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ノウハウ 無断公開された漫画のダウンロードも違法化! 著作権法改正のポイント

更新日:2024年10月31日

投稿日:2021年10月22日

無断公開された漫画のダウンロードも違法化! 著作権法改正のポイント

無断公開された漫画のダウンロードも違法化! 著作権法改正のポイント

2021年3月の著作権法改正に伴って、今後は違法な海賊版をダウンロードする行為も規制対象となりました。これに伴い、ネットコンテンツを使用するに当たっては、より一層の注意が求められます。そこで本記事では今回の著作権法の改正内容、刑事罰の要件、違法に当たらない例外行為などについて解説します。

 

 

改正された著作権法が2021年1月1日から施行


漫画やアニメといった文化コンテンツは、いまや日本が世界に誇る一大産業と言っても過言ではありません。しかし昨今、これらのコンテンツはネット上で多数違法コピーされており、甚大な著作権侵害が横行しています。今回、2021年1月1日に施行された著作権法改正において、政府は日本のコンテンツパワーやクリエイターの利益・権利を守るべく、海賊版と認識しながらダウンロードする行為も違法にしました。このダウンロード規制は基本的にあらゆる著作物に及び、併せて今までグレーゾーンとされていた、海賊版へのリンク先を集めたリーチサイトへの対策も強化されました。これらの対策によってクリエイターやコンテンツ産業を保護したうえで、健全な著作物利用を促進し、日本文化の発展を図るのが今回の改正の主眼です。

ダウンロード違法化の背景とは


法改正によってアップロードだけでなく、ダウンロードも違法とした背景にはどのような事情があるのでしょうか。以下では複数の要因を挙げていきます。

誰でも手軽にコンテンツを楽しめる環境となった


昨今、日本のスマホ普及率は全世帯で75.6%にも到達し、誰もが気軽にさまざまなコンテンツを楽しめるようになりました。私たちはSNSで気軽に情報をやりとりし、無料有料のプラットフォームを介して、多種多様で膨大な数のコンテンツへ簡単にアクセスできます。
(参照元;スマートフォンとタブレット型端末の普及率推移(最新)

しかしその反面、違法コンテンツへのアクセスも容易になってしまいました。私たちはいまや、違法なコンテンツを簡単に閲覧したり入手できたりしてしまいます。容易に違法コンテンツに触れられるため法の境界に関する私たちの認識もあいまいにし、モラルの低下や違法なサイト・コンテンツによる被害の拡大を引き起こしているのです。

海賊版の横行が深刻化


著作権を侵す違法コンテンツは一般に海賊版と言われています。昔は海賊版と言えば海外で違法コピーされたものを指していましたが、今では著作権法や個々の使用許諾条件を無視し、無断コピーされたコンテンツ全般を海賊版と呼ぶ場合が多いでしょう。海賊版の種類は広範に渡り、漫画や映画、音楽CDなどはもちろん、アニメやドラマなどのテレビ番組、ゲームソフトなども違法コピーが横行しています。そして海賊版は、今やインターネット上に蔓延し、不特定多数の人がダウンロードできる形で公開されています。そのように違法アップロードする者は、アフィリエイト収入などで懐を暖めているのです。

海賊版利用による影響


海賊版利用による被害は大変深刻です。まず、海賊版を無料で入手できることにより、消費者は正規の手段でコンテンツを買わなくなってしまいます。すると小売業はもちろん、出版社や各種のメディア業者、そして何よりも作品を作るクリエイターに正当な利益が入らなくなってしまうのです。これらの違法行為により、コンテンツ産業全体が衰退してしまうでしょう。実際の被害額も相当のもので、2019年における日本コンテンツの海賊版による被害額は、最大4,300億円程度にもなると推定されています。
(参照元:2019年・オンラインで流通する日本コンテンツの海賊版被害額を推計

また、海賊版を無料ダウンロードできると偽ってクレジットカード情報をユーザーに入力させ、後日架空請求する詐欺サイトなども登場しています。甘い誘惑に流され、カード情報を教えてしまったユーザーは、自分自身、海賊版サイトを利用していた負い目から警察にも相談できず、手痛い勉強料を払うことになってしまうわけです。さらに、海賊版のダウンロードを通してデバイスがマルウェアなどに感染するおそれも大きく、海賊版の被害は二重三重に広がっていると言えます。

