ノウハウ もうすぐクリスマス!プレゼントの法律上の位置づけは?
更新日:2024年10月31日
投稿日:2021年12月6日
もうすぐクリスマス!プレゼントの法律上の位置づけは?
秋も深まり、次第に冬の訪れを感じるようになってきました。街ではクリスマスケーキの予約受付を知らせるポスターが張られたり、クリスマス用のインテリアグッズが店頭に並んだりと、クリスマスに向けた準備も進められています。
クリスマスといえば、子供達が楽しみにしているのはサンタクロースから贈られるクリスマスプレゼントです。大人の場合であっても、恋人へのクリスマスプレゼントに何を贈ろうかと楽しい計画を考えている方もいると思います。
クリスマスプレゼントを買って誰かに贈る行為は、法律上では、どのような解釈になるのでしょうか。
本記事では、プレゼントの法的な解釈や解釈をする上で参照する民法の概要について解説していきます。
プレゼントの法的な解釈は?
一般的に、プレゼントは法律では民法の「贈与」(法549条)にあたると考えられます。プレゼントを贈るというと、プレゼントを贈りたいという相手に対し、お礼や感謝など自分の気持ちを伝える一方的な行為のように感じます。一方で法律上では相手がプレゼントを受け取る意思を示せば、贈る側と受け取る側の二者間の契約が成立すると解釈されます。したがって、クリスマスプレゼントは、相手がプレゼントを受け取る意思を示すことで、贈与契約が成立することになります。
贈与契約は、書面によって契約を締結する「書面による贈与」と書面は作成せずに口答で贈与を約束する「口頭による贈与」の2つに分けることができます。
例えば、書面にて贈与の時期や相手方、財産の目録、贈与の条件などを記した書面を用意し、贈与を行う契約は書面による贈与にあたります。一方、クリスマスプレゼントの場合は、プレゼントの内容やプレゼントを贈る相手などを書面に残すことなどはしないでしょう。しかし、プレゼントであることを伝え、相手がそれを受け取る意思を示した場合はその贈与行為に合意したとみなされ口頭による贈与契約が成立します。
民法に定義される贈与とは?
ここで、詳しく法律を確認してみましょう。
民法第549条における贈与の定義
民法第549条では「贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」と定義されています。
従って、何かを無償でプレゼントすることを相手に伝え、相手がそれに同意し、プレゼントを受領する意思を示すことによって贈与契約は成り立つと解釈することができます。
参照:法令検索 民法
書面によらない贈与と履行の終わった部分
民法第550条では「書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。」としています。
「書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。」の箇所に関しては、書面による贈与契約をしていない場合は、プレゼントを贈る側もプレゼントを受け取る側もその契約を解除することができるという意味となります。
具体的には、クリスマスプレゼントに男性側が指輪をプレゼントすると約束したものの、その約束を撤回して指輪をプレゼントしなかった場合や女性側が男性から指輪をプレゼントすると提案され、受け取る約束をしていたもののやはり受け取れないと受け取りを拒否した場合などにおいて、書面による契約がなければいずれの場合も法的な問題はないということになります。
また、「ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。」に示された履行の終わった部分とは、プレゼントを贈るという行為が終わった場合と考えることができます。従って書面によらない口約束の贈与契約であった場合でも、プレゼントを受け渡しがあった後には、その贈与契約を解除することができないという意味合いとなります。
参照:法令検索 民法
民法ってどんな法律?
クリスマスプレゼントを贈る行為は一般的に民法上の贈与契約にあたります。では、贈与契約について定義をしている民法とは、どのような法律なのでしょうか。民法の概要について解説します。
私法の基本法である民法
法律には、公権力と私人の間の権利や義務について定めた法律である「公法」と、私人と私人の間の権利や義務について定めた「私法」があります。
民法とは、私人間の権利や義務について定めた私法であり、私法の基本法や私法の一般法と呼ばれることもある法律です。民法は、さまざまな契約や商取引、金融取引、相続など、ほとんどの日常生活に関係してくる法律となっています。加えて、個人の生活に関係する権利や義務だけでなく、法人として事業を行う際の法律も民法が基本となっています。
一般法とはその対象が特定の人物や事柄に限ったものではなく、広く一般的に適用される法律のことです。私法に関連する法律は商法や会社法など数多くあるものの、民法はその中でも最も基本となる法律であること、また民法は私人間一般の権利や義務に適用される法律であることから、民法は私法の基本法と呼ばれ、私法の一般法であるとされています。
民法の基本原理(基本原則)
私法の基本法である民法には、一般に民法の基本原理(基本原則)と呼ばれる下記の3つの原理があるとされています。
1.権利能力平等の原則
2.私的自治の原則
3.所有権絶対の原則
権利能力平等の原則とは
権利能力平等の原則とは、すべての人が階級や職業、性別、年齢等によって差別されることなく、みな平等に権利義務の主体となる権利や能力を持つことができるという原則です。
民法ではどのような仕事に就いていても仕事に就いていなくても、すべての人が等しく、同じ権利を持つことを原則としています。
私的自治の原則とは
私的自治の原則とは、私人間における権利や義務は各個人が自らの意思に基づき規律されるべきであり、国家権力は私人間の問題に干渉するべきではないとする原則のことをいいます。この私的自治の原則から派生するものに「契約自由の原則」があります。
契約自由の原則とは、公の秩序や法に違反しない限りは、誰でもどこでも、自分の意思で自由に契約を結ぶことができる権利を持つという原則です。
所有権絶対の原則とは
所有権絶対の原則とは、個人が所有権を持つものに関しては、他人はもちろん、国の権力をもってしても侵害することはできないとした原則のことです。
所有権を持つ個人は、自分の意思に従い所有物を自由に使用したり処分したりすることができるとする原則です。
民法の構成
民法は、大きく分けて「総則」、「物権」、「債権」、「親族」、「相続」の5つの分野に分かれて構成されています。このうち、私人間の財産部分に関する権利・義務関係にあたる部分が「財産法」、家族関係に関する権利・義務関係にあたる部分が「家族法」と呼ばれています。財産法には、総則、物権、債権の分野が含まれ、家族法には親族、相続の分野が含まれます。
贈与に関する権利・義務は財産法の債権分野に
このように民法では、日常生活における私人と私人の間に発生するあらゆる権利や義務についての規律を定めています。民法において贈与に関する権利・義務は、プレゼントを贈る側の財産に関わるものであるため、財産法である債権の分野に含まれています。
彼氏・彼女からクリスマスプレゼントは奪い返せる?
