ノウハウ 知的財産権とは?権利を取得するか悩んでいる方におすすめ。
更新日:2024年10月17日
投稿日:2021年12月23日
知的財産権とは?権利を取得するか悩んでいる方におすすめ。
知的財産権とは
ここでは知的財産権の種類と活用例、取得の仕方についてみていきましょう。
知的財産権とは
まず、知的財産権について説明します。
知的財産権とは「知的財産」を守るために、法律で定められた権利です。
「知的財産」とは、人が考えたアイデアや技術、発明、デザイン、著作など、創作活動によって生み出される財産として価値ある無体のものをさします。
知的財産に定義されるものの種類は幅広く、小説などの著作物や商号から、半導体の配置や種苗の育成法まで多岐にわたります。
知的財産権とは、こうした知的財産を生み出した人に与えられる、法律で定められた一定の権利ということです。
【2021年施行】意匠法の改正!改正ポイントと知的財産について解説。
知的財産権の種類
次に、知的財産権としてどのような権利が規定されているのかを説明します。
まず、知的財産権には大きく分けて十種類あります。
その中で、特許権、実用新案権、意匠権、商標権の四つは産業財産権に区分されます。
産業財産権では、デザインやネーミング、新技術やロゴといった知的財産の権利を取得することでこれらを保護し、コピー商品の横行を防いで一定期間権利を独占することが可能です。
それでは、一つずつ見ていきましょう。
産業財産権
まずは、産業財産権とされている四つの権利について見ていきましょう。
特許権
一つ目が特許権です。
これは自然法則を利用した、新規かつ高度で産業上利用可能な発明を保護するための権利です。
例えば、フリクションボールなどは特許権を取得しています。
実用新案権
二つ目が実用新案権です。
これは物品の形状、構造、組合せに関する考案を保護する権利です。
例えば、押し潰せるティッシュ箱は構造に関する考案であるため、実用新案権を取得しています。
ここで、特許権と実用新案権の違いを整理しておきましょう
まず、実用新案権は特許権のような高度な技術を使った発明ではなく、小発明を保護しています。
また、特許権は「発明」を広く保護しているのに対し、実用新案権は形状、構造、組合せの三つの観点に限定していることも特徴的です。
そのため、画像処理方法について考案したとしても、「方法」の観点では実用新案権は認められません。
意匠権
三つ目が意匠権です。
これは美術や工業、建築などで使われるデザインについて保護する権利です。
例えば立体マスク、曲線が特徴的なスマートフォンが意匠権で保護されています。
出典:【2021年施行】意匠法の改正!改正ポイントと知的財産について解説。
商標権
最後に商標権についてです。
これは提供するサービスや販売する商品を他社製品と区別するためのマークや文字を保護する権利です。
例えば、商品名やネーミング、ブランドロゴが幾何学的にあしらわれたバッグなどに商標権が認められています。
そして、これまで説明してきた四つの権利が産業財産権と呼ばれています。
ここからは、産業財産権ではないけれど、知的財産権として認められている権利について見ていきましょう。
その他の知的財産権
その他の知的財産権として、著作権、回路配置権、育成者権、地理的表示、不正競争の防止、商号の六つがあります。
著作権
一つ目が著作権です。
これは、自分の考えや気持ちを作品として表現した「著作物」を保護する権利です。
例えば、小説や音楽、ダンスの振り付け、映画、コンピュータープログラムが著作物に該当します。
出典:①著作権とはどんな権利?|学ぼう著作権|KIDS CRIC
回路配置権
二つ目が回路配置権です。
これは、独自に開発された半導体チップの回路配置を保護する権利です。
育成者権
三つ目が育成者権です。
これは、植物の新品種を保護する権利です。
例えば、シャインマスカットなどが新品種として保護されています。
地理的表示
四つ目が地理的表示です。
地域には、伝統的な生産方法や気候・風土・土壌などの生産地等の特性が、品質等の特性に結びついている産品が多く存在しています。これらの産品の名称(地理的表示)を知的財産として登録し、保護する制度です。
例えば近江牛などがこの制度で保護されています。
出典:登録産品一覧:農林水産省
不正競争の防止
五つ目が不正競争の防止についてです。
現代社会では、経済において自由競争が前提になっています。
しかし、事業者間の競争が自由競争と認められる範囲を逸脱して、社会全体の公正な競争秩序を破壊する恐れがある場合には、不正競争として、規制されます。
例えば、豚肉を混ぜたひき肉を「牛ミンチ」と表示して、販売することや、他社のヒット商品と同じ商品名の商品を自社で販売することなどが不正競争に該当します。
商号
最後に商号についてです。
これは、商人が自己を表示するために使用する名称であり、会社の場合には社名が商号となります。
知的財産権の効果と活用例
次に知的財産権の一般的な効果と活用例についてお話しします。
知的財産権の一般的な効果
知的財産権とは、知的財産を生み出した人に与えられる権利で、知的財産を保護するための権利でした。
その一般的な効果として、知的財産権を持っている人は、保護された知的財産を独占して使うことができます。
もし、模倣品や類似品が市場に出回った時には、知的財産権に基づき、それらを排除することもできます。
出典:なぜ知的財産が必要なの?
