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ノウハウ 予防法務とは?臨床法務・戦略法務との違いや企業法務の業務内容を徹底解説

更新日:2024年10月17日

投稿日:2021年10月11日

予防法務とは?臨床法務・戦略法務との違いや企業法務の業務内容を徹底解説

予防法務とは?臨床法務・戦略法務との違いや企業法務の業務内容を徹底解説

企業がビジネスを営む上で、紛争やトラブルなどの訴訟を起こされることは、現在のようにSNSが普及している世の中にとってこれまで以上に避けるべき事態となっています。

今回は法務業務の中でも「予防法務」にフォーカスをあて、臨床法務や戦略法務との違い、具体例となる業務内容のおさらいや、今後予防法務に取り組む上で知っておきたいポイントについてまとめました。

 

 

予防法務とは?

予防法務とは、企業にとって経営危機でもあるトラブルを事前に防ぐための法務業務です。様々なレイヤーで多数の契約を結んでいたり、従業員を抱えている企業は、契約違反や情報漏洩など様々なリスクに晒されています。予防法務を行うことで、このようなリスクを未然に防ぐ、いわゆるリーガルリスク・マネジメントの観点で重要な考え方となっています。

リーガルリスク・マネジメント(法的リスク管理)

企業が事業を営む上では、法的リスクとなりうるケースが多数存在します。

例えばサービスや製品を販売する場合だけのケースでも、不適切な景品表示をしてしまう、労働者を過重労働させてしまうといった組織が関係する法律や締結している契約に違反し、そのペナルティーを追うリスク、知的財産権基づいた権利が主張できておらず、権利侵害を起こされてしまうリスク等、様々な法的リスクが生じる可能性があります。

 

このような法的リスクを適切に把握、管理していく考え方が「リーガルリスク・マネジメント」の考え方になります。

このリーガルリスクマネジメントについては、2020年5月に標準規格「ISO31022:2020 リスクマネジメント-リーガルリスクマネジメントのためのガイドライン」が発行され、同年、11月2日に日本語訳が公表されています。

 予防法務と臨床法務や戦略法務の違い

予防法務と共に語られることの多い用語として「臨床法務」「戦略法務」が挙げられますが、それぞれはどのような分類として考えれば良いでしょうか。

東京大学教授であられる唐津恵一さんの論説「企業内法曹」について一考には、以下のようにまとめられています。

臨床法務とは、予防法務との違い

臨床法務とは、実際に法的紛争やトラブルが発生した際にそれを解決するための法務を指します。

 

企業活動を行う以上、どれだけ注意を払っても他社から何らかの権利侵害を訴えられたり、逆に他社から自社の権利を侵害されたりするリスクは避けられません。

そうなれば法的紛争やトラブルに発展し、対応には多くの労力とコストがかかり、自社に大きな損害が生じる恐れがあります。

それを防ぐための措置(訴訟対応やクレーム対応など)を行う法務が、臨床法務です。

 

予防法務は「企業がトラブルに遭うことを事前に防ぐ」ことが目的であるのに対し、臨床法務は「既に発生した法的紛争やトラブルの対処」が目的という違いがあります。

予防法務 

紛争やトラブルの発生を未然に防止するための措置を講じるもの(契約作成・法務教育等)

戦略法務とは、予防法務との違い

戦略法務の明確な定義はありませんが、一般的には「法的知識・スキルを活かして経営戦略をサポートすること」を指します。

法に準拠した形で会社経営の施策を実行できるように、契約書類のチェックや関係官庁との調整などを行います。

 

M&Aなどの合併や取引の増加や市場のグローバル化が進み、複雑になる昨今のビジネス環境では、企業活動の中で法的リスクに直面する可能性も高まっています。

そのような環境下でも、成長に向けて挑戦していく自社を法的にサポートすることが戦略法務の役割です。

 

事業規模によっては重要性の高い役割ですが、戦略法務はあくまで経営戦略のサポートが目的であるためすべての企業に必須というわけではありません。

一方で予防法務は、企業活動の中で起こり得る法的リスクを回避するための役割であるため、どんな企業にも必要といえます。

 



企業法務では、この全ての業務で丁寧で確実な対応を必要とされており、またコスト管理が難しい性質があります。

 例えば、戦略法務を行うにあたっては法律で定められていることをもとにしながら法律がまだ予定していない新たな領域での新しい価値のロジックを検討していく必要があります。

このためには、時には法解釈の変更や法改正に向けた提案を社会に向けて行う必要もあり、多大な労力とがかかります。

 予防法務の重要性

近年、「日本経済を取り巻く環境変化」と「法務機能に対する時代の要請」から予防法務へのニーズが高まっています。

イノベーションの加速などによる新規事業創出の動き

第4次産業革命に伴い、IoT、ビッグデータ、人工知能(AI)等を活用した新たなサービスプラットフォームの産出などにより、産業構造や終業構造が大きく変化しています。

この新しい時代、ビジネスにおいて契約をどのように考えていくか、重要な課題となっています。

法務業務においても、このような新規ビジネスにおいて戦略的にどのようなルールを検討するか、体制を整えて検討する必要が出てきます。

 

