ノウハウ 【10月31日投開票!】日本の選挙ルールを定める!公職選挙法とはどんな法律?
更新日:2024年10月17日
投稿日:2021年11月8日
【10月31日投開票!】日本の選挙ルールを定める!公職選挙法とはどんな法律?
2021年10月4日、自民党の岸田文雄氏が第100代となる内閣総理大臣に就任しました。
岸田総理大臣は10月14日に衆議院を解散し、10月19日に公示、10月31日に投開票のスケジュールで衆議院選挙を行いました。
なぜ、衆議院が解散されると総選挙が行われるようになるのでしょうか。
衆議院の解散と総選挙の関係も含め、日本の選挙は公職選挙法に定められたルールに従って行われています。
そこで本日は、日本の選挙のルールを定める公職選挙法(昭和25年法律第100号)について解説します。
日本の選挙のルールについて定めた公職選挙法とはどんな法律?
公職選挙法とは、どのようなことを定めた法律なのでしょうか。
日本の選挙制度と公職選挙法の内容についてご説明します。
日本の選挙と間接民主主義
国民は主権者であり、国の政治は国民の意思を反映したものであることが求められます。しかしながら、国民全員が政治に関わるすべてのことに、直接的に関わり、具体的な方策を決めていくことは膨大な時間と手間がかかることになります。
そのため、国民が直接政治を行うことは現実的ではありません。
そこで、日本では自分の考えに近い人を選挙によって選び、選挙によって選ばれた代表者が国政を行う方法をとっています。
国民は代表者を通じて政治に参加しており、このような方法は代議制と呼ばれ「間接民主主義」とも呼ばれています。
公職選挙法と選挙制度の基本原則
選挙は、国民の意見を反映させる代表者を選ぶものです。
したがって、優れた政治を行うことができる代表者を公正な選挙で選ぶことができるような仕組みが必要となります。
日本の現在の選挙制度は、優れた代表者を選出するために以下のような3つの原則が確立されています。
平等選挙の原則
納税要件や男女の別に関わらず、満18歳以上の国民が平等に選挙権を持つことが認められています。
投票自由の原則
選挙権を持つすべての人は、自分の意思に従い、自分が最も信頼できると考える人に自由に投票することができます。
そして、誰に投票したのかという秘密は守られ、投票したことに対して誰からも責められることはないことが保障されています。
選挙公正の原則
平等な選挙権が与えられ、自分の意思による自由な投票が保障されても、選挙の際に不正が行われるようなことがあっては、国民の意見を反映した優れた代表者を選ぶことはできません。
したがって、選挙は公正に行われるものでなければなりません。
公職選挙法(昭和25年4月15日法律第100号)は、これらの原則の下、公正で平等な選挙を行うことを目的に1950年に制定された法律です。
公職選挙法の内容
公職選挙法では、公明かつ適正な選挙が行われるために、議員の定数や選挙を管理する選挙管理委員会の職務権限、投票や開票の際の管理者、選挙運動の期間とその方法、不在時の投票方法などについての細かなルールが定められています。
そして、正しい選挙を行うためにさまざまな行為に対する規制も設けられており、この規制に違反した場合には罰則が適用される可能性があります。
公職選挙法で主に定められている規制には、以下のようなものがあります。
選挙運動期間に関する規制
選挙運動ができる期間は、立候補の届け出が受理された日から選挙期日の前日の午後12時までと定められています。ただし、街頭演説や車に乗って候補者名を連呼するような行為は、その期間内であっても午前8時から午後8時までの間に行うこととされています。
選挙事務所に関する規制
候補者は原則として選挙事務所を1か所に限り、設置することができます。衆議院、参議院、知事の選挙では選挙管理委員が交付した標札を掲げなければならないことが定められています。
また、休憩所や連絡所などを設けることは禁止されています。
戸別訪問に関する規制
戸別に訪問をする行為は、全面的に禁止されています。特定の候補者に投票を依頼すること、特定の候補者への投票を控えるように依頼すること、演説会場を知らせることなど、個人宅や会社などを戸別に訪問することは違反行為となります。
飲食物の提供に関する規制
原則として選挙運動に関して、湯茶やお茶うけ程度のものを除いて飲食物を提供することは禁止されています。したがって、選挙事務所内で訪問者に酒や食事をふるまうことや弁当を提供することも禁じられています。
署名活動に関する規制