知的財産権の一般的な活用例
それでは、知的財産権を持っていることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
その活用方法を見ていきましょう。
活用例は大きく分けて以下の四つがあります。
①競合者に対する競争力の強化
②取引先に対する主導権の確保
③自社ブランディングの構築
④ライセンス契約
それでは一つずつ見ていきましょう。
競合者に対する競争力の強化
まず、競合者に対する競争力の強化について説明します。
知的財産権により、競合者の模倣や類似品を市場から排除することが可能でした。
これにより、競合の市場への参入を防ぎ、価格競争を避けることが可能になるというメリットがあります。
例えば、擦って消せるペンについて特許権を取得していた場合を考えましょう。
この場合、似たような商品が市場に出回り始めた時には、特許権に基づいて、その商品を排除することができます。
結果として、自社の他に「擦って消せるペン」を作る競合は出現しないことになります。
そのため、自社が十分な利益を得るために理想的な価格をつけることができるのです。
取引先に対する主導権の確保
次に取引先に対する主導権の確保について見てみましょう。
これは、知的財産権を持っていることで、取引先が自社以外の他者と取引する可能性が低くなるということです。
例えば、自社が取引先に対して擦って消せるペンを納入していたとします。
仮に「擦って消せるペン」について特許権を持っていなかった場合、競合他社が、同じような製品をさらに低価格で販売し始めると、取引先は自社から競合他社へ取引の相手を変えてしまうかもしれません。
しかし、特許権を取得していれば、そのような競合他社は排除することができるため、取引先が取引の相手を変えることもないのです。
自社ブランディングの構築
三つ目に自社ブランディングの構築が可能になります。
特許権や意匠権を持っているということは、その製品やデザインを作れるのは自社だけであるという、オリジナリティの証明になります。
なぜなら、知的財産権を取得するためには、その「知的財産」が新しく作られたものであることが必要です。さらに、知的財産権を持っている場合は、市場から模倣品を排除することもできるからです。
そして、自社製品にオリジナリティがあるということは、他社製品と差別化が図れるため、自社ブランドの構築に繋がるのです。
ライセンス契約
最後にライセンス契約について説明します。
今まで、知的財産権を持っていることにより、知的財産を独占的に使えることによる活用例を挙げてきました。
しかし、自分が持っている知的財産権を他人に使わせることも可能です。
その際に結ばれるのがライセンス契約というものです。
この契約により、知的財産権を借りる人(これをライセンシーと呼びます)は、本来であれば使えない技術や情報などの知的財産を使うことができます。
そして、知的財産権を使わせるひと(これをライセンサーと呼びます)は、ライセンシーから知的財産の貸出料金(実施料金といいます)を得ることができます。
このように、ライセンス契約を結ぶことで、ライセンサーとライセンシーともにメリットが生まれるのです。
知的財産権の取得方法
ここまで、知的財産権の概要と、効果や活用例について見てきました。
それでは、実際に知的財産権を取得する方法を見ていきましょう。
産業財産権
まずは、産業財産権の四つの取得方法について説明します。
初めに、産業財産権は特許庁が管轄しているため、特許庁へ申請することが必要です。
そして、産業財産権は①出願②審査で、特許庁から認められた場合に取得することができます。
特許権
まずは特許権の取得について、ざっくり説明します。
①出願について
特許権の出願をする際には、願書とともにその技術内容を詳しく説明した明細書・図面を作成し、特許庁に出願手続を行います。
②審査について
特許権の出願をした後に、まず、出願書類の形式について審査されます。(方式審査)
その後、特許を取得しようとしている技術が「発明」に該当するのかについて、審査されます。(実体審査)
この審査の中で、特許権を認めて良いと判断(特許査定)された場合に、特許権を取得することができます。
