ノウハウ 電子回覧の6つのメリット。文書回覧を電子化する方法とは
更新日:2025年03月6日
投稿日:2023年08月15日
電子回覧の6つのメリット。文書回覧を電子化する方法とは

「社内回覧も電子化できるの?電子化のメリットは?」
「社内回覧を電子化する具体的な方法を知りたい」
社内回覧について、このようにお悩みの方はいませんか?
社内回覧を電子化することにより、業務効率化やコスト削減、情報セキュリティの強化といったメリットを受けられます。しかし、メリットや具体的な方法について、よく分からないという方も多いのではないでしょうか。
本記事では社内回覧を電子化する際のデメリット・注意点と共に、電子化の6つのメリットと無料での進め方も含めた5つの電子化方法について解説します。
社内回覧とは
社内回覧とは、組織内の関係者に情報を共有するために文書や資料を回していくことです。そもそも回覧とは順に回して見るという意味です。自治体の回覧板を想像すると仕組みをイメージしやすいかと思います。
社内回覧では連絡事項、報告、決定事項などの共有が行われます。
紙で社内回覧する場合、書類を確認した従業員が印鑑やサインをして次の従業員に回すという流れが一般的です。
従業員間の認識をすり合わせ円滑に、そして正確に業務を進める手段として社内回覧が活用されています。
社内回覧を行う理由
第一に、情報を関係者に漏れなく情報を伝達することが理由として挙げられます。社内での決定事項や報告内容を関係者全員が認識していることで、透明性のある企業経営へと導かれます。
また、認識誤りによるトラブル防止としても社内回覧は役立ちます。周知事項が文書として残っていれば、いつでも再確認できるためです。
回覧文書の種類
回覧される主な文書は下記の通りです。
文書の種類 | 特徴 |
案内文書 | 社内行事やイベント、研修などの詳細を知らせる文書 |
通知文書 | 新しいルールや制度変更、重要な連絡事項などを周知する文書 |
議事録 | 会議の内容や決定事項を記録した文書 |
稟議書 | 承認や決裁を得るための文書。具体的な提案や理由が記載される |
上申書 | 上層部に提案や意見を申し述べるための文書 |
依頼文書 | 特定の部署・部門や従業員に対して、業務や協力を依頼する文書。目的も詳細に記載することが重要 |
報告文書 | 業務の進捗状況や成果、問題点などをまとめ、上司や関係者に共有するための文書 |
通達 | 経営層や管理部門が、全社的な方針や指示を従業員に伝達するための文書 |
社内回覧は電子化できる?
電子契約をはじめ、業務の電子化が進む中で、社内回覧も例外ではなく電子化が可能です。詳しい方法は後述しますが、メールやチャットツール、ワークフローシステムなどを活用することで、電子回覧を実現できます。
回覧の電子化によって複数人に一度にデータを送れるようになったり、情報共有の効率化を見込めます。
また、ペーパーレス化に取り組む企業が増える中、電子回覧の導入もますます広がっています。
社内回覧は電子化すべき?紙の回覧がもつ3つのデメリット
ペーパーレス化の波を受けて、契約書や納品書などの電子化を推進している会社であっても、社内回覧は今も紙ベースで行っているという会社も多いと思います。
しかし実は紙の社内回覧には、以下に紹介するように主に3つのデメリットがあります。
デメリット1.情報共有に時間がかかる
物理的な紙の回覧による情報共有は時間がかかり、また、社員の不在や他部署への配達等でさらなる遅延が生じることもあります。
これでは新しい情報を迅速に共有するビジネスニーズに対応できず、情報の流通が遅くなり、ビジネスの機動性を損なう結果に繋がります。
特に、リモートワークやテレワークが一般化する現代において、物理的な書類の配達が難しい、または不可能な場合には情報共有の遅延は避けられず、企業の生産性や効率性に大きな影響を及ぼす可能性があります。
デメリット2.情報の鮮度が下がる
物理的な紙の回覧による情報共有は時間がかかることから、その間に情報が古くなり、情報がもつ価値が低下する可能性があります。
現代のビジネスでは迅速な行動が求められるため、情報の鮮度低下は組織の適応力や意思決定力にネガティブな影響を及ぼします。