選挙運動中は、投票を得る目的や投票を得させない目的をもって署名活動をすることは禁止されています。
文書図画に関する規制
<頒布できるものとその頒布方法>
選挙運動のために頒布することができる文書図画は、選挙運動用の通常ハガキ、ビラ、パンフレット、書籍(マニフェスト)に限られています。頒布できる通常ハガキやビラの枚数、 ビラの大きさなども選挙ごとに細かく規定されています。
また、ハガキは必ず郵便局の窓口に差し出すことが決められており、ビラに関しは、新聞折り込み、選挙事務所内における頒布、演説会の会場内または街頭演説の場所における頒布のみに頒布方法が決められています。したがって、選挙運動のビラを街中で配ることや郵便受けにビラを入れることなどは違反行為となります。
<掲示できるもの>
選挙運動で掲示することができる文書図画は以下のように規定されており、掲示できる数や大きさ、掲示場所、使用方法などについても制限があります。
・選挙事務所を表示するためのポスター、立札、ちょうちん及び看板の類
・選挙運動用自動車に取り付けるポスター、立札、ちょうちん及び看板の類
・候補者が使用するたすき、胸章、腕章の類
・演説会場において開催中使用するポスター、立札、ちょうちん及び看板の類
・個人演説会告知用ポスター(衆議院(小選挙区)、参議院(選挙区)、知事の選挙に限る。)
・選挙運動用ポスター
インターネットを利用した活動に関する規制
2013年に行われた公職選挙法の改正に伴い、インターネットを利用した選挙運動が一部解禁されました。それにより、メールアドレス等の連絡先を表示することでホームページやブログ、SNS、動画共有サイトなどで選挙運動ができるようになりました。ただし、電子メールで選挙運動に関わる文書図画を頒布することができるのは候補者と政党のみに限られ、送信先も予め送信に同意している人に限られています。
演説に関する規制
<街頭演説の場合>
午前8時から午後8時までの間に選挙管理委員会が交付した標旗を掲げることで、街頭演説を行うことができます。ただし、その際の運動員の数は15人以内と制限されています。また、選挙管理委員会が交付する腕章をつけることが求められています。
<演説会の場合>
候補者が開催する個人演説会、衆議院小選挙区選挙の候補者届出政党が開催する政党演説会、衆議院比例代表選挙の衆議院名簿届出政党等が開催する政党等演説会においてのみ、選挙運動のための演説会を行うことができます。
演説会の回数に制限はなく、公民館等の公営の施設で開催するときにはその2日前までに選挙管理委員会への届け出が必要ですが、会場が公営の施設でない場合には届け出の必要はありません。
寄付に関する規制
<立候補者や現職の政治家による寄付>
選挙区内にいる人に対し、候補者や政治家本人が自ら出席する結婚披露宴における祝儀と候補者や政治家本人が自ら出席する通夜・葬儀における香典以外のものに関しての寄付行為は禁止されており、違反があった場合は処罰の対象となります。候補者や政治家以外の人が候補者・政治家の名義で選挙区間にいる人に寄付を行うことも原則として禁止です。
<後援会による寄付>
後援会などの後援団体が選挙区内の人に寄付をすることも禁止されています。個人への寄付だけでなく、地域の祭りなどへ寄付をすること、開店祝いなどで花輪を贈ること、地域イベントに差し入れを行うことなども禁じられています。
その他の規制等、公職選挙法の詳細については、こちらをご確認ください。
参照:公職選挙法
衆議院選挙は「解散から40日以内」に実施
公職選挙法では、上で紹介したような選挙運動における規制だけでなく、衆議院が解散された場合には、解散から40日以内に総選挙を行うことも定められています。
そして、総選挙の期日は少なくとも12日前には公示しなければならないことが明記されています。
岸田総理大臣が衆議院の解散を10月14日に行い、10月19日に衆院選の公示、10月31日に投開票を行うスケジュールを見てみると、選挙が行われる31日の12日前がちょうど10月19日の公示予定の日となっているのが分かります。
また、公職選挙法では衆議院議員の任期満了に伴う総選挙は、議員の任期が終わる日よりも30日以内に行うことが示されています。衆議院議員の任期は4年であり、今回は10月21日に任期が満了となります。
しかしながら、2021年は自民党総裁選の実施や臨時国会の召集などがあったため、衆議院議員選挙の投開票が任期である10月21日を超えることとなりました。
公職選挙法を違反すると一般有権者でも逮捕される?
