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ノウハウ 社内規定(社内規程)とは?改定のポイントや注意点を解説

更新日:2024年10月17日

投稿日:2022年01月7日

社内規定(社内規程)とは?改定のポイントや注意点を解説

社内規定(社内規程)とは?改定のポイントや注意点を解説

同一労働同一賃金を定めた法律が、2020年4月から施行されました。これにより、多くの企業で社内規定や就業規則の改定が求められています。


本記事では、「社内規定」の内容や「就業規則」との違い、社内規定を改定する手順に関して、疑問に感じやすい点を解説します。

 

 

社内規定(社内規程)とは

社内規定は、会社が独自に定めたさまざまな社内ルールのことです。会社の裁量で決められるものから、法律上作成しなければならないものまで色々なものがあります。

 

たとえば社内規定には、「業務マニュアル」や「賃金規定」、「人事考課規定」などの規定が含まれます。しかし、なぜこのような社内規定が必要になるのでしょうか。
ここからは社内規定の「目的」、「内容」、「社内規定と就業規則の違い」について解説します。

社内規定の目的

社内規定を作成する目的は主に「業務の標準化」、「リスク回避」、「社内秩序の安定」の3点です。それぞれについて、以下で詳細を確認していきましょう。

1)業務の標準化
日々の業務内容についてのルールが定まっていないと、従業員が個々のやり方で仕事をしてしまう可能性があります。そうなると足並みが揃わなくなることにより、業務効率も悪くなってしまうのです。
社内規定で前もって業務手順を定めておくと、業務の標準化が行なえるようになり、従業員全体の業務効率がよくなります。

2)リスク回避
社内規定は、リスクマネジメントの観点からも大切です。たとえば「パワーハラスメント」や「セクシュアルハラスメント」といったようなハラスメント防止規定です。
それぞれの規定や禁止事項をあらかじめ定めておくと、もし従業員が社内規定に従わなかった場合について、法的規制に触れない範囲のペナルティを会社側が設定できます。

3)社内秩序の安定
社内規定があると、社内秩序が安定化しやすくなります。会社の信用力を大きく落とすような行為については、社内規定で定めておくとよいでしょう。
たとえば「飲酒運転の禁止」、「秘密情報に関する守秘義務」、「防犯上・情報セキュリティ上の所持品検査」、「企業内での政治活動や宗教活動の禁止」などです。

社内規定を作成するときには、これら3つの目的を達成できるような内容にするよう心がけるとよいでしょう。



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社内規定の内容は?

社内規定には、会社の業種・業態・規模や経営者の考え方などによってさまざまな内容が含まれています。ここでは、一般的な社内規定に含まれる代表的な内容についてそれぞれ紹介します。

<基本経営>
会社運営の基本的な事項に関する規定です。たとえば以下のような規定がこれにあてはまります。

・定款
社内規定の中でも大変重要な規定で、含めるべき内容が法律で定められています。法人としての権利を得るために必須の書類で、社内規定の根幹を成すものなので、会社にとっては憲法のような存在と言えるでしょう。

・企業理念
会社経営における基本的な考え方をあらわしたものです。目的や使命を明らかにして、どのような会社を目指していくのかが示されています。企業理念を明文化すると、経営者がどのような経営を行いたいと考えているのか、経営に対する信念を従業員が共有しやすくなります。

・取締役会規定、取締役規定、役員規定
取締役会における決議事項や報告事項、取締役会を運営するためのルールなどが含まれます。また取締役や役員の職務権限と義務を明文化しています。

<組織権限>
組織における業務や権限に関する規定です。たとえば以下のような規定がこれにあてはまります。

・組織規定(組織図)
組織を管理運営する基本的な規定です。指揮命令系統を明らかにして、それぞれの業務範囲や責任を明確化するものです。組織図とあわせて組織の目的や役割分担などを明文化するとよいでしょう。業務内容に重複や漏れがないように作成しましょう。

・職務権限規定
会社の主な職位(部長、課長など)についてその権限を定めたものです。職位によってなすべき職務や責任、権限の範囲を記載することにより、職務を積極的に遂行することを目的としています。
この規定を作成するときには「命令」、「委任」、「代行」などの権限について、明確に定義づけておきましょう。