また紙の回覧では、新しい情報が入った場合に配布済みの書類を回収し、新たな情報を加え再配布するという非効率的な作業が必要となり、情報の鮮度を保つための追加の手間が発生します。
デメリット3.紙の管理にコストがかかる
紙の回覧は、情報共有だけでなく保管と管理のコストも発生させ、企業の負担となります。大量の書類を保管するためには専用のスペースやファイリングが必要で、整理や検索にも時間と労力がかかります。
これらは全てコストとなり、企業の生産性を低下させます。さらに、紙の書類は情報の紛失や破損のリスクもあり、これらの問題を対処するための追加のコストも必要です。
社内回覧を電子化する6つのメリット
社内回覧の電子化には、いくつかのメリットがあります。
現代のビジネス環境では情報の即時性や業務効率化が求められますが、社内回覧を電子化することで大きな前進ができるでしょう。
ここでは、生産性向上やコスト削減、リモートワークへの対応など6つのメリットを紹介します。
メリット1.業務効率化と生産性向上
社内回覧の電子化は業務効率化と生産性向上に寄与します。
電子化により、情報の共有は素早く返信もリアルタイムに可能となり、業務のスピードが向上します。
デジタル情報はすぐに検索・アクセスできるため、特に大量の情報を扱う現代ビジネスにおいて利点となるでしょう。また、紙の社内回覧の作成・管理にかかっていた時間と労力を節約し、リソースを他の重要な業務に集中させることができます。
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メリット2.コスト削減
社内回覧の電子化により、印刷、配送、保管などに伴うコストや、消耗品の購入費用を削減できます。
物理的な書類の配送や保管コストも大幅に減少し、オフィススペースをより効率的に利用することが可能になります。加えて、印刷にかかる時間と労力や、情報の紛失や破損のリスクと、それらから生じるコストも減少します。
メリット3.環境への負担軽減
社内回覧の電子化は、紙の使用量を削減し、自然資源の消費と環境負荷を抑えることで環境保護に寄与します。
具体的には、紙製品の生産や廃棄に伴う森林破壊、排水問題、ガス排出などの問題を軽減でき、また廃棄物の増加も抑制できます。
さらに、ぺーパーレス化は企業のCSR活動としてアピールできるため、SDGs活動に力を入れているということで企業のイメージ向上にもつながります。
メリット4.情報セキュリティの強化
社内回覧の電子化は、情報セキュリティの強化にもつながります。
物理的な書類は、紛失・盗難・不適切な廃棄などのリスクがありますが、デジタルデータはパスワードや暗号化を利用して保護可能であり、情報の流出や紛失リスクを大幅に減らすことができます。
また、データのアクセス履歴の記録により不正アクセスを迅速に検知でき、定期的なバックアップで重要な情報の紛失を防ぐことも可能です。
メリット5.リモートワークへの対応
リモートワークの増加に伴い、社内回覧の電子化は生産性維持と労働力の柔軟性向上に必要不可欠な施策となりました。
電子化によりいつでも・どこからでも・同じ内容にアクセスできるようになるため、リモートワーカーとオフィスワーカー間の情報非対称性を解消できます。
また、電子化はリモートワーカーの社内情報への投稿やフィードバックを容易にし、ワーカー自身のペースで情報を処理することを可能にします。
メリット6.回覧ステータスが分かる
ワークフローシステムなどのシステムを使った電子回覧は、どこまで回覧が進んでいるかひと目で把握できます。文書を閲覧済みの人とそうでない人をシステム上で確認できるため、共有漏れを防ぎやすいです。
なお、ワークフローシステムについては次の見出しで詳しく解説します。
社内回覧を電子化する5つの方法
社内回覧を電子化する方法として、ワークフローシステムや専門のクラウドサービスを導入するケースが多いです。メールやチャットツールなどを活用すれば、無料で電子化することも可能です。
本記事では5つの方法を紹介します。
方法1.メールやチャットで共有する
社内回覧の電子化の一つの方法として、メールやチャットツールを利用する方法があります。既存のデジタルコミュニケーションツールを利用して簡単に実装できるため、コストをかけずに始めることが可能です。