実用新案権
次に実用新案権について見ていきます。
①出願について
実用新案権の出願をする際には、願書とともにその技術内容を詳しく説明した明細書・図面を作成し、特許庁に出願手続を行います。
②審査について
実用新案権の出願をした後には、出願書類の形式について審査がされます。(方式審査)
その後、出願された技術が実用新案権で保護されるものに該当するかの審査が行われます。(基礎的要件審査)
この審査を経て、実用新案権が認められた場合には、実用新案権の設定登録に移ります。
また、特許権で行われる実体審査と実用新案権で行われる基礎的要件審査は、実体審査の方が厳しく審査されるという違いがあります。
出典:初めてだったらここを読む~実用新案出願のいろは~ | 経済産業省 特許庁
意匠権
三つ目に意匠権の取得について説明します。
①出願について
意匠権は願書とともに意匠図面を作成し、特許庁に出願手続を行います。
②審査について
意匠権の出願をした後は、出願書類の形式の審査がされます。(方式審査)
その後、意匠権を取得しようとしているデザインなどの実体についてさらに詳しく審査されます。(実体審査)
この審査の中で、意匠権を認めて良いと判断(登録査定)された場合に、意匠権を取得することができます。
出典:初めてだったらここを読む~意匠出願のいろは~ | 経済産業省 特許庁
商標権
最後に商標権の取得について見ていきましょう。
①出願について
商標権は願書とともに商標見本を作成し、特許庁に出願手続を行います。
②審査について
商標権の出願をした後は、出願書類の形式の審査がされます。(方式審査)
その後、商標権を取得しようとしているマークやアイコンなどの実体についてさらに詳しく審査されます。(実体審査)
この審査の中で、商標権を認めて良いと判断(登録査定)された場合に、商標権を取得することができます。
出典:初めてだったらここを読む~商標出願のいろは~ | 経済産業省 特許庁
その他の知的財産権
それでは、その他の知的財産権の取得について見ていきましょう。
ここでの知的財産権は、管轄している行政庁もそれぞれ異なるので、出願先にも注意が必要です。
また、取得方法も権利によってバラバラになっています。
著作権
まずは、著作権の取得方法について見ていきます。
実は、著作権は著作物を創作した時点で自動的に発生し,その取得のためになんら手続を必要としません。ここが,登録することによって権利の発生する特許権や実用新案権と異なる点です。
回路配置権
次に回路配置権について見ていきます。
回路配置権は①出願②審査をすることで、知的財産権として登録されます。
①出願について
回路配置権はSOFTICという機関に、願書と回路の図面、半導体集積回路を提出して、出願を行います。
②審査について
回路配置権の出願をした後は、出願書類の形式審査が行われます。(方式審査)
この審査で認められた場合には、回路配置権として登録されます。
育成者権
三つ目に育成者権について説明します。
育成者権は①出願②審査を経て、知的財産権として登録されます。
①出願について
所定事項を記載した「願書」に説明書及び出願品種の植物体の写真を添付したものを農林水産大臣に提出します。
②審査について
育成者権の出願をした後は、出願書類の形式について審査されます。(方式審査)
その後、育成者権を取得しようとしている植物が、登録の要件を満たすかについて、審査されます。(実体審査)
この審査で認められた場合には品種登録が行われ、育成者権を取得することができます。
地理的表示
四つ目に地理的表示について見ていきましょう。
地理的表示は①出願②審査を経て、知的財産権として登録されます。
①出願について
生産者団体が、産品をその名称、特性(品質や社会的評価)、生産地、生産の方法等とともに農林水産大臣に申請します。
②審査について
地理的表示の出願をした後は、出願書類の形式について審査されます。(方式審査)
その後、学識経験者の意見聴取を経て、農林水産大臣により登録の可否を判断されます。(実体審査)
この審査で認められた場合には登録が行われ、地理的表示を取得することができます。
商号