新しいビジネスであるからこそリスクについては様々なケースを検討せねばならず、これまで以上に事業への理解と事業部担当者とのコミュニケーションの必要性が重要になっています。

グローバル化に伴う契約業務の必要性

日本は人口減少の社会問題に直面し、国内の需要減少が続いている中、日本企業にとってはグローバルなビジネス展開が必要不可欠となっています。

国を跨ぐ契約は国ごとのルールの細かな理解が必要不可欠である一方、十分なルールを理解できていないことで数千億円の制裁金を貸される事例を出てきています。

コンプライアンス・リスク回避へのニーズ拡大

コンプライアンスは英語を翻訳すると「法令遵守」という意味です。つまり、コンプライアンス・リスク回避とは法令を逸脱するリスクを防ぐことで、企業活動を円滑に行うことが可能です。

一方でこの「コンプライアンス」という言葉の意味する内容は、近年、法的な観点とあわせて、「社会的な観点」いわゆる一般の人々からみたルールに逸脱しないといった内容も含まれてきています。

 

近年ではSNSの普及もあるため、これまで以上に社会的観点を逸脱した行動・事案が世の中に拡散されてしまうことによる「レピュテーションが毀損されるリスク」を考えた企業ルールの設定が重要になっています。

 予防法務の具体例、事例

予防法務の具体例(具体的な業務内容)は「契約業務」「知的財産権保護」「労務管理・株主総会対策」などが該当します。それぞれについてどのような業務か見ていきましょう。

契約法務

契約を問題なく締結するために、契約書の作成、レビュー、交渉内容のチェック、締結や管理を行う作業があります。この契約のレビューでは、主に「自社に不利な条文が含まれていないか」「トラブル発生時に適用される条文が十分に含まれているか」などを確認します。


自社に不利な条文が含まれたまま放置すると、後でトラブルが発生した際に、自社への損害を最小限にするための対処が難しくなる恐れがあるからです。


また、トラブル発生時の対処をスムーズなものとするためには、「契約内容の不履行時の対応」や「損害賠償額」などについて、契約書作成の時点で整備しておくことも大切です。

 

2020年、2021年だけを見ても、法律の改正は様々な分野でありました。自社に該当する法律に改正がないか、またこの改正に準拠した契約内容になっているか、これまで以上に慎重に確認する必要があります。

 

他にも、契約書の管理規程を整えることも契約法務に含まれます。
具体的には、契約書の作成方法・整理や保管の方法などを定め、問い合わせやトラブルの発生時に契約書をすぐに確認できるようにします。

知的財産権保護

特許権、意匠権などが該当する知的財産権を保護する意味合いで、特許出願の出願戦略を検討したり、権利関係の管理等を行います。海外で製品やサービスを展開する場合は海外のルールを理解し業務を行う必要があるので、企業によってはスペシャリストを担当として配置をしている場合もあります。

 

自社の知的財産権を守るだけでなく、他者の知的財産権を侵害しないための対策も必要です。

第三者の権利の使用にあたって、使用許諾契約の締結や利用料の支払いを定めるといったことを行います。

労務管理

他企業の判例など社会的なニュースや、育児法の改正など法律の改正など、様々な情報にアンテナを張り、新しい会社規則の制定などの対応が必要となります。

労務管理を正しく行えないと、優秀な従業員の流出や、場合によっては訴訟などのリスクが出てくるからです。

予防法務における労務管理では、就業規則・雇用契約書・賃金制度などを正しく整備することが重要です。

 

また、自社は労務関連の法律を守っているか常時監視したり、ハラスメント・労務トラブルを防止するための措置を講じたりといったことも必要になります。

株主総会対策

企業によっては株主総会の対策を総務ではなく法務が行う場合があります。

株主総会は会社法によって開催が定められている一方で、誤りのない収集通知の作成や、内容が網羅された想定問答集の作成など、正確性が必要な業務が多数あります。

 

株主総会で適切かつ十分な説明を行えず株主側からの信頼を失えば、離反や訴訟により自社に大きな損害が及ぶリスクを伴います。

これを未然に防ぐためには、法務が持つ知識とスキルで株主総会の適切な運営をサポートすることが大切です。

 

2021年1月には株主総会資料をオンラインで提供が可能になったことによる変更など、ルールを変えなければならない場合があります。最新の関連法案状況などを提携する、または社内にいる弁護士や外部の弁護士事務所、司法書士と連携をしながらミスのない株主総会が開けるように、準備を進めていきましょう。

 

▶関連記事:株主総会とは?取締役会との違い・開催時期などをわかりやすく解説

社内規程の整備

会社の規模が大きくなるにつれて、社内規程を整備することの重要性も高まります。

役員や従業員の法律違反を防ぐために、法的観点から社内規程を定めておくことも予防法務の大切な仕事です。

 

