや管理の手間、またその誤用によるトラブルを避けることができ、全体の業務フローがよりシンプルでスムーズに進行します。
結果として、企業の運営コストの削減や、業務の迅速化が期待できます。
▼電子契約で印紙が不要な理由を詳しく解説した記事はこちらです
まとめ
今回解説したように、覚書は契約書と同様、その内容によって当事者を拘束する効力をもつ文書であり、内容次第では収入印紙の貼付が必要となります。
覚書は、契約書を取りかわすほどでもないような合意をする際に用いられることが一般的ですが、「覚書」という言葉の使い方は人によって違いがあるため、しっかりと内容を確認する必要があります。
覚書も契約書と同様に電子化が可能で、電子化は業務効率の向上やコストカットなどのメリットをもたらします。
複雑になってしまった契約プロセスの正常化により社内のだれでも分かる状態を作るには、契約管理システムの検討をおすすめします。