契約書作成・電子契約締結 ContractS コントラクツ

契約業務改善 ガイドをダウンロード

契約業務改善ガイドダウンロード

ノウハウ インボイス制度とは?2023年10月1日導入に備え企業がいますべきこと

更新日:2024年10月17日

投稿日:2021年12月23日

インボイス制度とは?2023年10月1日導入に備え企業がいますべきこと

インボイス制度とは?2023年10月1日導入に備え企業がいますべきこと

インボイス制度が開始予定であることは知っているが、具体的な中身や自社への影響については把握できていないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。


本記事では、インボイス制度の概要や企業が対応すべきこと、また実務にも大きく関わる「適格請求書」に記載しなければならない内容などについて解説していきます。

 

 

そもそもインボイスとは?

英語で「invoice」と記すインボイスは、直訳すると「送り状」です。元来、貿易における通関上の書類を指す意味で広く使われていました。海外へ物品を送るときに明細や請求書、納品書を兼ね備えているもので、貿易においては非常に重要な書類です。

 

一方、ここで示すインボイスは「適格請求書」で、売り手が買い手に対して正確な適用税率や消費税などを伝えるための文書です。今後開始されるインボイス制度では非常に重要な意味を持ちます。

適格請求書に書くべき項目については後述しますが、インボイス制度が本格開始する前まで使われている、現行の「区分記載請求書」に登録番号・適用税率・適用税率毎の消費税額を記載すれば、適格請求書となります。

インボイス制度とは 企業にはどんなメリットが?

インボイス制度とは「適格請求書等保存方式」と呼ばれ、新たに定められたかたちに沿って請求書を作成し、保存しなければならないルールを定めたものです。

言い換えると、事業者が日々行う仕入れや販売に関する請求書や納品書の記載方法が変更となり、インボイスの適正な発行・保存が必須となります。

 

企業にとっての最大のメリットは、複雑化する消費税額が正しく把握でき、取引の透明性が高まることです。

 

課税期間における課税売上が1,000万円を超える企業は「課税事業者」に該当します。

例えば、ご自身の企業が課税事業者で、取引先の免税事業者(課税売上が1,000万円に満たない企業や個人事業主)から22万円(税込、税率10%)の請求書を受け取り、支払ったとします。

名目上は、消費税に該当する2万円分を相手先に支払い、相手先が消費税を納めるという構図であるため、現行では課税事業者が消費税を国に納める際は「仕入税額控除」として2万円を差し引くことができます。つまり、課税事業者が10万円の消費税を預かっている場合、そこから2万円を差し引いて、8万円の消費税を国に納めることとなります。

 

なお、実際は相手先が免税事業者である以上、消費税を納める必要がないため「益税」として相手先の手元には2万円が残ります。

 

しかしインボイス制度が開始すると、免税事業者が「課税事業者の登録」と「適格請求書発行事業者の登録」を経てインボイスの登録番号を記載可能な請求書が発行できない場合は、課税事業者が仕入税額控除として2万円を差し引くことはできなくなります。価格を変えない、かつ他の財務に関する控除は考慮しない前提で考えると、免税事業者へ支払う22万円(税込、税率10%)に加えて、消費税を納めるための2万円が必要となります。

 

つまり、課税事業者が10万円の消費税を預かっている場合、そこから2万円を差し引くことはできず、10万円の消費税を国に納めることとなります。したがって、インボイスが発行できない事業者とのやり取りは、企業にとって負担が大きくなることが予想されるのです。

 

では、インボイス制度はいつから開始されるのでしょうか。

 

制度のスタートは2023年10月1日からです。

 

なお、段階的に制度を導入していくために経過措置が設けられています。制度開始から2026年9月までは、免税事業者からの仕入れから80%控除できます。 先ほどの例に当てはめると、1万6,000円は仕入税額控除の金額として計上可能ということです。

 

これが2026年10月から2029年9月は50%となり、例だと1万円の控除ができることになります。2026年10月からは本格的にインボイス制度が適用され、免税事業者からの請求書においては控除不可となるのです。

適格請求書に追加される項目

ここでは、インボイス(適格請求書)に記載すべき内容について説明していきます。 まず、現行の「区分記載請求書」に記すべき内容は下記のとおりです。

 