メールを使えば、文書やデータを添付ファイルとして送信し、全社員や特定のグループに一斉に情報を配信することができます。また、メールの履歴管理機能を使えば、どの情報がいつ配信されたかを確認することも容易です。
しかし、メールの場合、受信トレイが混雑していると情報が見逃される、誤送付による情報漏洩のリスクがあるため、重要な情報はフォローアップが必要かもしれません。
一方、チャットツールを使用すると、よりリアルタイムな情報共有が可能です。
また、チャットツールでは、スレッドやチャンネルを使って情報をカテゴリ別に整理することもできます。特に、SlackやMicrosoft Teamsのような企業向けチャットツールは、情報管理機能が充実しており、社内回覧の電子化に適しています。
ただし、メールやチャットツールを使う場合、情報が適切に管理されていることを確認し、プライバシーやセキュリティに配慮する必要があります。
また、情報の過多を防ぐため、情報の重要度や配信タイミングについても考慮することが求められます。
方法2.ワークフローシステムの導入
ワークフローシステムとは、事前に設定した回覧の順番に沿って承認や決裁を可能とするシステムです。
主な機能として、固定機能や閲覧・承認権限の設定機能が挙げられます。
固定機能とは、社内回覧の順序を設定することで電子化前と同じフローで回覧や承認を進められる機能です。
承認権限の設定機能は、閲覧・承認できる人を限定することです。文書を閲覧・承認できる人が限られていると、情報漏えいといったリスクが起こりにくく、セキュリティ対策としても機能します。
その他、回覧がどこまで進んでいるか可視化できたり、回覧が止まっていたらアラートを送ったりといった機能もあります。
ただし、システムによってどこまでカスタマイズできるかは異なります。カスタマイズ性を確かめないと、自社の業務にマッチしないこともあり得ます。
また、初期費用や月額料金が発生することが一般的で、無料で利用することは難しいです。
方法3.自社でクラウドシステムを構築する
社内回覧の電子化には、自社でのクラウドシステム構築も効果的です。
自社でシステムを構築するためには、サーバー設定やデータベース設計など専門的な知識をもつIT部門が必要ですが、具体的なニーズに応じたシステムの設計や厳しいセキュリティ要件へ対応できるなどの利点があります。
また、自社でシステムを構築・管理することにより、組織全体のITリテラシー向上やデジタルトランスフォーメーション推進にも繋がります。
ただし、コストとリソースが必要なため、組織のニーズとリソース、長期的なIT戦略とのバランスを考慮することが必要です。
方法4.専門のクラウドサービスを利用する
現代のデジタル化の波に乗って、数多くの専門的なクラウドサービスが社内回覧の電子化を支援しています。これらのサービスは、社内の情報共有を効率化し、組織全体のコミュニケーションを改善するための多くの機能を提供しています。
クラウドサービスを利用する最大の利点は、即座に始めることができる点です。自社でシステムをゼロから構築する必要がないため、時間とコストを大幅に節約できます。
また、これらのサービスは通常、使いやすいユーザーインターフェイスと強力な機能を提供し、ユーザーがすぐに使いこなせるように設計されています。
さらに、多くのクラウドサービスは、セキュリティ対策を徹底的に行っています。情報の暗号化、アクセス権限の設定、データバックアップなど、企業が必要とする多くのセキュリティ機能が提供されています。
そのため、情報セキュリティの専門知識がなくても、安全に情報共有を行うことが可能です。
一方で、クラウドサービスを利用する際は、サービス提供者の信頼性を確認し、サービスの契約内容やプライバシーポリシーを十分に理解することが重要です。
また、新しいシステムを使いこなせるように、適切なトレーニングとサポートを提供することも必要となります。
方法5.無料で電子化する方法
メールやチャットツールは無料で回覧を電子化する手段のひとつです。
他にも、Googleドライブといったクラウドと、GoogleドキュメントやGoogleスプレッドシートなどを活用する方法もあります。文書をクラウド上で共有し、コメント機能で閲覧や承認を管理できます。
