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ノウハウ ESGの意味やSDGsとの違いとは? ESG投資の解説や企業事例を紹介

更新日:2024年10月17日

投稿日:2021年10月22日

ESGの意味やSDGsとの違いとは? ESG投資の解説や企業事例を紹介

ESGの意味やSDGsとの違いとは? ESG投資の解説や企業事例を紹介

気候変動をはじめとする環境問題や貧困などの社会問題が深刻化する中、「ESG」や「ESG投資」という概念が注目を集めています。

 

そこで本記事では、ESGの意味やSDGsなど類似概念との違い、ESG投資の概要やその種類について解説していきます。

 

 

ESGとは

まずは、「ESG」とはどのような概念なのかについて解説します。関連概念との区別も含めて見ていきましょう。

ESGの意味


ESGとは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」の頭文字をとった概念で、企業の持続可能性や倫理性、社会的影響を測るうえで中心となる要素のことです。これら3つの概念は、主に以下の事柄を指します。

・環境:二酸化炭素排出量の削減や廃棄物の削減といった自然環境保護
・社会:公正で健全な就労環境の整備やダイバーシティの推進
・ガバナンス:公正で透明性の高い経営の実践や積極的な情報開示 など

ここに見られるように、ESGは必ずしも経済的利益を重視したものではありませんが、それに取り組むことは企業にとって非常に重要です。というのも今日、多くの投資会社は、これらのESG要素に着目し、企業を評価する際の一指標としているからです。企業倫理が強く問われる現在、短期的な利益追求のみに注力して環境・社会問題を軽視する企業は、結果的に時代の変化に取り残され、経営に大きなダメージを負いかねません。それゆえ今では、ESG関連情報を開示する企業も増えてきています。

多くの企業が責任を持ってビジネスを行い、社会的問題の解決を追求すれば、気候危機から貧困、飢餓、不公正な雇用・取引関係に至るまで、社会のさまざまな問題を改善することが可能です。企業によるこのようなイノベーションは成長市場であり、企業が責任ある行動を取り、環境や社会への前向きな取り組みを推進することで、持続可能な社会の実現はより近づきます。

SDGsとの違い


ESGと類似した概念として、「SDGs」が挙げられます。これは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、すべての人にとってよりよい未来、より持続可能な未来を実現するための目標です。SDGsは貧困・格差・環境問題の解決など、17の目標と169のターゲットで構成されています。SDGsは2015年の国連サミットにおいて、すべての参加国によって採択され、2030年までにすべての国が取り組むべき行動指針として共有されました。

ESGとSDGsの違いとしては、ESGが企業や投資家に適用される指標であるのに対し、SDGsは国家や自治体を含むあらゆる組織・個人に適用されることが挙げられます。つまり、企業は自社のステークホルダーへの配慮をメインに据えてESGに取り組みますが、SDGsは、国家・世界規模で取り組まなければならない課題です。とはいえ、SDGsとESGは根底の部分で共通している点も多いため、多くの企業がESGを取り組むことは、結果としてSDGsで設定された目標とターゲットの達成にも寄与します。

CSRとの違い


「CSR」もESGの周辺概念のひとつです。これは「Corporate Social Responsibility」の略で、日本語では「企業の社会的責任」を意味します。

CSRは株主や顧客、従業員といったステークホルダーから自社を信頼してもらううえで非常に重要です。そのため、企業は安全で高品質な商品の提供や公正な取引、健全な就労環境、株主への説明義務の履行、あるいはボランティア活動への従事など、自社の社会的信用を高めるための数々の施策をビジネスに取り入れます。つまり、CSRは基本的に企業目線で大事な指標といえるでしょう。

対して、ESGは投資家目線も入り込んだ概念です。ESGに積極的な企業は社会的貢献度も高く、長期的視点に立ってビジネスプランを立てていることから信用しやすい、という投資家視線がESGの概念には混入されています。

SRIとの違い


「SRI」もESGとよく似た概念です。これは「Socially Responsible Investment」の略称で、日本語では「社会的責任投資」と訳されます。たとえば、ギャンブルなどの公共良俗に反する対象には投資しないなど、社会的倫理観を尊重した投資先選択を行うことがSRIです。1920年代にアメリカのキリスト教会が倫理的な観点から資産運用の投資先を厳選したことが、SRIの先駆けとされています。

