ノウハウ 電子帳簿保存法改正の猶予期間は2023年12月まで。宥恕期間後のリスクは?
更新日:2024年10月31日
投稿日:2023年05月25日
電子帳簿保存法改正の猶予期間は2023年12月まで。宥恕期間後のリスクは?
「電子帳簿保存法の施行はいつ?延期されたって本当?」
「いつまでに電子帳簿に対応したらいいの?」
電子帳簿保存法について調べている方で、このようにお悩みの方はいませんか?
実は電子帳簿保存法はすでに施行されており、2023年12月までが完全移行までの猶予期間中となっています。とはいえ、いつまでにどのような対応をすればいいのか、まだご存知でない方も多いと思います。
そこで今回は、電子帳簿保存法の概要や、今後とらなければならない対応について、分かりやすく解説しています。
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電子帳簿保存法でいう「猶予措置」「宥恕期間」とは?
電子帳簿保存法で言う「猶予措置」とは、改正電子帳簿保存法に対応する体制を作るまでの準備期間で施行から2年間、2024年1月1日まで定められたものです。
「宥恕(ゆうじょ)」とは、法律用語で寛大な心で罪を許すことという意味で使われます。「宥恕期間」も「猶予期間」と同じような意味で使われます。
猶予期間が設けられた背景、いつまで?
電子帳簿保存法の改正では、電子データとして受け取った取引情報は電子データのまま保存しておくことが新しく定められました。
取引データ保存への対応が間に合いそうにない事業者の事情を鑑み、2023年12月31日(令和5年中)までは電子データを書面に出力し保存することが認められています。
猶予措置が設けられたのはいつ?
2021年(令和3年度)の税制改正大綱から電子取引のデータ保存方法について紙で出力し保存することができなくなりました。
しかし、次の年2022年(令和4年度)の税制改正大綱で猶予措置として2年間設けることが定められることとなりました。
令和5年度の税制改正の変更点。猶予期間が恒久化?
令和5年度税制大綱、猶予期間に変更が加えられました。ポイントは2つです。
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新たな猶予措置ができ、さらに恒久化されたと安心しがちですが、Aの「保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署⻑が相当の理由があると認める場合」がどのケースで該当するものかはっきり記してあるわけではないため、認められなかった場合に罰則を受けるリスクは低くないものといえます。
改正電子帳簿保存法に対応できるよう2023年末までに準備をしておくほうが賢明でしょう。
電子帳簿保存法の改正・施行は延期された?
そもそもの電子帳簿保存法について概要を解説します。
電子帳簿保存法はすでに改正・施行済
電子帳簿保存法(正式名称「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」)は、1998年に施行され、これまでに6回の改正が重ねられています。
1998年7月 | 施行 |
2005年改正 | スキャナ保存制度(4条3項)の追加 |
2015年改正 | スキャナ保存制度の要件緩和 契約書・領収書の金額上限の廃止 |
2016年改正 | スキャナ以外(携帯電話やデジタルカメラ)での撮影を許可 |
2019年改正 | 過去分の重要書類も税務署に届出をすればスキャナ保存可能 |
2020年改正 | タイムスタンプ以外の利用を許可 |
2021年改正 | 大幅な要件緩和(後述) |
猶予期間は2023年12月末まで
2021年改正への対応が猶予されているのは、2023年末までです。
後述するように、2024年1月1日以降に電子帳簿保存法への対応が済んでいない場合には、追徴課税や罰金、青色申告申請取消しといった重大なペナルティを受けることとなります。
猶予措置を受けるための届出は不要
2023年末までの猶予措置を受けるために、特段の届出は必要ありません。
従来は国税関係書類などを電子的に保存するためには税務署への申請が必要でしたが、2021年改正によりこの要件は撤廃されました。
よって、今後猶予措置を受ける場合も、電子帳簿保存法に従って書類を電子的に保存する場合も、税務署への届出は不要です。
【2023年最新版】そもそも電子帳簿保存法とは?対象や要件は?