・稟議規定
稟議とは、自分の権限を越える事項について、決定権のある人に承認してもらうことをいいます。これを規定しておくと、職務権限の行使を統制できるため、迅速かつ組織的な経営活動が行いやすくなります。
緊急時の対応として口頭承認の手順も設定できます。しかし口頭での承認は例外的な状況に留めるべきです。

<人事労務>
就業規則や給与といった従業員に関する規定です。たとえば以下のような規定がこれにあてはまります。

・就業規則
就業規則は、労働時間関連、休日、休暇、賃金などのルールを幅広く定めるものです。労働基準法89条により、従業員が常時10名以上の会社に対しては就業規則作成の義務が課されています。

ちなみに、直接雇用ではない業務委託契約や請負契約で働く人の場合は、企業における労働者とはみなされません。そのため就業規則の適用範囲の対象外となります。

・育児・介護休業規定
労働基準法により、就業規則には必ず規定しなければならない事項として定められています。
育児・介護休業規定を別に作成せずに、就業規則にのみ記載していても法律上は問題ありません。しかし、実際に育児休業者や介護休業者が出たときに、すぐに適切な対応が行なえるよう、就業規則とは別に作成しておくのが望ましいでしょう。

<総務関連>
総務関連の規定です。たとえば以下のような規定がこれにあてはまります。

・文書取扱規定
社内文書の作成方法や保存方法、保存期間などを規定します。法律上で保管が義務づけられているような文書に加えて、議事録や覚え書きなどの社内文書に関する取り扱いも含まれます。

・人事考課規定
従業員の能力や業務における成果をどのように査定するかの基準を定めます。給与・賞与・昇格・異動などは、その基準に基づいて決定されます。

<業務管理>
具体的な業務内容やその管理に関する規定です。たとえば以下のような規定がこれにあてはまります。

・経理規定
経理業務に関する基本的な考え方や処理の方法について定めたものです。資金管理、原価計算、予算管理、決済業務など多岐にわたります。経理規定内に販売管理、在庫管理、固定資産管理などの業務に関する内容も記載できますが、販売管理規定などとして別規定で詳細を記載する方法もあります。

<その他>
新しい法案などが施行されたことにより、社内規定に記載した方がよい項目です。たとえば以下のような規定がこれにあてはまります。

・ハラスメント防止規定
就業規則や服務規律等を定めた文書において、パワーハラスメントを行った者については懲戒規定にもとづいて厳正に対処する旨を定めましょう。このとき、パワーハラスメントの定義や行為の禁止、懲戒、相談、苦情への対応など、できるだけ細かく定めておくと、実際に問題が起こったときにスムーズな対応が行いやすくなります。
さらに詳細な規定を定めたい場合には、就業規則に委任の根拠規定を定めたうえで、これにもとづいた別規定を定める方法もあります。すでに自社規定にセクシャルハラスメントなどの内容を定めているのであれば、それを踏まえてパワーハラスメントについての規定を盛り込むのもよいでしょう。

・ソーシャルメディア利用規定
インターネットの普及に伴って、さまざまなソーシャルメディア(SNS)が作られ、現在では個人で誰でも気軽に情報を発信できるようになりました。
ソーシャルメディアの利用規定について、法律上の作成は義務づけられていません。しかし、この規定を作成しておくことにより、従業員の何気ない投稿による会社の信用失墜などのダメージを防ぎやすくなります。
SNSで問題となるような信用失墜、差別、誹謗中傷、プライバシーの侵害、名誉毀損、社内機密の漏洩などについて、具体的な禁止事項を定めましょう。もしSNSトラブルが起こったときに従業員を処分したいのであれば、懲戒処分の対象となる具体的な項目を記載しておきましょう。

このように、社内規定には多種多様な項目が含まれています。実際にどのような規則を定めるのかについては、会社ごとに事業目的が異なるため一概にはいえません。
今回紹介した内容をもとにして、業務形態に合わせた社内規定を作成しましょう。