SRIも基本的な意味合いではESGと共通する部分が多いですが、SRI投資は必ずしもESG(環境・社会・ガバナンス)の観点を有してはいません。他方でESG投資は、昨今の社会に存在し、企業が優先的に取り組むことが期待される問題を3つに収斂させた概念です。

また、SRIもESGもともに倫理性を重んじる概念ですが、後者の場合は「そうした倫理的な取り組みが結果として企業利益につながる」という財務的な観点も含まれています。

ESG注目の背景

続いては、ESGをより深く理解するため、ESGが注目されるようになった社会的背景などについて解説していきます。

国連を中心にESGへの危機感が年々高まる


ESGの概念が注目されるようになった背景には、経済発展と環境問題の悪化が負の比例関係を描いていたことが挙げられます。こうした問題に対する関心は、70年代にはすでに高まっており、国連などでもしばしば議論されていました。

こうして下地が整っていき2004年、「Who Cares Wins」という国連の報告書において、初めてESGという言葉が使われます。この報告書は、環境・社会・ガバナンスのESG要素を資本市場に組み込むことは、ビジネス上の意味があり、より良質で持続可能な市場と社会を創り出すことになると訴える革新的なものでした。

また、同時期に国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)も、ESG要素が企業の財務評価に関連することを示した報告書を作成しました。この2つの報告書は、2006年に国連が発表した「責任投資原則(Principles for Responsible Investment)」、通称「PRI」のバックボーンとなりました。

「責任投資原則」(PRI)を国連が提唱する


では、この「責任投資原則(PRI)」とは何なのでしょうか。PRIとは、「ESGへの配慮は投資の意思決定における重大要素であり、責任ある投資家はこれを考慮すべきである」という基本原則のことです。PRIは6つの原則から構成され、賛同する企業はこれに同意する必要があるとしています。その6原則を要約すると以下の通りです。

1.投資分析と意思決定プロセスにESG課題を組み込むこと
2.ESG課題をオーナーとしての方針と実践に積極的に取り入れること
3.投資先企業にESG課題に関する適切な情報開示を求めること
4.投資業界における本原則の受け入れと実施を促進すること
5.本原則の実施における効果を高めるために協働すること
6.本原則の実施に向けた活動と進捗状況を報告すること

このPRIには世界中で多くの機関投資家が署名しており、その署名数は2021年時点で遂に4,000を超えました。日本でも資産運用会社を中心に90社以上が賛同しており、関心の高まりが広まっています。
(参照元:https://www.esgtoday.com/pri-reaches-4000-signatories-as-interest-in-esg-investing-proliferates-across-sectors-and-regions/
(参照元:https://rief-jp.org/ct4/115253

世界で注目されるESG投資


このように、投資の際にESGを重視する潮流は世界的に高まっています。そこで続いては、ESG投資の意味と、具体的なESG投資の選定方法について解説していきます。

ESG投資の意味


まず「ESG投資」とは、「ESGに配慮した企業に対して投資を行うこと」をいいます。

先述のように、国連が音頭を取ってESGへの取り組みを推進する中、機関投資家もESG投資へ注目するようになりました。たとえば、2020年における世界のESG投資総額は全体で35兆3,000億ドルにのぼり、調査対象となった機関投資家の全運用資産(98兆4,000億ドル)の35.9%にも達することが報告されています。
(参照元:https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=39388

近年では日本国内においてもESG投資が進んでおり、2015年には日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がPRIに署名しました。金融庁を代表とする政府もESGへの積極的投資を推奨しており、これらの影響を受け、ESG投資の市場成長は次第に加速しています。ちなみに、ESG投資における投資方法はいくつもありますが、特に代表的なものとしては以下の7つが挙げられます。

1.ネガティブ・スクリーニング


「ネガティブ・スクリーニング」は、最初に行われたESG投資方法です。ネガティブ・スクリーニングは、ESG要素が同業他社に比べて低い企業ないし業界を見つけ、該当企業を投資対象から外すことを意味します。ここで避けられる企業の例としては、「二酸化炭素排出量が多い」など環境への配慮が乏しい企業や、「賃金の未払いがある」など労務環境の悪い企業が主に挙げられます。