ここまでは、電子帳簿保存法がすでに施行・改正されていることや、2021年改正の猶予期間が2023年末までであることを紹介しました。
以下からは、そもそも電子帳簿保存法とは何で、どのような事業者や書類が対象となるのかについて解説します。
ほぼすべての事業者が対象となる
電子帳簿保存法では、法人化の有無や事業内容などで対象事業者を限定していないため、全ての事業者が法律の対象となります。
2021年改正では、電子取引の保存が義務化されたため、実質的にみてすべての事業者(個人事業主を含む)が電子帳簿保存法の対象事業者となったといえます。
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電子帳簿保存法の改正点
改正の主なポイントは下の5つです。
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電子帳簿等保存、スキャナ保存、電子取引と方法別に必要な条件が緩和、新設されました。
電子帳簿保存法の対象書類
次に、どのような書類が電子帳簿保存法の対象となるのか、具体例を挙げて紹介します。
①電子帳簿等保存の対象書類
電子帳簿保存の対象となるのは、国税関係書類などです。
「電子帳簿」とは会計ソフト等で作成した帳簿類や決算関係書類などを、そのままデータとして保存したものをいいます。
対象となる書類の範囲は非常に広く、具体的には以下のような書類が挙げられます。
基本的には、「税金に影響を及ぼす書類」や「電子的にやり取りされた、取引に関する書類」はすべて、電子帳簿保存の対象となると考えておきましょう。
帳簿類 | 仕訳帳 総勘定元帳 現金出納帳 買掛金元帳 固定資産台帳 など |
決算関係書類 | 貸借対照表 損益計算書 棚卸表 など |
取引関係書類 | 契約書 見積書 請求書 領収書 など |
取引情報 | 電子取引(インターネット取引、Eメール取引、クラウド取引など)を行った場合の取引情報 |
②スキャナ保存の対象書類
スキャナ保存の対象となる書類は、取引先から紙で受領した取引関係書類です。具体的には、契約書や見積書、請求書や領収書などがこれにあたります。
これらの書類は、スキャナーなどで画像化し、タイムスタンプ等で改ざん防止措置を講じたのち、電子的に保存しておく必要があります。
③電子取引の対象書類
電子取引とは、取引先等から取引関係書類(契約書など)がEメールなどで電子的に送られてきた場合や、同様に自社が送付した場合のことをいいます。
「電子取引」といっても、eコマースのような取引を指すのではなく、「電子(的に書類をやり取りした)取引」である点に注意してください。
2021年の改正により、全ての事業者が電子取引書類をデータとして保存することが義務付けられ、紙に印刷して保存することは認められなくなりました。
電子帳簿保存法の要件
ここまで紹介してきたように、電子帳簿保存法に対応するためには、国税関係書類・紙の取引書類・電子取引書類をデータとして保存する必要があります。
とはいえ、ただ単にデータとして保存すればいいわけではありません。
電子データは紙媒体以上に改ざんや複製が容易であるため、これらを防止するため、電子帳簿保存法で認められた方法によって保存しなければなりません。
具体的な方法は書類のタイプによって異なりますが、共通しているのは①改ざん防止のための「真実性要件」と②税務調査対応のための「可視性要件」です。
以下では帳簿の電子データを保存する場合の要件を紹介しますが、スキャナ保存をする場合・書類の電子データを保存する場合には、それぞれ異なる要件があります。
要件①:真実性要件
帳簿に関連するシステムでは、訂正や削除が行われた場合にその事実と内容を確認できるようにし、通常の期間を経過した後に入力されたデータも確認できるようにすることが求められます。
また、帳簿に関連する電子記録と他の関連帳簿の間で、相互に関連性を確認できるようにすることが必要です(※2023年度税制改正大綱ではスキャナ保存制度について「相互関連性要件について、国税関係書類に関連する国税関係帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認することができるようにしておくこととされる書類を、契約書・領収書等の重要書類に限定する。」とされています)。
参照:令和5年度税制改正の大綱 – 財務省
さらに、帳簿に関連する電子記録の保存と同時に、システム関連書類(システム概要書、システム仕様書、操作説明書、事務処理マニュアル等)も用意しておくことが求められます。
要件②:可視性要件
帳簿に関する電子記録の保存場所には、電子計算機、プログラム、ディスプレイ、プリンタ、および操作説明書を用意しておき、電子記録を整然とした形式で明瞭な状態で速やかに出力できるようにすることが必要です。
また、帳簿に関する電子記録に対して、以下の検索機能を確保することが求められます。
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なお、スキャナ保存において、税務職員による質問検査権に基づくデータのダウンロードの要請に応じることができるようにしている場合には、上記2.及び3.の機能の確保は不要となります。また、電子取引保存において、前記同様、電子取引保存において税務職員による質問検査権に基づくデータのダウンロードの要請に応じることができるようにしている場合には、基準期間(個人の場合は前々年、法人の場合には前々事業年度)の売上が1000万円以下(※2023年度税制改正大綱では5000万円以下に変更予定)である場合には検索要件がすべて不要です。
参照:令和5年度税制改正の大綱 – 財務省
参照:電子帳簿保存法一問一答 – 国税庁
電子帳簿保存法改正の目的
電子帳簿保存法が改正された背景には、高度にデジタル化、ペーパーレス化が進む現代社会において、日本経団連をはじめ各所から帳簿書類を紙で保存することを義務づける方針を転換し、電子的に保存することを認めるよう以前より強い要望があがっていました。
この要望を受けて政府は、適正な課税を確保しながら帳簿保存の負担軽減を図るため、国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存制度等の創設等が制度改革が進みました。
2024年以降に電子帳簿保存対応を導入しないとどうなる?