代表的な規程としては、人事規程・取締役会規程・個人情報取扱規程・ハラスメント防止規程などがあります。

また、インターネットありきの生活スタイルへと変化している昨今においては、いわゆる「炎上」を防ぐためのソーシャルメディア利用規程も必要性が増しています。

予防法務に取り組む上で外部に相談する方法

社内のこれまでの実績や経験をもとに紛争やトラブルが起きないように検討する予防法務ですが、まだ知見があまりたまらずどのようにして良いかわからない、そもそも業務が手一杯で予防法務を可能にする体制の構築等に手が回らないといった課題に直面する場合があります。

その時は弁護士事務所への相談や、SaaSサービスの活用が御社の助けになるかもしれません。

弁護士事務所に相談

弁護士事務所には、紛争やトラブルが起きた時に依頼や相談をするイメージがありますが、そのような問題が起きる前の予防法務についてアドバイスをもらうことができます。

SaaSサービスを活用する

これまで見てきたように、法務業務には予防法務、臨床法務、戦略法務など様々な業務があり、また予防法務だけでも多くの対応が発生します。そのため、無駄やミスが起きぬようシステム化できる業務は対応し、少しでも負担を減らすことで、法務業務全体でかかるコストの現象や、精度向上につなげることができる可能性があります。
例えば、定期的に発生する契約業務(契約書の作成〜管理)については、SaaSサービスをうまく活用し、業務を最適化することも可能です。

 

契約マネジメントを実現するContractS CLMでは、契約作成から管理までまるっと1つのプロットフォーム で最適化を実現。ストレス低減を目指します。

予防法務に必要な法務(契約業務)の効率化

予防法務の範囲は広く、事業規模によっては通常法務も併せて実施するとなれば担当者への負担が増大します。

そのため、法務業務の効率化を進めて予防法務に注力できるように取り組むことが大切です。

 

ここでは、予防法務のひとつである契約業務を効率化させる方法について解説します。

契約業務を効率化させるポイント

契約業務の効率化を進めるにあたって押さえたいポイントは、以下の通りです。

契約業務全体のフローを効率化する

契約業務のフローには、契約書作成・審査・承認・締結・保管と様々なプロセスが含まれています。

まずはすべてのプロセスを洗い出して、それぞれに無駄となっていることがないかを確認しましょう。

 

契約業務の効率が低下している際に多い原因として、「各プロセスの進捗を社内で共有できない」「一連のフローの進め方が部門によって違う」など、統制が不十分ゆえの弊害が挙げられます。

 

契約業務のばらつきを解消する体制として契約管理システムを導入すれば、ひとつのシステム上で契約に関わる情報を共有できるため、大幅な効率アップにつながります。

契約の期限管理を整備する

契約書の期限管理を怠ると、更新期限の見落としで必要な契約が締結されない状態が生じたり、自社にとって不利な契約を見直す機会を逃したりといった弊害につながります。

契約件数が多ければ期限の把握が難しくなり、上記のリスクはさらに高まることでしょう。

 

とはいえ、紙の契約書を管理している場合やExcelによる管理台帳で期限情報を手入力していると、期限を確認するにも手間がかかります。

また、後者は入力ミスにより期限を誤認して、更新などの対応ができなくなる恐れもあります。

 

契約管理システムなら各契約の更新期限を通知してくれるため事前に自ら確認する必要がなく、効率的な期限管理を実現できます。

契約書の自社テンプレートを作る

事前に契約書のテンプレート・ひな形を作っておくことも、効率化に有効な手段です。

 

契約書を最初から作成するとなれば、必要な条項を確認して本文に落とし込むという作業が発生します。

これにより、契約書の1枚1枚を逐一慎重に審査しなければならず、業務全体のスピード感が失われます。

 

しかし契約の際に必要な基本の条項がすでに記載されているテンプレートを作っておけば、一定の品質を確保しつつ作成や審査の工数を削減することが可能です。

 

契約業務の工数が削減されれば取引開始までの時間短縮にもつながり、結果として自社の生産性が向上するという効果も現れます。

電子帳簿保存法に沿った体制を整備する

電子帳簿保存法は、国税関係の帳簿や取引関係書類(契約書や請求書など)などを電子保存する際の要件を定めた法律です。

 

管理の煩雑化や業務全体の効率低下を招く紙ベースの運用から脱却するには、電子帳簿保存法への理解とそれに準拠し得る体制を整える必要があります。

まずは電子帳簿保存法における対象書類の区分を整理し、区分ごとの保存要件を確認しましょう。

契約書の場合、電子帳簿保存法では「取引関係書類」か「電子取引」に該当し、タイムスタンプの付与や検索機能の確保といった要件が定められています。

 

契約管理システムによっては、電子帳簿保存法に準拠した形での保存が可能なサービスもあります。

より簡単にペーパーレス化を進めるなら、そのような契約管理システムを導入することもおすすめです。

まとめ

紛争やトラブルが実際に起きると、その対応に多大なコストが裂かれるだけではなく、企業の存在そのものを脅かすことにもなりかねません。

日頃より予防法務業務を確実に行い、トラブルが起きない対応策をしっかりと取れるようにしておきましょう。

 

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