公職選挙法では、選挙運動に関する多くの規制を定めています。
前項で紹介したような規制に反した候補者や政治家は、逮捕され処罰を受ける可能性があります。
では、一般の有権者でも公職選挙法に違反する場合はあるのでしょうか。
また、違反した場合には逮捕される可能性もあるのでしょうか。
一般の有権者が公職選挙法に違反するケース
候補者でなくとも特定の候補者を支持する一般有権者が公職選挙法に違反する例としては下記のようなケースが考えられます。
買収や利害誘導罪に該当するケース
特定の候補者に投票させるために金品を渡したり、接待を行ったりすることは禁じられています。また、反対に特定の候補者に投票させないために金品の譲渡や接待を行うことも禁止です。
当選した場合には金品を渡すといった約束や、当選した場合には仕事上の便宜を図るといった約束も禁止となります。
寄付を要求するケース
有権者が候補者に寄付をする行為も禁止されていますが、反対に有権者が候補者に対し、選挙区内にいる人への寄付を勧誘したり、要求したりすることも禁止されています。
飲食物を提供するケース
候補者が選挙運動に関して飲食物を提供することは禁止されていますが、有権者も候補者に飲食物を提供してはいけません。したがって、陣中見舞いとして候補者に酒を贈る行為は違反行為となります。
戸別訪問により投票を依頼するケース
選挙区内にいる人を候補者が戸別に訪問することは禁止されています。同様に、候補者本人でなくとも選挙の投票依頼を目的に戸別に個人宅や会社などを訪問することは違反行為となります。
選挙の自由を妨害するような行為に該当するケース
選挙妨害を目的に候補者に暴行もしくは威力を与える行為、演説や集会を妨害する行為、ポスターなどを破いたり捨てたりする行為などをした場合は、公職選挙法で定められている選挙の自由妨害罪に該当する場合があります。
公職選挙法に違反した場合は?
仮に、違反行為を犯した場合は、公職選挙法違反の容疑で逮捕されることとなります。
逮捕後は、警察官による取り調べを受け、検察官による取り調べが必要だと判断された場合には検察に書類送検されます。
検察では検察官による取り調べが行われ、引き続き身柄の勾留が必要だと判断された場合には、裁判官に勾留請求が行われます。勾留が決定した場合は原則として10日間、最大で20日間勾留され、取り調べを受けることとなります。
その上で検察官が起訴・不起訴の判断を行い、起訴された場合には、刑事裁判の中で有罪か無罪かが決定されることとなります。
警察官による取り調べによって検察への書類送検が不要と判断された場合には、勾留請求をされることなく釈放されます。
また、検察官が裁判官に勾留請求を行った場合でも裁判官により勾留が却下された場合や取り調べにより不起訴処分になった場合は釈放されることとなります。
まとめ
公職選挙法は、日本における選挙のルールを細かく定めた法律です。
平等で公正な選挙を行うために、公職選挙法では選挙運動中の行為についてもさまざまな規制を設けています。公職選挙法の中では、選挙に立候補する候補者側の立場における禁止行為だけでなく、有権者側にも禁じられている事項が含められています。
有権者が公職選挙法に違反した場合は、公職選挙法違反容疑で逮捕される事態となります。このような事態に巻き込まれることのないよう、有権者側も公職選挙法の違反行為をしっかりと認識しておくことが大切です。