①発行者の氏名、名称
②取引が発生した年月日
③取引内容
④取引を行った金額
⑤交付を受ける事業者名、氏名
⑥軽減税率(8%)が適用されている品目がわかる記載
⑦税率(8%、10%)ごとの取引額

2019年10月から消費税率が2種類となったことで、どの取引内容にいずれの税率が適用されるかがわかるように請求書を作る必要があります。

これに対して、2023年10月からの「適格請求書」に記載しておくべき項目は下記のとおりです。

①発行者の氏名、名称
②取引が発生した年月日
③取引内容
④取引を行った金額
⑤交付を受ける事業者名、氏名
⑥軽減税率(8%)が適用されている品目がわかる記載
⑦税率(8%、10%)ごとの取引額
⑧⑦の消費税額
⑨登録番号

区分記載請求書と比較して見えてくるように、税率に合わせた取引額とともに、それぞれ「消費税分がいくらなのか」を示す必要があります。

⑨の登録番号については後述で詳しく解説しますが、適格請求書発行事業者に付与されるものであり、これがないと適格請求書として認められません。

インボイス制度の影響を受けるのは?

インボイス制度で、収入面において直接的な影響を受けるのはこれまで免税事業者だった企業や個人事業主などでしょう。

課税所得が1,000万円を超えている課税事業者同士であれば、適格請求書発行事業者の登録をすれば、これまでと同様にそれぞれ取引額から仕入税額控除ができるからです。

免税事業者の目線で考えると、免税事業者のままで価格や取引先を変えながら現行の方法をやり通すことも考えられますが、ほかの免税事業者がインボイスを発行できるように移行していくと、取引先選定の段階で排除されてしまうことも考えられます。

また、課税事業者となれば、これまで益税として受け取っていた金額を消費税として納める必要が出てくるため、実質的な手取りが減ると予想されます。一度課税事業者となれば「今年は課税売上が1,000万円に満たないから免税事業者に戻ろう」といったことができません。

売上の増減に関わらず、消費税をしっかりと納める必要があります。

これを踏まえて、企業側に起こり得る課題は「免税事業者」との付き合い方です。
インボイスが発行できない免税事業者と従来のように取引を重ねると、控除されない消費税額は新たなコストとなります。他方で、消費税分を考慮した価格に再設定し、実質として値下げを行うことも考えられますが、取引の内容によっては、その価格が適正なのかが問われるでしょう。

インボイス制度が始まり、現在の免税事業者間にもインボイスの重要性が浸透していくにしたがって、新たに課税事業者となって適格請求書を発行し始める相手先も増えてくると思われます。

そのため今後、企業は取引先を選ぶ段階で「適格請求書が発行できる事業者か」という視点を持つ必要が出てきます。

同質の商品・サービスを提供する複数の業者との取引を検討する場合、まずは「適格請求書が発行できるか否か」が選択軸になるかもしれません。

企業には早い段階から、インボイス制度の普及に応じて発生するであろう、「消費税に関するコスト増加の発生」などの新たな状況への対応策を固めておくことが求められます。

インボイス制度導入の背景

そもそもなぜ、今の時期にインボイス制度が導入されることになったのでしょうか。
それは、消費税増税による軽減税率の適用と深い関わりがあります。

 1997年からの消費税率5%や、2014年からの消費税率8%は税率が1種類であるゆえ、請求書に記載する税額も1つでした。
そのため単純でわかりやすく、ミスが起こりにくいものでした。

しかし、2019年10月から消費税率が10%になりました。かつ、これに伴い主に低所得者向けの措置として軽減税率8%を導入し、具体的には飲食品(飲食設備等での外食を除く)と新聞は消費税が8%となりました。

これにより請求書に記載する消費税が混在し、商品の仕入れ・販売時の税額計算が複雑化したことがインボイス制度の導入に至った背景です。「軽減税率が適用された品目はどれなのか」また「取引額に対して適用される税率と消費税額はいくらなのか」を適格請求書で明らかにすることで、ミスや不正を防止し正確な経理処理を行うこと、また透明性の高い取引をすることが実現できると捉えられているのです。

インボイス制度導入に伴い企業で行うべきこと

インボイス制度は、課税事業者の企業にとってもさまざまな準備が必要です。
準備策を講じておかなければ、国へ納付する消費税額から仕入税額控除ができず、結果として多大なコスト増額となる可能性があります。

