ノウハウ フリーランス契約時に確認すべき法律・契約項目を一挙解説!
更新日:2024年10月17日
投稿日:2021年10月25日
フリーランス契約時に確認すべき法律・契約項目を一挙解説!
2019年4月に働き方改革関連法が施行され、副業、兼業が解禁されたこともあり、より自由な働き方を求めてフリーランスを目指す人々、また雇用する企業も増えてきています。
フリーランスを雇用するにあたって企業が確認すべき法令や、契約締結時に留意すべき点について改めてまとめました。
フリーランスと業務委託について
まず、フリーランスの雇用に関して法令などを確認する前に、「フリーランス」がどのような方を指しているのかをあらためて整理します。
また、「フリーランス」と合わせて使われ、同じような言葉として解釈される「業務委託」というキーワードについても解説します。
フリーランスとは
フリーランスとは、企業に属さずに業務を行う人の呼称です。
自分の名前で仕事をしたい人のためのインフラ&コミュニティ、プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会では、フリーランスを「特定の 企業や団体、組織に専従しない独立した形態で、自身の専門知 識やスキルを提供して対価を得る人」と定義をしています。
安倍内閣の「働き方改革」でクローズアップされるようになった特定雇用に縛られない「フリーランス」という働き方。2020年5月に内閣官房日本経済再生総合事務局が発表した「フリーランス実態調査結果」によると、日本のフリーランス人口は約462万人とされています。
平成30年1月に副業・兼業の促進に関するガイドラインが策定されたこともあり、近年では、本業は企業に属しながら、副業、兼業として別の企業や団体で業務を行うフリーランスも登場。フリーランスとしての働き方は多様化しています。
出典:フリーランス協会 よくある質問
業務委託とは
一般的に、業務委託は企業が業務を依頼する際に締結する「業務委託契約」という契約を締結している「人」を表します。
フリーランスが企業から業務を受ける際はこの「業務委託契約」を結ぶことになりますので「フリーランス」のことを「業務委託」と呼ぶことがあります。
また、この「業務委託契約」、実は法律用語ではありません。
業務委託締結時に交わす「業務委託契約書」は、法律(民法)上「請負」「委任」「準委任」のいずれかに該当する内容となっています。
ここで、「請負」「委任」「準委任」の内容について民法を確認してみましょう。
請負
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。(民法第632条)
委任
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手型がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。(民法第643条)
準委任
この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。(民法第656条)
請負・委任・準委任契約の違い
請負契約と委任・準委任契約は具体的に、「成果物が存在するか否か」に違いがあります。
建物の設計、旅客の運搬など有形・無形に限らず仕事の成果物がある場合は「請負契約」、コンサルティング業務など業務の遂行が目的となっており、成果物が必ずしも必要ではないものは「準委任契約」を選択します。(法律行為を委託する場合は「委任契約」)
詳しくは、請負契約とは?委任・業務委託との違いや、契約書に盛り込むべき内容 にて詳しく解説していますのでこちらご覧ください。
フリーランス契約時に留意すべき法律
実際に、フリーランスと業務委託契約を締結する際に、留意すべき法律はどのようなものがあるのでしょうか。
これについては、2021年3月に政府より発表されたガイドラインにて明らかにされています。
政府がガイドラインにてフリーランスと「独占禁止法」「労働法」との関係を整理
国の成長戦略もあり、フリーランスワーカーが増加傾向になってきた一方で、コロナウイルスの蔓延による生活様式の変化から、フリーランスは業種によって急な発注のキャンセル等に見舞われる自体になりました。
このような自体を受けて、2020年7月に発表された成長戦略実行計画の一つには「フリーランスの環境整備」が盛り込まれ、2021年3月にはフリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドラインが発表されました。