2.国際規範スクリーニング


「国際規範スクリーニング」とは、環境破壊や人権侵害、児童労働などに関する国際的な規範をもとに業界横断的な調査を行い、最低限の基準を満たしていない企業の株や債券を投資対象から除外する手法です。参考にされる国際規範は、国際労働機関(ILO)や経済協力開発機構(OECD)のものなど、機関投資家によってさまざまです。一種類の規範だけでなく、複数の規範を用いて総合的なESGポイントを算出する場合もあります。

3.ポジティブ・スクリーニング


「ポジティブ・スクリーニング」とは、ネガティブ・スクリーニングの裏返しであり、同業他社と比較してESG要素の高い企業を投資対象に採用する方法です。多くの投資家は、ネガティブ・スクリーニングとポジティブ・スクリーニングを表裏一体のものと考え、同時に実施しています。

4.サスティナビリティ・テーマ投資


「サスティナビリティ・テーマ投資」は、その名の通り、社会的または環境的な課題への解決策を提供し、社会の持続可能性に貢献している企業に投資することです。サスティナビリティ・テーマとしては、主に「エコファンド」「水ファンド」「再生可能エネルギー投資ファンド」などが挙げられます。一般的には環境をテーマとしている場合が多いですが、健康などの社会的課題も対象とすることもあります。

5.インパクト・コミュニティ投資


「インパクト・コミュニティ投資」とは、社会的影響(インパクト)や環境に対する影響が大きな技術・サービスなどを行う企業を重視する投資手法です。インパクト・コミュニティ投資の場合、比較的小規模かつ非上場企業への投資が多く、ベンチャーキャピタルがファンド運用を行っているケースも多く見られます。

6.ESGインテグレーション


「インテグレーション」とは「統合」を意味する英単語です。そして「ESGインテグレーション」では、投資分析や投資判断においてESGだけでなく、財務情報など既存の判断基準も含め、すべての重要な要素を統合的に折り込みます。ESGインテグレーションにおいて、ESGはさまざまな投資判断基準における一要素として位置づけられ、それをどの程度重視するかは投資家に依存します。現在、特に注目を集め成長している投資方法です。

7.エンゲージメント/議決権行使


「エンゲージメント」や「議決権行使」は、投資先との関わり方に注目したESG投資手法です。エンゲージメントとは、株主としての立場から企業のESGに積極的に働きかけることを意味します。また、議決権行使は株主総会で議決権を行使し、企業の意思決定に対して力を行使することを指します。単に投資するだけでなく、企業のESG活動に対して直接影響力を行使したい場合に有用な方法です。

企業がESGに取り組むメリット


このようにESG投資が注目を集める中、企業がESGに取り組むことは、大きな社会貢献になるだけでなく、投資者を募るうえで非常に有効な手段になり得ます。昨今の投資家は、倫理的かつ持続可能な方法で積極的に統治・運営している企業に対し、大量の資金を投資する傾向が強くなっているのです。ESG投資家は、目先の業績よりも企業の倫理的価値などに注目するため、会社に対するよき理解者となり、長期的な関係を築ける可能性も高いでしょう。

また、労働条件の改善や組織における多様性の向上、地域社会への貢献、持続可能な環境政策などに取り組むことは、会社のブランド力を上げ、顧客体験の向上や従業員の離職率低下、外部の有能人材の雇用などにもつながります。つまり、ESGに取り組むことは、社会貢献とともに持続可能な企業への成長をも促すわけです。

企業がESGに対応する方法


では、企業がESGに対応するためには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。以下では、企業がESGに対応する方法をご紹介します。

どのような取り組みが期待されているのかを知る


原理的にESGへの取り組みは、企業の独りよがりなものであってはいけません。それゆえESGに対応するためには、まず株主や従業員、顧客などのステークホルダーがESGに関して、自社に何を求めているかを十分に考えることが大切です。ステークホルダーの理解・共感を得られやすい取り組みをすることで、出資者の増加や会社のブランド力強化といった効果も、より大きなものが見込めます。

ガバナンスと情報開示を徹底し、会社の透明性を高める


ESG投資の「G」にも含まれているように、ガバナンスの強化や情報開示を徹底し、会社の透明性を高めることも重要です。たとえば、役員の男女比を是正するなど、ダイバーシティの促進を行うことも効果的です。ESGに取り組むうえでは、悪しき慣習を排除し、社会に対して開かれた企業でなければなりません。

