ノウハウ 【2023年最新版】電子帳簿保存法対応のシステム選びのポイント
更新日:2024年10月17日
投稿日:2023年05月25日
【2023年最新版】電子帳簿保存法対応のシステム選びのポイント
電子帳簿保存法の改正に伴い、システム導入を検討中の方はいませんか?
2022年の電子帳簿法改正により、2023年末の猶予期間終了までに、ほぼ全ての事業者が電子契約書システム導入などの対応をしなければなりません。
そこで今回は、電子帳簿保存法に対応しているシステムの概要や、サービスの選び方、導入のメリット・デメリット、流れを詳しく解説します。また、改正電子帳簿保存法の基本的な知識も分かりやすく解説しています!
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そもそも電子帳簿保存法とは?
最初に、電子帳簿保存法の概要について紹介します。
法改正により2023年末までの対応が必要
電子帳簿保存法は、行政による国税額計算の効率化と、事業者の業務効率化を目的として1998年に施行され、2023年現在までに5回の改正を重ねています。
2022年の改正では、大幅な要件緩和と違反事業者への厳罰化が行われ、政府としては今後さらに書類の電子化を推進したいものと考えられます。
対象者に例外はなく、すべての事業者が電子帳簿保存法の対象となります。
電子帳簿保存法の対象となる書類
次に、電子帳簿保存法の対象となる書類の具体例を紹介します。
基本的には、①行政が国税関係の計算をするうえで必要な書類、②取引の詳細を明らかにする書類は電子帳簿保存法の対象書類と考えておきましょう。
①国税関係書類 | 棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書 など |
②国税関係帳簿 | 総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳 など |
電子帳簿等保存の対象書類
「電子帳簿保存」とは、会計ソフトなどを利用して電子データとして作成した帳簿類のことで、例えば仕訳帳や貸借対照表などが該当します。
帳簿類 | 仕訳帳 総勘定元帳 現金出納帳 買掛金元帳 固定資産台帳 など |
決算関係書類 | 貸借対照表 損益計算書 棚卸表 など |
取引関係書類 | 契約書 見積書 請求書 領収書 など |
取引情報 | 電子取引(インターネット取引、Eメール取引、クラウド取引など)を行った場合の取引情報 |
スキャナ保存の対象書類
スキャナ保存の対象となる書類は、自社または取引先等が紙で授受した契約書などです。
紙の書類をスキャナ保存するかどうかは事業者の任意に委ねられていますが、法定の要件に従って電子データ化することが可能です。
ただし、スキャナの性能やディスプレイのインチ数などハード面での準備も要件の一つとなっています。
また、使うシステムによって要件が異なり、保存時刻がわかり、記録した事項(日付、金額など)を確認できる(あるいは訂正又は削除ができない)システムを利用して保存したデータはタイムスタンプが不要であるなど自社に合うシステム選びもポイントとなります。
電子取引の対象書類
電子取引の対象となる書類は、自社または取引先等との間で交わされた契約書等であって、電子取引によって授受されたものです。
例えば契約者がEメールやクラウドサービスを介して授受された場合などがこれにあたります。
従来は電子取引の対象書類であっても紙に印刷して保存することができましたが、2021年の改正により、データで保存することが義務付けられました。
電子帳簿保存法に対応するための要件
電子データは改ざんが容易であるという性質をもつため、電子帳簿保存法では①真実性要件と②可視性要件という二つの要件が設けられています。
真実性要件
真実性要件とは、データの改ざん・削除を防ぐための要件です。
電子帳簿保存、スキャナ保存、電子取引それぞれの要件をまとめると、次のようになります。
真実性要件 | |
電子帳簿保存 |
|
スキャナ保存 |
|
電子取引 |
|
ただし、スキャナ保存については2023年度税制改正大綱において2024年以降は解像度、階調及び大きさに関する情報の保存は廃止になり表示することができればよいとなりました。
【参照:令和5年度税制改正の大綱 – 財務省】
可視性要件
可視性要件とは、税務調査時に滞りなく情報を提供できるために情報を表示し、他の記録との関連性を調べられるようにするための要件です。
可視性要件 | |
電子帳簿保存 |
|
スキャナ保存 |
|
電子取引 |
|
電子帳簿保存法の改正点
電子帳簿保存法の改正ポイントは下記です。
- 税務署長への事前届け出の省略
- 優良な電子帳簿に対する過少申告加算税の軽減
- 電子帳簿保存の要件緩和
- タイムスタンプ要件・検索要件等の緩和
- 電子取引の取引情報について紙での保存を禁止
- 違反時の罰則の強化
電子帳簿保存法対応システムとは?