ここでは、企業で行うべきことについて4つ挙げ、それぞれ詳しく解説していきます。
自社の状況と照らし合わせながら、今後必要となる対応について理解しておいてください。

適格請求書発行事業者として登録する

適格請求書発行事業者への登録は、あくまで任意であり事業者の判断に委ねられています。
課税事業者は、自動的に適格請求発行事業者になるわけではなく、別途登録手続きが要ります。

登録申請は2021年10月1日から始まっており、「適格請求書等保存方式」の適用が始まる2023年10月1日から適格請求書発行事業者となるためには、2023年3月31日までに申請を終えておかなければなりません。

申請方法は、e-taxによる手続きか郵送で申請書を送付する方法かのいずれかです。e-taxはPCやスマートフォンからアクセスでき、画面にしたがって必要項目を入力すれば申請が完了します。

申請前に、マイナンバーカードなどの電子証明書と利用識別者番号を準備しておきましょう。

郵送の場合は、国税庁のサイトに掲載されている登録申請様式を印刷し、必要事項を記入の上、管轄の「インボイス登録センター」へ送付します。

税務署の審査で申請が承認されると、登録番号の通知及び公表が行われます。(公表については後述します。)登録番号は、法人の場合「T+法人番号」です。そのほかの課税事業者は「T+数字13桁」となります。

この番号を取得したら、適格請求書を発行するごとに記載します。
ちなみに、適格請求書発行事業者となると次のような義務が課されるようになります。課税売上が1,000万円未満であっても毎年消費税を納めなければなりません。

・適格請求書の交付
・適格返還請求書の交付…返品や値引きに伴い対価を返還した際に作成する。
・修正した適格請求書の発行…交付した請求書が誤っていた場合に、修正したものを交付する。
・写しの保存…交付した適格請求書の写しを一定期間保存する。

(参照元:国税庁
(参照元:国税庁

取引先に対する確認 免税事業者か課税事業者か

まず、取引先で「免税事業者がいるか」を確認する必要があります。
フリーランスや個人事業主、中小・零細企業とやり取りがある企業は、相手先が免税事業者である可能性も高いでしょう。

すべての相手先の状況をしっかりと再把握しておく必要があります。
加えて、経過措置期間から、「将来的に取引先が適格請求書発行事業者として登録する意思があるのか否か」も探っておいた方がよいでしょう。

取引先の意向を把握しておかなければ、免税事業者との取引は仕入税額控除の対象外となり、「その消費税分の取り扱いをそのままにしておくのか・消費税を差し引いた金額に修正するのかな」といった擦り合わせる手間がかかってしまいます。

インボイス制度が始まると、「取引先が適格請求書発行事業者なのか」を確認していく作業が発生します。
同時に適格請求書に書かれている登録番号に誤りがないかも調べていかなければなりません。

前述したとおり、適格請求書発行事業者として登録申請し承認を受けると、登録番号が発行され、国税庁が新規に開設した「インボイス制度 適格請求書発行事業者公表サイト」にて公表されます。

 

同サイトで正しく適格請求書を発行する事業者かを確認すれば、記載ミスや適格請求書発行事業者のなりすましといった不正も事前にチェックできます。

課税仕入れの税額計算方法を確認

インボイス制度の導入で、課税仕入の税額について計算する方法が変更となります。

 

請求書の確認等より業務が煩雑化する恐れもあるため、事前に税額の計算方法を周知徹底しておくことをおすすめします。

 

まず、税額計算の方法を知る上で、「積上げ計算」と「割戻し計算」について押さえておきましょう。積上げ計算とは、適格請求書に記載している消費税額を積み上げて計算する方法です。

 

割戻し計算とは、適用する税率ごとに取引総額を割り戻して計算するものです。割り戻しにおいては年間の税込総額から一括で税抜金額を割り出して、申告する額を算出します。

 

インボイス制度においては、売上・仕入の税額計算は積上げ計算か、あるいは割戻し計算が選択できます。

 

ただし売上を積上げ計算とした場合、仕入の税額計算は積上げ計算に限定されます。この「積上げ×積上げ」を選べるのは適格請求書発行事業者のみです。

 