社内規定と就業規則の違い

社内規定と就業規則は、どちらも社内ルールです。業務に直接関係する決まりが多いため、似たようなものだと思われがちですが、それぞれ以下のような大きな違いがあります。

・労使間の合意について
労使とは労働者と使用者のことです。社内規定は、会社が独自に定めたルールのため、労使間で合意がなくても機能します。
しかし就業規則は、労働基準法89条により、従業員が常時10名以上の会社に対して作成の義務が課されています。労働時間関連、休日、休暇、賃金などのルールを幅広く定めるものであり、契約にも関係するため、就業規則においては労使間の合意が必要です。

・届け出義務について
社内規定は、原則としてどこかに届け出る義務はありません。ただし、就業規則に関連・付随するような賃金規定・育児介護休業規定などは労働基準監督署への届出義務の対象となります。
就業規則は、労働基準監督署への届出義務があります。

・必要記載事項について
社内規定は、会社が独自に定めたものです。そのため、必ず記載すべき事項は特に定められていません。
就業規則は、記載しなければならない事項が法律で具体的に定められています。


<就業規則の記載事項>
就業規則にどのような内容を記載しなければならないのでしょうか。労働基準法第89条で「絶対的必要記載事項」と「相対的必要記載事項」が定められています。

・絶対的必要記載事項
法律上、就業規則を作成する際には必ず記載しなければならない内容です。始業・終業時刻、休憩時間、休日・休暇、賃金計算や支払方法、退職や解雇に関することが含まれます。

・相対的必要記載事項
法律上、事業場で定めをする場合には記載すべき事項を指します。主な記載事項は、退職手当、賞与や最低賃金、安全衛生、災害補償、表彰や制裁などです。

就業規則は、従業員の給与や労働時間などの労働条件や、遵守すべきルールなどを定めた規定です。そのため、前述したように就業規則は社内規定に含まれます。ただし、就業規則に関しては法的な作成が義務づけられており、届出なども必要なことから、別々にして作成される場合もあります。

社内規定の作り方 改定するときの流れ

実際に、社内規定を作成・改定するときには、どのような流れで行えばよいのでしょうか。
近年、ペーパーレス化やテレワークの推進、働き方改革といった社会情勢の変化や、関連法律の改正も多くあります。そのため、企業側もさまざまな制度を見直さなければなりません。代表的なものが「文書管理規定」の改定です。



「文書管理規定」とは、文書管理を適切に行うために定められた社内の統一ルールです。文書管理規定のポイントを知ることにより、各種の自社規定に応用できます。
社内規定を改定するときには、まずはこの「文書管理規定」の流れを参考にして行うとよいでしょう。具体的な流れについては、以下で詳しく解説します。

項目を策定する・見直す

文書管理規定の改定における主な作業は、以下の項目の策定です。策定した後は、社内外の環境の変化に応じて適時見直すとよいでしょう。

・適用範囲に関する項目
規定がどのぐらいの範囲にまで及ぶのかを決定します。たとえば紙文書だけなのか電子記録も含むのかといった具体的な範囲を設定しましょう。

・保管、参照、編集に関する項目
保管期限や保管場所、ファイル命名のルール、複製物の取り扱いについて記載します。

・廃棄に関する項目
不要となったものをどのように廃棄するのか、具体的な方法や廃棄手順などを決めましょう。
紙文書と電子文書では、特に大きく異なる内容になるはずです。文書形態に応じた規定を策定する必要があります。

・罰則や改廃に関する項目
もしも規定を破ったときには、どのような対処や罰則が必要となるのか、規定の改廃方法に関するルールなどを明確に決めましょう。

改定案の作成

社内規定の大きな目的は、業務を円滑に遂行することです。
そのため、現在の社内規定では業務が円滑に遂行できないときには、社内規定を改正しなければなりません。社内規定を改正するためには、まずは改正案を作成します。

改正案を作成するためには、以下のような手順で行うとよいでしょう。

1)まずは現在の社内規定において、何が問題となっているのかという課題を抽出して解決策を検討します。解決策についてはできるだけ具体的に示しましょう。解決策を検討する際には、他社の規定や各種ガイドライン、書籍などを参考にします。

調査しても解決しないときや、法律上の不明点があるときには、弁護士などの専門家に相談するのも一つの方法です。

2)社内規定に関わる部署に改定案を提示して内容を調整してもらいましょう。

3)取締役会に改正案を提出して承認をうけます。

改定案の運用が決まったときには、作成時に気がつかなかったような問題に直面することがあります。その場合には、問題が大きくならないうちにできる限り速やかに改定案を見直しましょう。

