ノウハウ 取締役会議事録とは?記載事項や保管・電子化方法を分かりやすく解説
更新日:2024年10月31日
投稿日:2023年08月31日
取締役会議事録とは?記載事項や保管・電子化方法を分かりやすく解説
「取締役会議事録の作成方法・保管方法が分からない」
「取締役会議事録は電子化できるの?」
取締役会議事録に関して、このようにお悩みの方はいませんか?
会社役員で構成される取締役会は、主に業務執行の決定などを行う、会社にとって重要な意思決定機関です。その取締役会で行われた会議の議事録は、実は会社法で作成が義務付けられていることをご存じでしたか?
今回は、取締役会議事録の意義や役割、具体的な作成・保管方法について分かりやすく解説します。また、取締役会議事録を電子化する方法やメリットについても解説します。
取締役会議事録とは?作成意義や記載すべき事項を解説
まず、取締役会議事録に関する基本的な知識を解説します。
①そもそも取締役会とは?
取締役会とは、業務執行の決定、取締役の職務執行の監督、代表取締役の選定・解職を職務とする会社の意思決定機関です。
同様に、会社の重要な意思決定機関として株主総会がありますが、基本的に株主総会では会社組織に関する事項が決定され、取締役会では会社経営に関する事項が決定されます。
具体的にどのような事項が決議の対象となるのかは、法令に定めが置かれているほか、各会社の定款や職務権限規程等の規定によっても異なります。
取締役会の開催頻度については、代表取締役及び業務執行取締役が3か月に1回以上は取締役会に執務状況を報告する義務を負っていることから、最低でも年に4回は開催されることとなります。
なお、「取締役会」は会社法に定められた法的な手続きであるのに対し、取締役が集まって会議する「経営会議」等はあくまで任意に開催されるものであり、明確に区別されます。
機関名 | 主な議決内容 | 具体例 |
取締役会 | 会社経営に関する事項 | 重要な財産の処分 |
株主総会 | 会社組織に関する事項 | 役員の選解任 |
▶取締役会とは?会社法に沿って開催頻度・議題・議事録作成など解説
②取締役会議事録の意義
取締役会議事録を作成する意義は、会議における議事の内容や結果を記録するとともに、出席した取締役の意思決定を明確にすることにあります。
会社法では、取締役議事録に関して責任の所在を明らかにするための規定が複数置かれており、将来何らかの問題が生じた際に責任を追及するための利用が想定されているといえます。
なお、取締役会議事録は会社法で作成が義務付けられている法定文書であるため、必ず作成しなければなりません。
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③取締役会議事録の作成・保管方法
取締役会議事録は、書面または電磁的記録(PDFなどの電子データをHDD等に記録)で作成しなければならず、作成した議事録は取締役会の日から10年間本店に保管しなければなりません。
保管を怠ると、違反した取締役には100万円以下の過料が課されるほか、経営に関する重大な情報が流出する可能性があるため、厳重な管理が必要です。
④取締役会議事録を作成する時期
取締役会議事録の作成時期については、法令で特に明文の規定は置かれていません。
ただし、保管の起算点が「取締役会の日」と定められていることや、登記に関する決議が行われた際の議事録は登記申請期間である2週間以内に作成しなければならないとされている点から、会議の当日ないし2週間以内に作成するのが望ましいでしょう。
取締役会議事録に記載する事項
次に、取締役会議事録に記載すべき事項について解説します。
記載事項については法令で細かな規定が置かれており、取締役会のたびにチェックしていると記載漏れが生じる可能性があるため、記載事項を網羅したテンプレートを作成しておくことをおすすめします。
①必ず記載しなければならない事項
取締役会議事録に必ず記載しなければならない事項(必要的記載事項)については、主に会社法施行規則101条3項に規定されています(参照:e-gov法令検索)。
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近年は、社外取締役の増加やコロナ禍の影響もあり、オンライン等のリモート環境で取締役会が開催されるケースも増加しています。
リモートでの開催の場合、取締役会議事録には下記の点も記載しなければなりません。
この点はインターネット上で配布されているテンプレートに記載されていない場合が多いため、注意が必要です。
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②その他の記載事項
上記の必要的記載事項のほかに、取締役会に関係する事項であって、記載が必要であると思われる事項については任意に追加することができます。
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取締役会議事録は電子化できる
ここまでは、取締役会議事録の概要や、記載すべき内容などについて解説しました。
実は2020年に法務省が新しい見解を発表したことにより、取締役会議事録をより柔軟に電子化できるようになりました。
以下からは、取締役会議事録の電子化に関する基本的な情報を解説します。
①電子化に関する法務省の見解まとめ
