ノウハウ 電子帳簿保存法対応!注文書や発注書を電子化する方法とメリットを解説
更新日:2024年10月31日
投稿日:2023年08月15日
電子帳簿保存法対応!注文書や発注書を電子化する方法とメリットを解説
「注文書や発注書を電子化したいけど、ノウハウがない」
「電子帳簿保存法の要件はどうなっている?」
注文書および発注書の電子化を検討している方で、このようにお悩みの方はいませんか?
これらの書類を電子化することで、法令への適合および業務効率化・コスト削減を実現できます。そこで今回は、注文書・発注書を電子化するメリットとデメリット、具体的なステップについて解説します。
注文書・発注書の電子化とは?定義と仕組みを解説
「注文書・発注書の電子化」というと少し難しそうに聞こえますが、その実態はシンプルです。紙で管理していた注文書をPDFファイル等のデジタル形式に変換すること、それが注文書の電子化です。
具体的な方法として、①紙で作成された注文書・発注書をスキャナ等で読み取り、PDFファイルなどの電子データにして保存すること、および②最初から電子データで作成すること、の二通りがあります。
2022年に施行された改正電子帳簿保存法では、電子取引でやり取りした取引情報は、原則として電子データのまま書類を保存しなければならなくなりました。
ここにいう「電子取引」とは、注文書や契約書などの取引に関する情報を電子データでやり取りすることをいい、メール本文に記載された場合にはそのメールが、PDFファイルに記載された場合にはそのファイルが保存対象となります。
改正前 | 電子データを紙に印刷して保存することも可能 |
改正後 | 電子データは電子データのまま保存しなければならない |
電子化により、注文情報をパソコンやスマートフォンなどのデジタルデバイスで簡単にアクセス・保存・検索・共有できることとなり、業務効率が大幅に向上します。
例えば、商品の在庫状況や顧客情報など、注文書に関連する情報を即座に把握することが可能になります。その結果、顧客対応のスピードが上がり、ビジネスチャンスを逃すことなく、顧客満足度を高めることができます。
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電子保存しなくてもいい場合もある
ここまで紹介したように、電子帳簿保存法の改正に伴い、電子取引により送受信される納品書は、電子データとして保存する必要があります。
一方で、改正後も紙ベースで取り引きされた納品書は、引き続き紙の形で保存可能です。しかしこの場合、電子データによる保存と紙による保存とが併存することになり、管理方法が複雑化するため、税務調査などで必要な情報を見つけるのが難しくなる可能性があります。
現代のビジネス環境では電子取引を完全に排除することは難しいため、自社では電子的に納品書を作成し、他社から紙ベースで納品書を受け取った場合にはスキャンして電子的に保存することをおすすめします。
このように全ての納品書を電子化し一元的に管理することで、管理の効率化と情報の検索性を高めることが可能になります。
注文書・発注書を電子化するメリット5つ
注文書を電子化すると、いろいろなメリットが得られます。以下ではその中でも特に大きなメリットを5つ紹介します。
メリット1.電子帳簿保存法への対応
まず一つ目のメリットは、電子帳簿保存法への対応です。
先ほど紹介したように、電子帳簿保存法の改正により、全ての事業者は電子データとしてやりとりした注文書や発注書を電子データのまま保存する必要があります。
改正法の完全施行までの宥恕期間(猶予期間)は2023年末までとなっているため、2024年1月1日以降はすべての事業者がデータ保存に対応しなければなりません。
改正以降も紙でやりとりした注文書等は紙のまま保管することも可能ですが、そうすると過去の注文書等の保管方法が紙・電子データの2パターン生じることとなり、管理が煩瑣になってしまいます。そのため、あらゆる取引関係書類をすべて電子化し、一元的な管理へ移行する企業が増えているのです。
電子帳簿保存法に従わない場合には、推計課税・追徴課税、青色申告の取消し、100万円以下の罰金を課される可能性があるため、早急な対応が必要です。
メリット2.コスト削減
二つ目のメリットはコスト削減です。
注文書・発注書を電子化することで、紙やインク、印刷、保管スペースなどのコストを大幅に削減することが可能です。注文プロセスも高速化し、作業時間も大幅に短縮されます。
電子化によりコストを削減できるのは、電子データであれば物理的な資源を必要としないからです。
例えば、紙やインクを購入したり、印刷したりする必要がなくなります。また、保管スペースも必要としないので、オフィスのスペースを有効に活用することができます。
その結果、コストを大幅に削減し、それを他の重要な業務に投資することができます。
▶なぜ電子契約では印紙が不要なのか?理由と根拠を分かりやすく解説
メリット3.データの正確性と追跡可能性の向上
三つ目のメリットは、データの正確性と追跡可能性の向上です。
注文書・発注書を電子化することで、データの整合性と一貫性が保たれ、エラーが大幅に減少するため、注文の追跡と監査が容易になります。
例えば、手書きの注文書では読み取りミスや書き間違いなどが起こり得ますが、電子化することでこれらのミスを避けることができます。また電子データであれば大量のデータを一瞬で検索できることから、注文の追跡も簡単になり、いつどのような注文があったのかを一目で把握することが可能になります。
メリット4.環境負荷の軽減