電子帳簿保存法対応システムとは、電子帳簿保存法の要件を満たしたソフトウェアやツールのことです。
こうしたシステムを利用することで、単に電子帳簿保存法に適合した書類の作成・保存が可能になるだけではなく、契約書等に関する業務を効率化させることもできます。
電子帳簿保存法対応システムの機能
ここまで紹介してきたように、電子帳簿保存法の対象書類は多岐にわたるため、対応システムも様々なものがあります。
それぞれのサービスによって機能が異なるため、まずは自社のニーズを明確にし、どのような機能が必要なのかをしっかりと把握しておきましょう。
システムのタイプ | 主な機能 |
国税関係書類の作成・管理 |
|
請求書・領収書の作成・交付・管理 |
|
契約書の作成・締結・管理 |
電子帳簿保存法対応システムの選び方
以下からは、システムを選ぶ上で注意すべき3つのポイントを紹介します。
対応書類の範囲で選ぶ
まずは、自社のニーズに合った書類を扱えるサービスかを確認しましょう。
例えば「国税関係書類を管理したい」というニーズがある場合でも、より詳細にみると①全ての国税関係書類が扱える場合と、②一部の書類のみ扱える場合(請求書や領収書のみ)などがあるため、注意が必要です。
セキュリティ対策が十分なものを選ぶ
電子帳簿保存法の対象となる書類には、国税関係や取引先の情報など高度に機密性の高い情報が含まれています。
そのためシステムを選ぶ際には、アカウントロック機能やアクセス制限機能、IPアドレス制限機能など、複数のセキュリティ対策を備えているシステムを選ぶようにしましょう。
利用範囲とコスト
備わっている機能や利用者数、締結量によってソフトウェアごとに料金形態が異なります。利用想定数、範囲、目的、必要な機能の棚卸を行うと同時にどの程度コストがかけられるのか調べておきましょう。
利用する量や範囲によって従量課金のほうがコストパフォーマンスが良かったり、定額のほうがコストパフォーマンスが良かったりと様々です。
電子帳簿保存法対応システムを導入するメリット
ここでは、電子帳簿保存法対応システムを導入するメリットを解説します。
法令への対応
電子帳簿保存法対応システムを導入することで、電子帳簿保存法の要件に適切に対応することができ、企業の法令遵守や信頼性の向上につながります。
また、適切な対応ができない場合に科せられる罰則を回避することができます。
2021年の電子帳簿保存法改正は、2023年末までの猶予期間が設けられているものの、2024年1月1日以降も対応していない場合には、以下のような罰則を受ける可能性があります。
- 追徴課税
- 青色申告承認の取消し
- 100万円以下の罰金
なお、2023年度税制改正大綱では、2024年以降は以下の要件の全てを満たす場合に電子的に作成された取引関係書類を紙で保存することが例外的に認められるとされています。
- 要件① 保存要件に従って保存することができなかったことについて相当の理由があると所轄税務署長に認められること
- 要件② 税務調査時に要求されたデータのダウンロードの求めに応じること
- 要件③ 税務調査時に整然とした形式および明瞭な状態で出力された書面の提出または提出の求めに応じられること
【参照:令和5年度税制改正の大綱 – 財務省】
しかしあくまで例外的な取り扱いとなるため、法令を遵守してリスクを最小化するためには、遅くとも2023年末までの対応をおすすめします。
ペーパーレス化に伴うコスト削減
ペーパーレス化によるコスト削減も、電子帳簿保存法対応システム導入のメリットの一つです。
紙の消耗品やプリンターのコスト、保管スペースのコストなどが削減できるため、企業全体の経費削減に貢献します。
また、契約書を電子化することで紙締結でかかっていた印紙が必要なくなり電子締結をすればするほどコスト削減になります。
文書の紛失リスク低下
紙で発行すると、紙を紛失した場合探しだすのが難しく災害が起きた場合などデータが完全に喪失してしまう場合もあります。しかし、デジタル化された書類は、適切なバックアップを行うことで、検索ができ紛失や破損のリスクを最小限に抑えることができます。
電子帳簿保存法対応システムを導入することで、文書の紛失リスクが低下し、情報管理の安全性が向上します。
内部統制の強化
システム内で作成したり格納することで、改ざんや不正が行われていない証明ができるようになります。
アクセスできる人や書類をデータ上で制限できるシステムもありM&Aの書類、人事関係書類など特定の権限者のみに閲覧の権限を付与したい場合でもコントロール可能です。
業務効率化
これまで手作業で行っていた作業をシステムで自動生成、計算、通知ができることで業務効率化が可能です。
デジタル化することで台帳の作成、書庫の整理などの付属業務の負担を軽くすることができ同時にミスも軽減できます。
電子帳簿保存法対応システムを導入するデメリット
ここでは、電子帳簿保存法に対応したシステムを導入するデメリットについて解説します。
導入や運用にコストがかかる
電子帳簿保存法対応システムの導入や運用には、システムの購入費用やライセンス料、運用に関する人件費などの一定のコストがかかります。
しかし長期的に見れば、ペーパーレス化によるコスト削減や業務効率の向上が期待できるため、投資効果があると言えます。