このガイドラインでは、改めて「独占禁止法」「労働法」とフリーランスの関係について整理するととともに、フリーランスと企業が取引を行う上で留意すべきことを提示しています。
次章でこのガイドラインで触れられている「独占禁止法」や「労働法」とフリーランスの関係について詳しく紹介します。
独占禁止法とフリーランスの関係
独占禁止法とは
独占禁止法は、公正取引委員会によると「私的独占,不当な取引制限(カルテル,入札談合等),不公正な取引方法などの行為を規制」する法律と説明されています。
つまり、公正で自由な取引を企業が行うことを目的とした法律です。公正かつ自由な競争が促進されることで、「事業活動の活発化」や「雇用の促進」が進み、日本国経済の発展につなげるために制定されています。
出典:公正取引委員会「独占禁止法の規制内容」
独占禁止法をフリーランスに適用するという議論
「独占禁止法」によってフリーランスの雇用に関する問題を解決し、フリーランスの人材獲得を巡る「競争」を公正かつ自由に促進するとい う観点から公正取引委員会は有識者会議を実施しました。
また、この議論をまとめた報告書を平成30年2月に発表し、具体的に以下の内容の禁止を改めて明示しました。
1)発注者が共同して人材獲得競争を制限する行為
2)取引の相手方の利益を不当に奪い競争を妨げる行為(優位的地位の濫用行為)
3)取引の相手方を欺き、自らと取引させることで競争を妨げる行為(競争手段の 【不公正さ 】)
4)他の発注者が役務提供者を確保できなくさせる行為
5)競争政策上望ましくない行為
その後、令和3年3月に出されたフリーランスとして安心して働ける環境を 整備するためのガイドラインで「独占禁止法は、取引の発注者が事業者であれば、相手方が個人の場合でも適用されることから、事業者とフリーランス全般との取引に適用される。」と明記、「独占禁止法じゃフリーランスに適用すると明確に定義しています。
出典:公正取引委員会「人材と競争政策に 関する検討会」報告書のポイント
独占禁止法によりフリーランスの雇用において企業が禁止されること
「独占禁止法」により企業は具体的に「報酬の支払い遅延」「一方的な発注取り消し」「やり直しの要請」「取引条件の 一方的な設定・変更・実施」などを行うと法律違反となります。
例えば、フリーランスに対して企業の経営悪化に伴い、3ヶ月発注予定で合意していたものを1ヶ月に合意なしに変更する、または契約内容とは異なる業務を依頼するなどは、ガイドラインによると法的に問題となる行動に値する可能性があります。
労働法とフリーランスの関係
労働法とは
労働法とは労働問題に関連する法律全体の総称です。労働関係法令とも呼ばれます。具体的には、「労働基準法」「労働組合法」「男女雇用機会均等法」等が該当します。
労働法が定義する「労働者」とは
労働法が適用される「労働者」については、労働関係法令でそれぞれ異なる定義がされています。
例えば、労働基準法では「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者 で、賃金を支払われる者(第9条)」、労働組合法では「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる 収入によって生活する者(第3条)」と定義されています。
フリーランスは労働法に関係するのか
政府が発表したガイドラインによるとフリーランスであってもそれぞれの法案で定められた労働者と認められれば労働法が適用される場合があります。
つまり、契約の形式や名称にかかわらず(業務委託契約を締結していても)、個々の働き方の実態に基づいて、「労働者」かどうか判断されます。
労働法によりフリーランスの雇用において企業が禁止されること
働き方の実態に基づき「労働者」とみなされれば、各労働法が適用されます。
例えば、労働基準法で定められた労働者とみなされた場合は労働時間やルールなどの保護を受けることが認められますし、労働組合法で定められた労働者とみなされた場合は発注者による団体交渉拒否を禁止できます。
出典:フリーランスとして安心して働ける環境を 整備するためのガイドライン
政府によるフリーランスのセーフティネット整備の動き
これまでの法令との関係性を明らかにするガイドラインを整えるだけではなく、政府はフリーランスを守るセーフティネット についても検討を始めています。
具体的には、令和3年6月18日に、成長戦略の実行計画としてフリーランスのセーフティネット整備が閣議決定されました。
公表されている「経済財政運営と改革の基本方針2021 について 」という資料では