カップルとしてクリスマスを過ごし、クリスマスプレゼントを渡したもののその後、別れることとなってしまうケースもあります。今後も長く一緒に過ごすことを前提とし、高額なプレゼントを贈っていた場合など、別れた彼氏や彼女からクリスマスプレゼントを奪い返すことはできるのでしょうか。
民法の定め上、別れた後にプレゼントを奪い返すことはできない
民法第549条では「贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」と示しています。従ってクリスマスプレゼントは相手が受け取る意思を示した時点で贈与契約が成立したと考えることができます。
また、民法第550条において「書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。」と謳っています。これは、書面によらない贈与契約であるクリスマスプレゼントは、プレゼントを渡す前であれば、プレゼントを贈るという約束を撤回することが可能であることを示しています。つまり、クリスマスプレゼントをあげると約束していても、実際にプレゼントを渡さず、約束を撤回しても法的には問題とはならないということです。
そのため、クリスマスプレゼントを贈った後に交際相手から別れを告げられても、プレゼントを返却してもらうことはできません。逆に、クリスマス後に別れた相手からプレゼントの返還を求められた場合も、法律上は相手に返還しなくても何も問題はありません。
参照:法令検索 民法
別れた後にプレゼントを奪還できるケースもある
クリスマスプレゼントを渡した後に、交際相手から別れを告げられたとしても、基本的にはクリスマスプレゼントの返還を求めることはできません。これは、クリスマスプレゼントに関わらず、誕生日プレゼントとして贈ったものやその他の記念として贈ったプレゼントなどでも同様です。
一方で例外として別れた後にプレゼントの返還を求めることができるケースもあります。
婚約を交わしたうえで、プレゼントを渡した場合
交際相手とすでに婚約をしており、婚約指輪としてクリスマスプレゼントを受け取っていたような場合は、相手にプレゼントを返還する義務を負う可能性があります。これは、この後に記載する「別れた場合にはプレゼントを返還することを事前に約束していた場合」と同様に、婚約指輪とは婚姻の成立を前提に贈られるものであり、万一、婚約が不成立になった場合には、返還を認めるべきものの授受と考えられるため、婚約の解消とともに贈与契約も解消されることとなるのです。従って、このような場合であれば、法律上では別れた後にプレゼントを奪い返すことが可能となることがあります。
参照:法令検索 民法
民法II 第3版: 債権各論 内田貴
別れた場合にはプレゼントを返還することを事前に約束していた場合
もし、今後別れるようなことがあればその際にはプレゼントを返すという約束をしたという条件でプレゼントを贈っている場合は、プレゼントの返還を求めることができ、返還を求められた場合には相手にプレゼントを返す必要が生じていきます。
このようなケースは民法第127条2項「解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。」に該当するものと考えられます。
別れた場合にはプレゼントを返還するという条件付きの贈与契約であれば、解除条件付き法律行為に該当し、解除条件である別れが成立した場合に、その契約の効力が失われるということとなります。従って、このようなケースでは別れた時にあの時のクリスマスプレゼントを返してほしいと申し出た場合、相手からクリスマスプレゼントを奪い返せる可能性があります。但し、本当にそのような解除条件が付されていたかどうか明確でない場合も多いと考えられます。
参照:法令検索 民法
まとめ
本記事では、プレゼントの法的解釈やクリスマスプレゼントを奪い返すことができるか解説してきました。
クリスマスプレゼントを贈り、相手がそれを受け取る意思を示すことは民法上の贈与契約にあたります。贈与契約は、一方が無償で財産を贈与する意思を伝え、相手がそれを受諾することで成立するものです。
また、プレゼントの受け渡し前であれば書面にしていない限り、プレゼントを贈るという約束を撤回することはできますが、プレゼントを贈った後にそのプレゼントを返還してもらうことは一部の例外を除き、法律上では難しくなります。
街にイルミネーションが灯され、クリスマスソングが流れるようになりました。大切な人へクリスマスプレゼントは何を贈ろうか、大切な人からどんなクリスマスプレゼントが貰えるか楽しみにしている人も多いと思います。
法律上の扱いはさておき、クリスマスプレゼントの返還を求める事態や返還を求められるような事態に発展することがないよう、楽しいクリスマスを過ごしたいものです。そのためには大切な人との時間をつくることが大切です。
大切な人の時間を増やすために、働き方を見直すことも大切です。「契約DX」を推進することで企業全体で従業員の働き方を見直していきましょう。