従業員へ改定を通知

社内規定を改正した後は、必ず従業員へ改定した旨を通知します。これを怠ってしまうと、従業員が社内規定の存在を認識していない、または内容をよく知らない、といった事態になりかねません。時間をかけて作成した規定であっても、うまく機能しなくなってしまいます。
個人情報保護やセキュリティポリシーなどと絡めて、社内規定を守る重要性について教育することも必要です。

社内規定を改定するときに知っておきたいポイント・注意点

ここでは、社内規定を改定するときに特に大切なポイントを押さえておきましょう。

従業員に対してヒアリング

社内規定のうち、就業規則は労働基準法で定められている項目です。変更内容によっては、賃金水準の引き下げや休暇の削減といった労働者にとって不利な内容になってしまう可能性も考えられます。

労働基準法第90条第1項によると、以下のように定められています。

 

「使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。」
(引用:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049


ここで注意したいポイントは、「意見を聴かなければならない」という記載です。この法律においては従業員に対してヒアリングをすると定められています。
しかし、労働者側との話し合いや同意に関しては義務づけられてはいないのです。そのため、もし労働者側から強い反対意見が出たとしても、使用者側はこの意見を無視して改定を行なえます。



また労働基準法第90条第2項によると、以下のように定められています。

「使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。」
(引用:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049



手続き上は、反対や賛成に関わらずどのような意見であっても、労働者の意見を意見書として取り扱えます。意見書を添付してから、変更後の就業規則、就業規則変更届を所轄労働基準監督署に提出することにより、就業規則の変更手続きを済ませることができるのです。

社内規定を定期的に精査する

社内規定は、定期的に精査して改定を行うか判断すべきです。なぜなら、社内外の環境変化により、社内規定を設定しなければならない場面もあるためです。

たとえば、社内規定の作成時に参考とした法律が改定された場合には、改定後の法律を遵守した社内規定に設定すべきといえます。社内規定に関わる法律には、会社法、労働基準法、個人情報保護法などがあります。社内規定は各種法令に反しないように作成しなければなりません。もし法令に違反した場合には、当該規定が無効となるだけではなく、会社が行政処分を受けるおそれもあります。

また近年では、テレワークや在宅勤務の急増などにより、働く環境にも大きな変化が起こっています。労働環境に変化が起こったときには、社内規定の中でも就業規則の改定が必要となります。
正社員の場合には、規定が改定される度に労働契約を再度終結することは手続きが煩雑なため通常は行われません。このようなときには、就業規則(及び付随する諸規定)の変更によって、ルールの変更を労働者に適用しています。

およそ1年に1度の頻度で定期的に社内規定を精査し、必要が認められた場合は改定を行うのが望ましいでしょう。会社の方針や変更する度合いに応じて、新しく別個の規定(付随規定)を作成するか、既存の規定を変更するかを選びます。

社員がいつでも確認できる場所に保管

すべての社内規定は、従業員が最新版を確認できるように管理しましょう。
社内規定で文書の保管場所も定めておくと、文書の保管場所が散在せず、従業員が文書を探す手間も減ります。また社内規定の保存先は、常時確認できる場所を選ぶべきです。

具体的な方法としては、たとえば「社内規定集を作成して各職場に設置する」、「社内システムの目立つ場所に掲載しておく」などの方法があります。紙媒体と電子媒体のどちらでもわかりやすいような場所に保管しておくとよいでしょう。社員が社内規定の内容に通じることができるように、社内規定が活用しやすい環境を整えてください。

まとめ

同一労働同一賃金をはじめとする法律の施行や改正により、社内規則や就業規則の改定が求められています。社内規定は、業務標準化やリスク回避、社内秩序の安定といった目的のために作成されるものです。
社内規定の中には就業規則のように、法律上作成が義務化されているものもあるため注意が必要です。就業規則は法的に含めるべき内容が決められており、届出なども必要なことから、就業規則とは別に分けて作成される場合もあります。
社内規定の作成・改定時には、今回紹介したような流れを参考に行ってみてはいかがでしょうか。



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