最後に商号の取得方法について見ていきましょう。
商号は①申請②審査を経て、登録されます。
①申請について
申請書と添付書面を会社・法人の本店を管轄する登記所に送ります。
②審査
書類に不備がないかなどの確認が行われます。
ここで、不備がなかった場合は、商号として登録されます。
知的財産権侵害
ここまで、知的財産権の種類や効果、取得方法について見てきました。
しかし、知的財産権を持っていたとしても、それが侵害されることがあります。
知的財産権侵害とはどのようなものでしょうか。
知的財産権侵害とは
まず、知的財産権侵害とはどのように定義されているのでしょうか。
特許庁によると、知的財産権は、人の幅広い知的創造活動について、その創作者に独占的に創作を利用する権利などを与えるものです。しかし、そうした権利を無視して無断で創作や商標などを利用し、作成されたものが模倣品・海賊版と言われるものです。このように模倣品・海賊版を作成する行為、無断で創作や商標などを利用する行為が権利侵害です。このような権利侵害に対しては、創作や商標などの利用禁止や損害賠償を求めることができます。
出典:被害に遭ったら -権利侵害とは | 経済産業省 特許庁
知的財産権を侵害された時の対処法
それでは、実際に知的財産権を侵害された場合に、どのような対応を取ればいいでしょうか。
その対処法について見ていきましょう。
知的財産権を侵害された場合に、取り得る手段は以下の三つです。
①差し止め請求
②損害賠償請求
③刑事告訴
それでは、この三つについて詳しく見ていきましょう。
差し止め請求
一つ目の手段が、差し止め請求というものです。
これは、自分の知的財産権を侵害している他者が存在する場合に、裁判所にその行為を止めるよう命じてもらう請求です。
例えば、東京地裁平成28年12月19日決定の事例では、C社が運営する某有名コーヒーチェーン店の店舗外観・内装・メニューなどを、同業他社であるD社が無断で模倣していました。
C社は、D社がC社の店舗外観などを利用して集客を行っている点について、不正競争防止法違反を根拠に、当該店舗外観などの使用の差し止めを求める仮処分を申し立てました。
裁判所は、C社の店舗外観などが特徴的かつ有名であることや、D社の使用していた店舗外観などがC社のものと誤認混同されるおそれがあることなどを認定して、使用差し止めの仮処分を一部認めました。
出典:知的財産権を侵害されたらどうすべき? 過去の事例と対応方法を解説
損害賠償請求
二つ目の手段として、損害賠償請求が考えられます。
知的財産権の侵害行為は民法条の不法行為に該当します。そのため、被害者は加害者に損害賠償請求ができるのです。
しかし、損害賠償請求では、被害者が知的財産権の侵害があったことを証明する必要があります。そのため、侵害があったことを証明できる証拠などがない場合は、認められません。
例えば、知財高裁令和2年1月29日判決の事例では、A社が某有名テレビゲームのキャラクターを模したデザインの衣装をレンタルするサービスを提供していました。
A社はテレビゲームの名称を盛んに強調して宣伝を行ったり、無断でテレビゲームの知名度を活用した集客を行っていたのです。
権利者であるB社(ゲーム会社)は、A社に対して、不正競争防止法違反などを理由とした損害賠償等の請求をしました。
裁判所は、当該テレビゲームの名称が非常に有名である点などを考慮して、A社からB社に対し、5000万円もの多額の損害賠償金を支払うように命じました。
出典:知的財産権を侵害されたらどうすべき? 過去の事例と対応方法を解説
刑事告訴
最後に刑事告訴という手段が考えられます。
知的財産権の侵害には、刑事罰が設けられている場合もあります。被害者として加害者に刑事的制裁を受けてほしいと考える場合は、捜査機関に対して刑事告訴を行いましょう。
出典:知的財産権を侵害されたらどうすべき? 過去の事例と対応方法を解説
まとめ
この記事では、知的財産権の種類や効果、知的財産権侵害について事例を交えながら見てきました。
知的財産は無体のものであるが故に、容易に侵害されてしまいます。
そのような知的財産を守るために、適切な知的財産権を取得することはとても重要です。