「非正規雇用労働者等やフリーランスといった経済・雇用情勢の影響を特に受けやすい方へのセーフティネットについて、生活困窮者自立支援制度や空き家等を活用した住宅支援の強化等による 住まいのセーフティネットの強化を含めその在り方を検討するとともに、被用者保険の更 なる適用拡大及び労災保険の特別加入の拡大を着実に推進する。」
と明記されており、今後、フリーランスのセーフティネット について国が整備を進める方針であることがわかります。
出典:
労災保険特別加入制度に係る政府の閣議決定文書
経済財政運営と改革の基本方針2021(内閣府)
労災保険特別加入制度に一部のフリーランスを追加
その1つの動きとして、まずは労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)への特別加入制度対象として一部のフリーランスが追加されました。(2021年10月22日現在)
労働者災害補償保険法(以後労災保険と記載)とは、労働者が通勤中や勤務中の災害により事故にあい、負傷、死亡した際に保険金を支払う制度です。保険料は企業が負担するため、従業員の負担はありません。
ここで定義される「労働者」は「職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者」であるとされているため、企業と直接雇用の関係のある者が原則としては対象となります。
法令:労働者災害補償保険法
特別加入制度への対象となるフリーランス
しかし企業とは直接雇用の関係はないものの、業務の実態や災害の発生状況からみて労働者に準じて保護することがふさわしいと見なされる職業に就いている方、すなわち個人タクシーの運転手、指定農作業者などはこれまで特別加入制度の対象として範囲を広げて適用対象とされてきました。
そして、令和3年には企業と直接雇用関係にないフリーランスも「特別加入制度」の対象として追加されました。対象となる業種は以下です。(2021年10月22日現在)
・ 芸能従事者 放送番組(広告放送を含む。)
・映画、劇場、イベント会場、楽屋等において演技、舞踊、音楽、演芸その他の芸能実演や 演出の提供、若しくは芸能製作に従事する者
・ アニメーション制作従事者
・ 柔道整復師
・ 創業支援等措置に基づく事業を行う高年齢者
・ 自転車配達員
・ ITフリーランス
厚生労働省は2021年8月にも「労災保険制度における特別加入制度の対象範囲の拡大」について意見募集を行っており、今後対象範囲の拡大を検討していると想定されます。
保険料の支払いは?
企業に雇用されている者の労災の保険料は企業負担となっていますが、企業に属さないフリーランスの場合、保険料の支払いは個人での支払いとなります。
また、この保険に加入するには、特別加入団体と認定された団体に所属する必要があります。
今後最新の情報は厚生労働省のwebサイトなどでご確認をお願いいたします。
例えばITフリーランスについては、「ITフリーランスの方へ」という内容で厚生労働省からパンフレットが公開されています。
出典:
成長戦略実行計画案
企業がフリーランスと契約を締結する際気をつけるべきポイント
企業がフリーランスと業務委託契約を締結する際には「偽装請負」とみなされ罰則対象となるリスクがある点に留意する必要があります。
偽装請負とは実際は雇用契約と同等の環境、待遇を行っているものの、社会保険料や労働保料の支払いを免れるためにあえて、「請負契約」など業務委託契約を締結する行為です。
故意的に偽装請負の形式を取るのは論外ですが、法律を正しく理解せず罰則対象となるのを防ぐために、フリーランスとの契約と、他雇用者との違いを正しく理解する必要があります。
例えば、気をつけるポイントの1つに「指揮命令権」があります。
指揮命令権とは、労働者に対して、業務上の指示を行う権限のことです。雇用契約ではこの権利が発生し、業務委託ではこの権限がありません。そのため、フリーランスへ依頼する業務実態の中で、細かな作業についての指示や、実行管理を行うと偽装請負と判断される可能性があります。
厚生労働省から労働者派遣や請負にガイドラインも出ていますので、詳しくはこちらもご覧ください。
まとめ
今後ますます注目されるフリーランスの雇用ですが、契約関係を正しく確認した上で契約を締結することが必須です。
法律上の問題にならないように気をつけながら業務を外注し、会社全体の生産性を上げていきましょう。
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