法務省が2020年5月に発表した見解により、取締役会議事録に必要な取締役・監査役の承認が、クラウド型電子署名(電子契約事業者)でも認められるようになりました(参照:取締役会議事録に施す電子署名についての法務省見解 – 新経済連盟)
従来から電子署名による承認は可能でしたが、認定局で本人確認のとれた電子証明書を付与した電子署名しか利用できず、実務上はあまり用いられていませんでした。
法務省の新見解でクラウド型電子署名サービスでの承認が可能になったことにより、今後は取締役会議事録の電子化が一気に推進されることと予想されています。
②当事者型と立会人型のいずれも利用可能
電子署名の付与方法には、当事者型と立会人型の二種類がありますが、取締役会議事録の電子化ではいずれも利用可能です。
当事者型 | 利用者自身が、電子証明書を発行し電子署名を付与する |
立会人型 | 事業者が、利用者の本人確認を行い、電子署名を付与する |
③取締役会議事録を電子化するための要件
取締役会議事録を電子化する場合であっても、基本的に、従来通りの要件に変更はありません。そのため、今回解説した作成・保管・記載内容等に大きな変更はありません。
したがって、電子契約サービスを導入し、当該サービス上で電子署名さえすれば、適法に取締役会議事録の電子化が可能です。
ただし、以下の点には注意が必要です。
社内規程を変更する
会社によっては定款・文書規程・印章規程などにより、押印に関する規定が置かれている場合があります。
もしこれらの社内規程規定により押印が義務付けられている場合には、法令ではなく社内規程違反として文書が不成立となる可能性があります。
そのため電子契約サービスの導入により電子署名をする場合には、こうした社内規程の変更が必要です。
▶関連記事:【電子契約導入準備】社内規定や契約書の変更ポイントをサンプル付きで解説!
商業登記電子証明書を取得する
オンライン登記申請を行う際に、電子化された取締役会議事録を添付する場合には、前もって会社の商業登記電子証明書を取得する必要があります。
オンライン登記に利用できる電子証明書や形式等については、法務省のサイトで詳しく紹介されています。
【参照:ご利用の手引き – 法務省】
保管と閲覧請求
電子化された取締役会議事録についても、本店で10年間保管しなければならず、株主等からの求めがあれば閲覧・謄写に応じなければなりません。
電子化された取締役議事録の場合、紙に印刷したものを見せるか、モニターで表示したものを見せることで代用できます。
なお、データの保管場所はクラウド上でも可能と考えられていますが、念のため会社が本店で利用しているHDDやCD-ROM等の外部記録装置にも保管しておくようにしましょう。
取締役会議事録を電子化するメリット3つ
取締役会議事録の電子化は、会社が急速に変化する現代のビジネス環境に適応し、持続的な成長を達成するために必要なステップといえるでしょう。
以下からは、取締役会議事録を電子化する主なメリットを3つ紹介します。
メリット1.業務を効率化できる
取締役会議事録を電子化することで、従来の紙ベースの管理から解放され、業務の効率化が図られます。
物理的な資料の準備、配布、そして保管といった手間が省けるだけでなく、デジタルデータは検索性に優れているため、過去の議事録を調査する際も短時間で情報を見つけることができます。
また、紙ベースの議事録では時間と手間がかかる情報の再利用も、電子化により簡単に行うことが可能となります。
メリット2.リモートワークに対応できる
電子化により、リモートワークへの対応にも大きなメリットをもたらします。
現在は取締役が遠隔地に在住していることも珍しくありませんが、電子化により瞬時に情報を共有できることで、遠隔地からでも議事に参加・意見表明ができるようになります。
また、電子化により時間的制約を受けることもなくなるため、取締役は自分のタイミングでいつでも議事録を確認できるようになります。
電子化された議事録は、編集や更新、コメントの追加もリアルタイムに行うことができるため、リアルタイムのコミュニケーションも可能です。
メリット3.セキュリティガバナンスを強化できる
取締役会議事録は企業の重要な意思決定を記録したものであるため、その保管や取り扱いには最高レベルのセキュリティが求められます。
電子化により、情報へのアクセスを厳密に管理することが可能となり、情報漏洩リスクを軽減できます。また、電子データは適切なバックアップを取ることで、紛失リスクや自然災害から生じるリスクも軽減できます。
このように、電子化により企業全体の情報ガバナンスを強化し、信頼性の高いビジネス運営を実現することができます。
まとめ
今回は取締役会議事録に関する基本的な知識や、電子化の方法などについて解説しました。
取締役会議事録の作成は法律で定められた義務であり、作成や保管、記載内容などに関して細かな規定が置かれています。
2020年からは法務省の新見解により、クラウド型電子契約サービスでの電子署名が認められるようになったため、今後電子的に作成する企業が増加すると考えられています。
弊社が提供する『ContractS CLM』は、2021年12月3日にContract CLMの電子契約機能である ContractS SIGNが、グレーゾーン解消制度を利用し、電子署名法2条1項の定める電子署名であることが確認されました。
これにより、電磁的記録を用いて作成された取締役会議事録への電子署名にご利用いただけるようになりました。
今後ますます電子化が進む契約業務を効率化するためにも、この機会にぜひ一度導入を検討してみてはいかがでしょうか。