一方、売上を割戻し計算とした場合、仕入は積上げと割戻しのどちらも選択できます。原則として売上は割戻し計算が好ましいとされており、その場合「割戻し×積上げ」か「割戻し×割戻し」の組み合わせとなります。

 

課税仕入の消費税額を求める実際の計算式に落とし込んでみると、積上げ計算は「適格請求書の消費税合計額×(78/100)」です。

 

割戻し計算は、消費税率10%では「10%の課税仕入に係る支払い対価額の合計×(7.8/110)」、8%では「8%の課税仕入に係る支払い対価額の合計×(6.24/108)」です。

 

課税仕入の税額計算は、原則として積上げ計算が望ましいとされています。しかし、割戻しの方法も残しているのは、各企業が取り入れているシステム上では大きく改修する必要が出てきてしまうからです。

 

そのため、税額計算の仕方を変更する場合は、自社のシステムが積上げ計算に対応できるのかについても調査しておいた方がよいでしょう。

 

なお、タクシー代のように税額の記載がない簡易インボイスについては個々に割戻計算をする必要があります。

適格請求書における端数処理の方法を確認

税額計算とともに、押さえておきたいのが適格請求書ごとの端数処理の方法です。

 

「6,549.5円」の端数処理は任意の方法に委ねられており、四捨五入で「6,550円」、切捨てで「6,549円」とするなど企業によってそれぞれです。

 

端数処理は自由な方法ですが、適格請求書の「税率ごとの取引額の消費税額」においては、10%と8%でそれぞれ1回のみ端数処理ができます。

 

消費税額が10%は19,888.2円、8%は32,555.7円だったとき、任意の方法(ここでは切捨て)を統一し、19,888円と32,555円と記せます。

 

ここで注意すべきなのは、それぞれの消費税額を端数処理するのは認められないということです。19,882.2円を取引ごとに細分化したのが、「5,611.9円」と「14,270.3円」だったとき、それぞれを端数処理してはいけません。

 

請求書の10%、8%の消費税額だけが端数処理できると覚えておきましょう。

(参照元:国税庁

社内経理システムの変更

インボイス制度の導入で、社内経理システムが混乱することも予測されます。

なぜなら、「請求書を課税事業者と免税事業者に分けて経理処理しなければならない」「取引先の適格請求書が正しいものかを確認しなければならない」など、新たな業務負担が増えるからです。

 

また自社の適格請求書のフォーマットを新たに作成し、すべての取引がインボイスに則って進められるように社内で整備しておく作業も必要です。

 

具体的には従来の「区分記載請求書」に登録番号など前述の必要項目を足せば適格請求書となりますが、特にインボイスが導入された直後などは新旧の請求書が入り混じることのないように、導入スタート時期について、従業員に周知しておいた方が賢明でしょう。

 

さらに、税額計算の算出方法を変更するのであれば、これまで使っていたシステムの改修や入れ替えをしなければならないことも視野に入れておきましょう。請求書作成ロボットやRPA等を取り入れている場合は、対応できるかたちに仕様を変えなければならないかもしれません。

 

新たな制度を機に、インボイス制度に対応した受発注システムや請求書管理システムを採用するのも有効な手でしょう。

 

新制度に対応しやすいだけでなく、業務効率化や省力化も望めるでしょう。 インボイス制度をはじめさまざまな社会変化に対応するシステムを検討するなら、スムーズに実装・使用・拡張を進められるシステムを選びましょう。

まとめ

 2023年10月1日から始まるインボイス制度。課税事業者である企業は、期限までに適格請求書発行事業者の登録申請をし、適格請求書に記載する登録番号を取得しましょう。

 

制度が開始すると、「取引先が免税事業者なのか否か」が重要なポイントとなります。これまでのように免税事業者と取引きすると消費税額が控除できず、国へ消費税を納付する際に更なるコストが発生する可能性があります。

 

加えて、自社の経理体制もインボイスに則って対応しなければなりません。具体的には自社の「適格請求書」フォーマットの作成、取引先の免税事業者の確認と今後の取引について社内の方針の決定、経理システムの見直しです。インボイス制度の開始までに十分に備えておいてください。

 

▶関連記事:電子帳簿保存法改正の猶予期間は2023年12月まで。宥恕期間後のリスクは?