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ノウハウ 日本の民法制定の歴史!はじまりから平成の改正までの変遷を一挙紹介。

更新日:2024年10月17日

投稿日:2021年11月22日

日本の民法制定の歴史!はじまりから平成の改正までの変遷を一挙紹介。

日本の民法制定の歴史!はじまりから平成の改正までの変遷を一挙紹介。

日々、何気なく行われている市民生活について定めている民法。

日本では、120年以上の歴史があります。本記事では江戸時代に制定された経緯から、平成の大改革まで、解説します。

 

 

 

現行の民法はどのようにして生まれたのか

日本で全国共通の法律というものは江戸時代より前は存在しませんでした。私法は存在したものの、「国家」が民衆に対して刑罰を下すタイプの法体系(刑事法)が中心であり、商取引や親族に関する法は、武家と庶民で異なり、藩や地域でも多種多様でした。



出典:前近代の法体系から、現代の法体系をとらえなおす-一橋大学ウェブマガジン-

 

鎖国政策が崩壊。不平等条約の締結へ。

 

そんな中、日本では19世紀半ばに鎖国政策が崩壊。幕府はペリーと日米和親条約を締結し、1858年、日米通商条約を締結しました。同様の条約は、オランダ、ロシア、イギリス、フランスとも締結され、日本は諸外国からの不平等条約に悩まされることになります。

特に、外国人が日本国内で刑事事件や民事事件において被告になるときにその外国人が属する国の領事が裁判を行う、領事裁判権を承認したことが大きな課題でした。

これを認めざるをえなかった背景としては、西欧式の近代的な法典が日本には存在せず、諸外国が自国民の裁判を任せられないと判断したことにあります。

 

不平等条約の改正のため、民法制定へ。

この不平等条約は、明治政府発足後も続いたため、政府は不平等条約の改正のためには民法典の制定に動き出したのです。




まず、司法卿であった江藤新平は箕作麟祥(みつくり りんしょう)に対して当時評価の高かったフランスの民法典の翻訳を任命します。その際、江藤新平は「誤訳もまた妨げず、ただ速訳せよ」と命令していることから、当時の日本がどれほど民法制定に必死だったかが伺えます。

 

しかし、翻訳は難航。そこで日本独自の民法を作成しようと「お雇い外国人」としてフランスの法学者であるボアソナードを招聘しました。

 

1873年に来日したボアソナードは、その活躍から日本近代法の父と呼ばれます。彼は、法典編纂の中心人物として旧刑法,治罪法(現在の刑事訴訟法にあたる),旧民法の起草をしました。

 

当時の日本では、拷問などの自白を強要するような捜査が行われてたため、この悲惨な現状を変えようと、ボアソナードが起草した旧刑法と治罪法については,当時の日本で実際に施行されました。

 

民法典論争勃発。現行民法発足。

 

一方で、民法の施行に関しては、ある問題が生じます。ボアソナードをはじめとした民法起草者はフランス民法を模範としつつも、可能なかぎり日本古来の慣習に合わせようと試みましたが、反対派の登場により民法典論争が起きました。

 

このボアソナードを中心として作成された民法を旧民法と呼びます。


反対派の学者であった穂積八束(ほづみやつか)から「民法出でて忠孝亡ぶ」という有名な意見が出されるなど,特に家族法の部分が日本の家父長制度に合致しないとして,批判がされました。

 

その後、富井政章(とみいまさたか),穂積陳重(ほづみのぶしげ),梅謙次郎(うめけんじろう)ら3名が民法の起草に任命され新たに、民法が作られました。しかし、問題となった旧民法の家族法(身分法)部分は、根本的修正を受けることなく明治民法に継承されました。


そして1898年、明治31年に第一編から第五編まで成る現行民法が施行され、これが現在の民法典のはじまりです。

民法典作成にはドイツ民法の影響も受けており、編成はドイツ民法と同じパンデクテン方式が採用されています。

パンデクテン方式とは


パンデクテン方式とは、一般的ないし抽象的規定を「総則」としてまとめること、法典を体系的に編纂する形式のことです。
民法全5編のうち、全3編(総則、物権、債権)に関する法を財産法と呼び、これに対し後2編(親族、相続)を身分法と呼びます。

 

これまで行われた改正は?主要な改正をピックアップ

民法は、国情勢や他法律との関連など様々な理由でこれまで改正を行ってきました。

その中でも複数の項目を改変した「昭和22年改正」「平成16年改正」「平成29年改正」についてピックアップしてご紹介します。

昭和22年改正

昭和22年、太平洋戦争後、家族法の改正が行われなました。。日本国憲法が制定されたことを受けて抜本的な改正が第四編・第五編(親族・相続法の分野)を中心に行われました。
戦前の民法典には、妻の行為能力を否定した条文や長男に家督相続を定めた条文が、新たに制定された日本国憲法の内容に違反するものであったことから、全面的に改正の作業が行われました。

 

平成16年改正

これまでの民法は古めかしい 片仮名かつ文語体でしたが、平成16年の改正によって分かりやすい平仮名、口語体へと改められました。詳しく知りたい方は民法現代語化案補足説明をご覧ください。不適切な条文の整理も共に行われました。判例・通説により捕捉された要件等の追加と、社会の変化により現在使われていない条文の削除を意味します。

 

平成29年改正

今日までに民法の第四編・第五編である家族法の分野は何度も行われてきました。
ですが、財産法分野が中心となる第一編から第三編については大幅な改正は行われてきませんでした。

しかし、明治時代とは大きく生活様式が異なる現代で、民法の内容が変わらないことは生活に弊害をきたすことが問題となり、債権法は、約120年のあいだ全般的な見直しがされないまま推移しましたが、見直しが図られました。そして、それに基づき必要な改正が行われました(「民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)」2017年6月2日公布、2020年4月1日施行)。

 

出典:民法の概要-株式会社Kenビジネススクール

 

債権法の改正について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

【2020年4月施行】民法改正!ビジネスパーソンが押さえておくべきポイント!

まとめ


今回は、皆さんの生活に関わる民法の歴史についてまとめました。時代が変化するごとに民法は改正を加えられますが、明治時代から民法の基礎の部分が変わっていないことには驚かされます。新たなテクノロジーの誕生によってこれからの生活、さらには法律も変わっていくことでしょう。そんな変化に敏感になるためにも、一から民法を振り返ってみてはいかがでしょうか。

参考文献

中田邦博・ 後藤元伸・ 鹿野菜穂子(2020)『新プリメール民法1 民法入門・総則〔第2版〕』法律文化社