ここまで紹介してきたように、ほとんど全ての事業者が2023年末までに電子帳簿保存法に対応する必要があります。
実は電子帳簿保存法やその関係法令には罰則が設けられているため、2024年以降も対応していない場合には、以下のような罰則を受けるリスクが生じてしまいます。
追徴課税を受ける
電子帳簿保存法に違反すると、追徴課税(本来納税すべき金額との差額を課税)の対象となります。
また青色申告承認が取り消されることで、「本来納税すべき金額」は税務署による推計で所得税や法人税の金額が定められる(これを「推計課税」といいます)ため、税務署の判断次第では多くの税金を支払うことになるかもしれません。
また、仮にデータの隠ぺいや改ざんなどの悪質な行為をした場合には、申告漏れした額からさらに10%加算した追徴重加算税を課される可能性もあります。
青色申告承認が取り消される
また、電子帳簿保存法に違反した事業者に対しては、青色申告承認が取り消される可能性があります。
青色申告承認が取り消されると、当該事業者は白色申告をするほかなくなるため、特別控除を受けられなくなる・欠損金の繰り越しができなくなるなどのデメリットが生じます。
ただし、国税庁は「電子帳簿保存法に違反しても、直ちに青色申告承認が取消されるわけではない」と発表しています。
しかし、電子帳簿保存法に違反するリスクは青色申告承認取消だけではありませんし、やはり早急に法令への対応をしておくべきといえるでしょう。
参照:電子帳簿保存法一問一答 – 国税庁
100万円以下の罰金を課される
電子帳簿保存法への違反により、会社法によって100万円以下の過料を課される可能性もあります。
このように、電子帳簿保存法への違反行為には厳しい罰則が設けられているため、間違っても違反行為をしないように対応が必要です。
2年の猶予期間で対応するために必要なこと
最後に、電子帳簿保存法に対応するための、具体的な方法を解説します。
電子契約・契約書管理などのシステム導入
電子帳簿保存法に対応するためには、電子契約や電子帳簿の管理ができるシステムを導入することが重要です。
このようなシステムは、契約書や書類を電子化し、管理や検索が容易になるため、業務効率化にもつながります。
また、セキュリティ対策が整ったシステムを選ぶことで、情報漏えいリスクを低減できます。
周辺機器の整備
システム導入だけでなく、社内の体制も整備する必要があります。
スキャナーやプリンターなど要件に適したハードウェアを適切に配置し、書類の電子化に対応できる環境を整えましょう。
また、電子帳簿保存法に関する担当者を設けることで、法令遵守や問題発生時の対応がスムーズに行えます。
従業員や取引先への周知徹底を行う
改正に対応するための新しい手順、ルールを従業員に周知を行う必要があります。
法令やシステム操作、セキュリティに関する知識を身につけることで、電子帳簿保存法に対応できる人材を育成しましょう。
勉強会などを実施すれば、一度で多くの人へ向けて周知することができます。定期的な研修やフォローアップを行うことで、法令改正やシステムアップデートにも柔軟に対応できる体制を築くことができます。
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ContractS CLMは電子帳簿保存法のシステム要件に対応
今回は、電子帳簿保存法の概要や、具体的な内容、対応策について解説しました。
電子帳簿保存法の施行・改正は延期されておらず、2023年末までにほぼ全ての事業者が対応しなければなりません。仮に対応を怠ると、追徴課税・青色申告承認の取り消し、罰金などのリスクが生じてしまいます。
具体的な法令対応方法としては、電子契約のシステムを導入し、社内の設備を整えるとともに、人材の育成・配置が必要となります。
契約書を適法に作成・管理できるシステムを導入することで、法令に適応できることはもちろんのこと、業務の効率化を図ることも可能です。