有名な海賊版の事例


日本における海賊版の事例としては、膨大な数の漫画を違法アップロードしていた某巨大海賊版サイトの事件が有名です。この海賊版サイトでは、約3,000億円分もの出版物が無料で閲覧され、漫画家や出版社の収入・売上の減少を誘発したとされています。サイト運営者は著作権法違反の容疑で逮捕され、裁判では懲役3年、罰金1千万円、追徴金約6257万円の有罪判決を言い渡されました。問題のサイトも事件に合わせて閉鎖されましたが、この事件も全体でみれば、海賊版利用による被害の氷山の一角に過ぎません。海賊版サイトは未だネット上に無数に存在しており、多くの人が利用しているのです。

ダウンロード違法化の目的


著作権法改正により、従来のように違法アップロードだけを取り締まるだけでなく、海賊版のダウンロードも違法化した目的は何でしょうか。以下ではダウンロード違法化の目的について解説します。

違法ダウンロードを規制する理由


政府が違法ダウンロードを規制する理由は、海賊版をなくし、クリエイターの保護やコンテンツ産業の振興、文化の発展を促進することにあります。海賊版のダウンロードを違法化して規制するのも、手段のひとつです。

アップロードだけでなく、ダウンロードも規制する理由としては、需要と供給の関係から考えるとよいでしょう。海賊版がネット上に蔓延するのは、海賊版を見て楽しむ人がいるからです。アップロードする側からすればサイトで公開するだけで流入者が増え、広告収入などが得られるので、アップロードを止めることはまずないでしょう。つまり、海賊版をダウンロードする行為は、海賊版をアップロードする行為に理由ないしはメリットを与え、結果的にクリエイターなどに損害を与える違法行為に加担することになります。

もちろん、違法アップロードしている当人が最も悪いですが、彼らもその行為が利益に結び付かないなら、海賊版をアップロードすることはありません。それゆえ、「海賊版市場」を縮小し、最終的に撲滅するためには、アップロードとダウンロードの双方を取り締まる必要があるのです。

ダウンロード違法化のポイント


続いては、今回の法改正によるダウンロード違法化の要点を解説していきます。

ポイント1:海賊版と知りながらダウンロードする行為は違法


ポイント1は「海賊版と認識しているのにダウンロードするのは違法」とされたことです。これは私的利用目的であっても変わらないのでご注意ください。

ポイント2:規制対象がすべての著作物に拡大


ポイント2は、「違法ダウンロードの規制対象はあらゆる著作物が該当する」ことです。実は音楽や映像作品に関しては、従来から海賊版のダウンロードが規制対象になっていました。今回はこの規制範囲をさらに拡大し、漫画や小説、論文、ゲーム、コンピューターソフトなど、基本的に全ての著作物を含むことになりました。

ポイント3:違法行為は刑事責任に問われる可能性がある


ポイント3は、悪質な違法ダウンロードと認定された場合、「刑事罰を受けるおそれがある」ことです。この度の法改正で、違法ダウンロードは民事と刑事両方で扱われることになりました。

民事措置が適用される場合は、それが海賊版であるという認識を持ちながらダウンロードした場合です。刑事責任に問われる要件はこれよりさらに悪質で常習性がある場合、つまり「①正規版が有償販売されている」にも拘らず、「②継続的かつ反復的にダウンロードした」場合が当てはまります。

これらは双方とも親告罪で、刑事罰は2年以下の懲役か200万円以下の罰金、あるいはその両方が罰則です。民事では複製権侵害による不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)や、差止め等(著作権法112条)の対象となります。

違法対象にならない4つの例外行為


上記のように、海賊版のダウンロードは原則違法となりましたが、あまりに厳しく取り締まると、今度はユーザーが安心してネットで情報収集などができなくなるおそれがあります。そこで今回の法改正においては、そうした縛りを少し緩めるために、違法対象にならない例外行為が4つ設定されています。以下では、そのそれぞれの内容についてご紹介します。

スマホのスクリーンショット


違法対象にならない例外行為のひとつは、適法なコンテンツを保存するためにスクリーンショットを撮る際に、違法な画像が一部写り込んでしまったという場合です。この場合、法的責任を問われる心配はありません。ただし海賊版自体がメインの被写体である場合は,
その限りではないのでご注意ください。