無料で電子化することは、すぐに移行しやすいこと、普段使用しているツールを活用するため利用のハードルが低い点がメリットです。
ただし、リアルタイムでの進捗が難しいこと、複数人が同時に利用すると管理が煩雑になりやすい点はデメリットと言えます。加えて、セキュリティ対策への注意も求められます。
社内回覧を電子化する2つのデメリット
社内回覧の電子化は企業に多くのメリットをもたらします。しかし、電子化する方法によってはコストがかかること、システムに慣れてもらうためのサポートが必要な点は考慮しなければなりません。
コストがかかる
ワークフローシステムや専門のサービスを導入する場合、初期費用や月額料金、アップデート実施時の追加費用といったコストが発生します。
コストをかけても電子回覧で業務効率化やリモートワークの定着といった大きなリターンを見込めるのか、導入する場合予算をいくらに設定するのか検討することが求められます。
レクチャーが必要
新しいシステムを導入すると、従業員がツールを使いこなして改善効果が見られるまでに時間も労力もかかります。
そこで、実務で使用する前に使い方を身につけてもらうための研修を実施し、システムの使い方が分からず業務が滞るといったトラブルを避けるための配慮が必要です。また、回覧文書の漏えいなどを防ぐため、セキュリティ対策の研修も推奨されます。
さらに、実務で分からないことやトラブルが発生した際にすぐに対応できるサポート体制も求められます。
社内回覧を電子化する際のポイント
社内回覧の電子化で従業員の負担を軽減しながら業務効率化などの課題解決を実現するためには、業務フローの見直しが欠かせません。
ワークフローシステムなどシステムを活用して電子化する場合、文書ごとの業務フローの見える化と共有をした上で、操作方法の分かるマニュアルの用意も必要です。
書類ごとの回覧業務フローを見える化して共有する
回覧を電子化しても混乱を招かないよう、文書ごとの業務フローをあらかじめ明確にし、可視化した上で共有することが重要です。業務フローの見える化によって、誰がどのタイミングで閲覧し、承認すべきかが一目で分かり、効率的に回覧を進められます。
全従業員が回覧時にやるべき対応が分かることや、回覧漏れの起こりにくい体制で、従業員が文書の内容を把握した上で業務に取り組めます。共通認識に基づいて業務に着手できるということです。
また、フローの可視化で問題点や遅延が発生しやすい箇所が事前に特定され、改善のための対策を講じやすくなります。
マニュアルを制作する
新しいシステムを導入する際は、どの従業員もスムーズに使えるように、操作方法や注意点をまとめたマニュアルを制作することが重要です。マニュアルがあれば、ITに不慣れな従業員の抵抗を和らげつつ、システムに慣れるまで従業員間で生産性に差が生じることも起こりにくいでしょう。
マニュアルは、操作の手順を箇条書きにする、専門用語をわかりやすく言い換えるなど、誰もが内容をすぐに理解できる簡潔なものにすることを心がけましょう。分かりやすいマニュアルは、システムを使うのが初めての方でも円滑に使えるようになるのをサポートするはずです。
マニュアルを参照した従業員の声も参考に、適宜改訂することをおすすめします。実務で使いやすい・分かりやすいマニュアルを用意するためです。
業務が楽になるよう業務フローを改善する
回覧電子化の目的に業務効率化や生産性向上がありますが、準備不足や現場の意見を無視した導入は、かえって手間を増やす結果を招きかねません。
電子化で負担が増える事態を避けるためには、現場の従業員の意見を取り入れることが不可欠です。例えば、電子化による業務負担の増加がないか確認し、必要であればフローの見直しに取り組むなど、非効率な点を改善できる仕組みを構築しましょう。
現場の声を参考に改善策に取り組むことで、電子化をゴールと捉えることなく、業務フローの無駄をなくして従業員の負担を軽減しながら課題解決を期待できます。
まとめ
社内回覧の電子化は、今日のビジネス環境で求められる即時性と効率性を実現するための重要な手段となっています。
社内回覧の電子化は、企業がよりフレキシブルかつ効率的に業務を遂行するための基盤を提供するものです。したがって、電子化は現代のビジネスにおいて必須ともいえるでしょう。