ESGにおける問題点


ESGには大きなメリットがある一方で、取り組みに際していくつか問題点もあります。下記の2点について、事前によく理解しておきましょう。

短い期間では取り組みの成果が判断しづらい


ESGにおける問題点のひとつとして、短い期間では取り組みの成果が判断しづらい点が挙げられます。ESGは、広義の意味ではSDGsと同じく中長期的な目標であるため、短期間ですぐに目標を達成できるわけではありません。それゆえ即効性を求める場合は、思ったほどの効果が現れない場合があることも留意しておく必要があります。

評価基準が分かりづらい


ESGにおけるもうひとつの問題点として、評価基準の分かりづらさも挙げられます。ESGは「環境」「社会」「ガバナンス」の3つの課題から構成されていますが、それぞれの内部にはさらに多くの課題が含まれています。そのため、ESGの評価基準も自然と乱立してしまいがちで、調査機関によって大きく左右されます。

企業の取り組み事例


昨今、日本国内でもESGに精力的に取り組む企業が増えています。そこで以下では、ESGに取り組む企業の具体的事例についてご紹介します。

その1:CO2排出量実質ゼロを目指すKDDI


大手電気通信事業者のKDDIは、「KDDI GREEN PLAN 2017-2030」および「KDDI Sustainable Action」を策定し、2050年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにする目標達成に向けて取り組んでいます。また、同社は女性の活躍も強力に推進しており、出産・育児後のキャリア支援や女性リーダーの育成など、ジェンダー平等を目指しています。

東洋経済新報社による「『ESGに優れた企業』ランキング上位200」においても、KDDIは第5位にランクインするなど高く評価されています。
(参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/381386?page=3

その2:従業員の人権・労務管理に注力するキヤノン


大手電気機器メーカーのキヤノンも、ESGに積極的に取り組む企業のひとつです。同社は1988年から企業理念として「共生」を掲げ、社会的な責務を積極的に担うことを宣言しました。とりわけ従業員の人権・労務管理に力を入れており、基本的人権の尊重やあらゆる差別の禁止、ダイバーシティの推進、従業員への適切な賃金支払い、過重労働防止などに取り組むことを明言しています。

また執行役員制度を導入し、外国人執行役員や女性執行役員の登用をはじめ、独立社外役員の独立性判断基準の制定など、自社のガバナンス強化にも注力しています。

その3:サスティナビリティへ貢献する花王


化粧品などを扱う大手化学品会社の花王も、ESGに積極的に取り組んでいます。同社は専門のESG部門や員会を設置し、ESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を推進しています。たとえば、「エアインフィルムボトル」と呼ばれる新型容器を使用し、プラスチックの使用量を大幅に削減しています。また、他社や自治体との協働も精力的に行い、リサイクル活動の推進や、循環型社会に向けた新たな構想の試験的な取り組みも行っています。

消費者・顧客の立場に立った「よきモノづくり」を行い、持続可能な社会の実現に尽力する花王の取り組みは高く評価され、環境省主催の「ESGファイナンス・アワード・ジャパン」にて受賞も果たしています。

環境への配慮に、ペーパーレスで契約書を発行できるツールも


ここまでESGに関するさまざまな情報をお伝えしてきましたが、ESGはITツールの活用によっても実現可能です。一例としては、これまで紙で扱っていた資料を電子化し、ペーパーレス化することが挙げられます。

たとえば、ContractS株式会社が提供する「ContractS CLM」は、契約書の発行管理をデジタル上で行えるため、ペーパーレス化を推進できます。契約書のペーパーレス化は環境に優しいだけでなく、保管管理業務の効率性を高め、企業のガバナンス強化にも役立ちます。また、デジタル化やペーパーレス化はテレワークとの相性もよく、従業員の多様な働き方の実現にもつながります。

まとめ

ESGとは、企業の持続可能性や倫理、社会的影響を測るうえで重要な「環境」「社会」「ガバナンス」の3要素を指します。環境問題や社会問題などに対する危機意識が世界的に高まる中、ESGに取り組むことは企業の長期的視野や社会的責任感の高さを示すだけでなく、投資家をはじめとするステークホルダーからの注目や信頼の獲得、そしてブランド力の強化などにつながります。本記事を参考に、ぜひESGに積極的に取り組んでみてください。

 

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