「軽微」なダウンロードに該当するもの


「軽微」なダウンロードも違法対象にあたりません。ここで言う「軽微」とは、著作物全体に対するダウンロード部分の割合が少ないことを意味します。例えば、漫画の一コマ、長編小説の一ページなどがこれに当たります。逆にこの分量が数十ページなどに増えて、全体に占める比率が高くなってくると、軽微とみなされません。論文や小説などであれば、半分程度ダウンロードすれば例外から外れるでしょう。また、画質が粗く、鑑賞に堪えないと捉えられる場合も例外に当てはまります。

「二次創作・パロディ」のダウンロード


ファンの二次創作やパロディなどのダウンロードは、規制対象に含みません。ただし、「二次的著作物の著作権者自身がアップロードしたものをダウンロードする場合は」という条件が付きます。例えば二次創作を、作者以外の第三者が無断でどこかにアップロードし、それをダウンロードしてしまった場合は、法に抵触するおそれがあります。また、翻訳物のダウンロードはどんなものでも違反対象なので注意が必要です。

著作者の利益を不当に侵害しない「特別な事情」があるもの


最後の例外事項は、著作者の利益を不当に侵害しない「特別な事情」がある場合です。この例外措置の目的は、国民の正当な情報収集等への萎縮を招かないようにするためです。ただしこの場合、ダウンロードした人はその行為の正当性を証明しなければなりません。この要件に該当するか否かは、「該当の著作物の種類や価値に応じた保護の必要性の程度」及び「ダウンロード目的の妥当性」に依拠します。

つまり、違法アップロードされたコンテンツであっても、それが著作権を保護すべき理由の乏しいコンテンツであり、なおかつダウンロードが必要である妥当な事情があるならば、違法行為に問われません。政府広報オンラインではこの具体例として、「詐欺集団の作った詐欺マニュアル(著作物)が、被害者救済団体によって告発サイトに違法アップロードされていたので、それを自分や家族を守る目的でダウンロードした」という事例を挙げています。

この場合、詐欺集団の作った詐欺マニュアルは、経済的価値など保護の必要性は低く、ダウンロードの目的も詐欺被害から自分や家族を守るためという正当な理由があるため、不法行為とはみなされていません。いずれにせよ、「無料で著作物を楽しむため」など享楽的な目的によるダウンロードはここに該当しないのです。

海賊版か見分ける2種類のマーク


現在は正規の配信サイトでも、無料コンテンツの提供は珍しくないので、そうしたサイトと海賊版サイトの区別が分からなくなるかもしれません。その場合、漫画・書籍関連なら「ABJマーク」、音楽・映像なら「エルマーク」がサイトに掲載されているかを確認してください。もしこの目印となるマークがない場合、あるいはその他の要素からでも疑わしい部分が感じられた場合、そのサイトを利用するのはやめておきましょう。海賊版サイトはクリエイターや出版社等の権利を侵すだけでなく、ウイルスへの感染など、ダウンロードした人自身に損害を与えるリスクを常に秘めていることを忘れないようにご注意ください。

ContractS CLMで著作物の管理を


著作権法を遵守して著作物の適正な管理を行いたい企業には、ContractS株式会社が提供するITソリューション「ContractS CLM」の導入がおすすめです。ContractS CLMには相談機能があるので、著作物を管理する際、何か法的に不明な点があった場合も、スムーズに法務部へ確認をお願いしつつ作業がこなせるようになります。著作権法は社会情勢に合わせて今後も柔軟に変化していくことが予想されるので、専門部署と連携しながら著作物管理を行うようにご注意ください。

まとめ

2021年1月の著作権法改正の大きなポイントは、海賊版のアップロードだけでなく、そのダウンロードも違法な規制対象となった点です。海賊版の横行はコンテンツ産業全体に危機的な影響を与えることから、著作権法違反の罰則は重くなっており、悪質な場合は刑事責任が問われる場合も少なくありません。海賊版サイトの利用は、出版社やクリエイターの権利や正当な利益を損ねるだけでなく、マルウェアの感染などダウンロードした人にも損害を与えるリスクも充分に考えられます。違法対象にならない例外事項やABJマークなどの目印もありますが、疑わしいと感じた場合は安全第一にそのサイトの利用を避けることをおすすめします。

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