四つ目のメリットは、環境負荷の軽減です。
紙を作るためには大量の木材が必要であり、廃棄により空気中の二酸化炭素増加をもたらしますが、紙の使用量が減れば、その生産と廃棄に伴う環境への負荷を同時に軽減できます。
日本国民全員がA4用紙1枚を節約すると、二酸化炭素の削減量は840トン(杉の木約6万本が1年間に吸収できる量)にも及ぶとの試算もあります(参照:その資料は本当に必要?ペーパーレス化のもう一つの環境メリット!- Operation Green)。SDGs(持続可能な開発目標)で掲げられた17の目標のうち、ペーパーレス化は8番(働きがいも経済成長も)と12番(つくる責任つかう責任)に該当するものです。
メリット5.リアルタイムの注文管理
納品書を電子データとして保存し管理することで、注文の詳細やステータスをすぐに把握できるようになります。
具体的には、製品の出荷状況、在庫状況、配送スケジュールなどの情報にいつでもアクセスすることが可能です。
これにより、企業はより迅速かつ効率的に業務を進めることが可能となり、顧客に対するレスポンスも速やかになります。また、問題が発生した際にも、リアルタイムの情報に基づいて即座に対応できるため、業務運営のスムーズさを保つことができます。
注文書・発注書を電子化する際に知っておきたい注意点3つ
ここまでは、注文書や発注書を電子化するメリットを紹介しました。しかし、注文書を電子化することにはデメリットもあります。
電子取引の場合、注文書・発注書の電子化は2024年までには必ず対応しなければならない義務ですが、以下の注意点も把握しておきましょう。
注意点1.初期費用とランニングコストが発生する
納品書を電子化するには、必要なハードウェアやソフトウェア・クラウドサービスの導入、それらを運用するためのITインフラの構築など、初期費用が発生します。
さらに、システムを維持・運用するためのランニングコストも必要です。これには、システムのメンテナンス、アップデート、トラブル対応などが含まれます。
これらの費用は、電子化を進める企業の負担となります。
しかし、これらの費用は初期投資と捉えることで、長期的に見れば納品書の電子化による経済的なメリットがこれらのコストを上回るでしょう。
注意点2.電子化への抵抗感と従業員教育が必要
次の注意点は、従業員の電子化への抵抗感を克服し、新しいシステムの操作を教える必要があるという点です。
特に、ITスキルが必要な作業に抵抗感を持つ従業員にとって、新しいシステムへの移行は大きなストレスとなりえます。
これに対する対策として、電子化のメリットを理解してもらい、抵抗感を解消するための教育が必要です。さらに、操作方法や業務の流れを理解してもらうための研修も重要となります。
注意点3.セキュリティリスクを伴う
納品書の電子化は、情報漏えいやハッキングといったセキュリティリスクを伴います。
納品書には、取引の詳細や顧客の個人情報など重要な情報が含まれているため、これらの情報が不適切にアクセスされたり、漏洩したりすることは、企業にとって大きなリスクとなります。そのため電子化する際には、高度なセキュリティ対策が必要です。適切な暗号化技術の利用やアクセス制御、セキュリティ更新の定期的な実施など、堅固なセキュリティ体制を整備することが求められます。
もっとも、紙の注文書には紛失や破損のリスクがあります。また、物理的なスペースを必要とするため、災害などによる被害を完全に防ぐことは困難です。
一方、電子化された注文書はクラウド上に保存されるため、そのようなリスクを大幅に減らすことが可能です。
クラウドサービスには専門的なセキュリティ対策が施されているものが多く、適切な選択をすればセキュリティ面でもメリットを享受できるでしょう。
注文書・発注書を電子化する具体的なステップ
ここからは、電子化を進めるための具体的なステップを紹介します。
ステップ1.自社のニーズを明確にする
納品書の電子化を行うためには、まず自社が何を求めているのかを明確に理解することが重要です。
具体的には、どのような情報を保存する必要があり、その情報がどのように使われるのか、どの程度のセキュリティレベルが必要なのかなど、自社の要件を詳細に洗い出すことから始めましょう。
ステップ2.適切なサービスやソフトウェアを選択する
自社のニーズを理解した上で、それに最適な電子化サービスやソフトウェアを選びます。
さまざまな電子化サービスが存在するので、自社の要件を満たすものを選択することが重要です。また、法的な要件を満たすためにも、電子帳簿保存法に適合したサービスを選ぶことが必要です。
サービス選びの際には、価格だけでなく、サポート体制や使いやすさ、アップデートの頻度なども考慮に入れると良いでしょう。
ステップ3.導入と教育を行う
適切なサービスとソフトウェアを選んだら、次に導入と教育を行います。
システムの導入は、専門的な知識が必要な場合もありますので、必要に応じて専門家に依頼することも考えましょう。
また、新しいシステムをスムーズに利用するためには、従業員への教育も重要です。操作方法だけでなく、なぜ電子化が必要なのか、どのようなメリットがあるのかを理解してもらうことで、抵抗感を軽減し、積極的に取り組んでもらうことができます。
まとめ
注文書の電子化は、時間とコストの削減、データの正確性と追跡可能性の向上、環境負荷の軽減など、多くのメリットをもたらします。
しかし、初期費用やランニングコスト、従業員教育、セキュリティリスクなど、デメリットも存在します。そのため、自社のニーズに合わせて適切なサービスを選び、その導入と運用を計画的に行うことが重要です。