システムにもリスクはある
電子帳簿保存法対応システムにもリスクが存在します。
例えば、システムがサーバーダウンやハッキングに遭うことで、情報の漏洩や営業活動への影響が考えられます。
これらのリスクを最小限に抑えるために、セキュリティ対策の強固なシステムを導入するようにしましょう。
社内フローの抜本的な見直しが必要
電子帳簿保存法対応システムを導入する際には、従来の紙ベースの業務フローを見直し、デジタル化に適した新しいフローに変更する必要があります。
これには、従業員の研修やチーム間のコミュニケーションが重要であり、一定の時間と労力が必要です。
しかし、適切な見直しを行うことで業務効率が向上し、企業全体としての利益が大きくなります。
▶契約書管理とは?|運用までのステップとクラウドサービス紹介
システム導入までの流れ
システム選定のポイント、メリットデメリットが分かったところで、次はシステム導入までにどのような流れで進めるのか、導入前に検討する要素はどのようなものがあるのか解説します。
1. 自社課題と現状を整理する
企業によって業務フローや関わる人数は異なります。まず、自社の現状の棚卸をしましょう。
整理するポイントは下記です。
- 選定するシステムに業務上関わる人の数
- 現状の業務フロー
- かかっているコスト
- 無駄、効率改善が必要と現場、上層部が感じているポイント
システム比較、検討の際には現状フローとの相性はどうか、コスト、効率化のメリットを達成できるかの検討をしていくことになります。
2.解決法がシステム導入か検討する
1で出た課題が現状のフローの多少の改善、ルール作りで解決するものかまず考えます。後々の稟議を通す際に、まずコストをかけない方法を検討したか否かの指摘が入る場合もあり初期段階でまず検討しておくとよいでしょう。
合わせて電子帳簿保存法への自社での対応方針を決めておきましょう。
ルールを定めても浸透が難しいといった理由によりシステムの導入となる場合もあります。自社の過去のシステム導入状況と背景を見ておくと参考になるものがあるかもしれません。
3.サービスを比較する 情報を集める
システム導入が良さそうとなったら、製品を比較しましょう。機能によってある程度絞れるはずです。
カオスマップ等業界地図で目当ての企業を探し問い合わせを行う方も多いです。
4.トライアルを行う
サービスによっては無料トライアルを行っているところもあります。無料アカウントが発行できたり、月に係るコストが微小である場合はすぐ採用を行っても良いでしょう。
しかし、関係部署が複数に渡る場合やかかるコストがある程度ある場合は、使用感を試してみて導入後のイメージを深めておくほうが再選定のリスクを低くするうえでは安心です。
5.導入
トライアル後には振り返りを行い、導入するかどうか検討します。
導入するとなったら 導入範囲を検討し、新しい業務フローを作成、社内研修等準備を進めます。
導入範囲が全社か部署単位かで導入負荷は異なりますので、信頼できるカスタマーサポートが準備されているかがカギを握ります。
契約書を電子化すべき理由と具体的な電子化方法
電子帳簿保存法に対応するシステムとしては、国税関係書類に関するシステムの導入が注目されがちです。
しかし法令に適合し、今後のビジネス環境を考える上では、契約書の電子化も推進すべきです。
紙の契約書だとスキャンの手間がかかる
紙ベースの契約書を適法に電子化するためには、契約書をスキャンして画像化するだけではなく、タイムスタンプの付与・検索可能な条件の付与などの手間がかかります。
そのため、もし取引先等がペーパーレス化を推進している事業者の場合には、紙の契約書を交付することによって相手方に不要な手間をとらせてしまうこととなります。
さまざまな観点からペーパーレス化が進んでいる今日、よりスムーズで良好なビジネス環境を構築するために、率先して電子契約書を導入するようにしましょう。
契約書の電子化に必要なこと
契約書の電子化には、いくつかの要件があります。上述の通り、契約書の真実性や可視性といった法定の要件を満たさなければなりません。
また、適切なセキュリティ対策を講じて、情報漏洩や不正アクセスを防ぐことも重要です。
さらに、関係者が容易にアクセスできるよう、適切なファイル共有や保管の仕組みを整備することが求められます。
電子契約システムを導入しよう
電子契約システムを導入することで、契約書の電子化を効率的に進めることができます。
電子契約システムは、タイムスタンプ機能やセキュリティ対策、ファイル共有や保管の仕組みなどが一体化されたサービスであり、契約書の作成から管理までをスムーズに行うことが可能です。
また、電子契約システムを利用することで、契約手続きの簡素化や迅速化が期待でき、企業の業務効率向上につながります。
まとめ
今回は、電子帳簿保存法の概要や、対応するシステムの選び方について解説しました。
自力で法令に対応するのは大変ですが、対応システムを利用することで法令を遵守して罰則リスクを最小化し、さらに業務の効率化を図ることも可能です。
また、帳簿類の作成・管理だけではなく、契約書も電子化することによって、さらなる業務効率化とセキュリティ対策の強化を図ることができます。
今回の法令改正を機に、事業全体のペーパーレス化を推進してみてはいかがでしょうか。