組織の拡大を見据えた契約インフラの整備。事業部を巻き込み、契約管理の「脱・属人化」に成功。
TOPICS
・案件管理の属人化で起こりうるリスクの大きさを前職にて痛感
・法務部立ち上げの過程で感じた、アナログな契約管理からの脱却の必要性
導入のきっかけ
・様々な契約を一度にまとめて管理できるインフラとして機能していること
効果
・過去の契約情報の見える化で「2周目の契約が楽になった」という現場の声
・法務として現場社員を巻き込む貴重な経験に繋がった
・年に一度の「規約改正プロジェクト」にも応用し、労力の削減に効果あり
1991年の設立からこれまで、サッカーを国民的スポーツとして国内で普及させ、数々の熱狂的な試合を生み出してきたJリーグ様。近年では、動画配信サービスを活用した試合のライブ中継の開始や、「金J」と呼ばれる新しい観戦スタイルの提案など、デジタル化や国際化といったサッカー業界を取り巻く環境変化に柔軟に対応しながら、その絶大な人気を維持してきました。その輝かしい舞台裏では、持株会社制への移行や、全社横断型の総務/経理/人事部制の採用など、組織そのものを強くする様々な涙ぐましい努力も行われてきました。
今回、その様な”変化を常に歓迎する組織”において法律/契約面でのバックボーンを支えてきた、コンプライアンス・法務室 兼 組織開発本部 経営企画部の助川卓矢様に、Jリーグの事業ならではの契約に関する課題や、「ContractS CLM」を通してそれをどのように解決しているのかについて伺いました。
前職の法務組織で痛感した、「属人化」が起こしうるリスクの大きさ。
―長年、法務をご経験されてきたということですが、これまで契約業務とはどのように関わってこられましたか。
株式会社Jリーグ 助川様
助川様:私の法務としてのキャリアは、某レコード会社の著作権絡みの案件を扱う部署に入ったことが始まりでした。その頃は、まだ音楽配信サービスやアプリが当たり前ではなかったので、CDを買ったり借りたりして音楽を楽しむことが主流だった時代です。日々、新規で契約するアーティストのCDやDVD、アニメやゲームのキャラクターの商品化などの事業に関わる著作権処理を主に扱う業務を担っていました。10曲入りの1枚のCDを出すだけでも10社以上の関係各社とライセンス契約をする必要があることもあり、現場のプロデューサーと密な連携を取りながら慎重な管理を行っていました。
―そこで感じた課題は?
助川様:今でも強く印象に残っているのが、組織内での「引継ぎ」に関する課題感です。当時は、タスク管理ツールなどは世にほとんど出回っていなかったため、各案件担当者のステータス管理は全社員が使い慣れているエクセルでTo-Doリストを作る形で対応していました。しかし、エクセルは視認性が悪く、不便なのですよね。そもそも法務のタスクは内容が複雑ですし、タスクに紐付くファイルは個別で管理する必要があったので、画面を行き来するとどうしても抜け漏れや記入漏れが生じてしまうものなのです。
ある日、退職社員の過去の契約案件を調べる目的でエクセルを開いたところ、ステータスが未記入のままとなっているものが複数見つかりました。どの事業にも言えますが、CD/DVDのライセンス事業は契約締結を実行しなければ印税が支払われないビジネスなので、特に契約関連書類の管理が売上にダイレクトに影響します。「何かあってからじゃ遅い」と感じ、社内のキャビネットから無数の契約関連書類を取り出し、全ての案件がしっかり締結されているかを一つ一つ手作業で確認した経験があります。当時、印税処理を行う契約書管理システムは自社構築のものを扱っており、安全性は保証されていましたが、それを扱う組織が「誰が見てもすぐにわかる管理」をしていなければ、リスクは十分に起き得ます。管理状況を見える化し、「脱・属人化」する必要性を痛感した苦い経験でした。
様々な契約をまとめて管理するインフラとしての機能に魅力を感じ、導入を決意。
―Jリーグ入社後はどの様な課題の解決に着手されたのですか?
助川様:入社当時は、法務部がまだ独立した部として立ち上がっておらず、会社全体で契約書をデータベース化して管理する概念がありませんでした。そのため、当初は伝統的な形式で管理されていましたね。具体的には、契約書が締結されたら連番をつけ、エクセルにタイトルを入れて決裁番号と紐付け、ひたすらファイリングする…という流れです。
前職で培った危機意識もあってか、いずれ増えるであろう契約案件を今のうちに管理しやすい状態に整えることの必要性は感じていました。当然、リスク管理・適切な権利行使・新規契約交渉の優位性確保などの専門的な観点からもそれは間違いないと思いました。そこで、「いずれ複雑化するならば、今のうちに適切な契約管理のインフラ体制を敷こう」と一念発起し、同じような課題感を持っていた総務と連携して、契約管理状況を丸ごと電子化・データベース化して管理できるツール探しをスタートしました。
―「ContractS CLM」との出会いと、導入の決め手を教えてください
助川様:実は、最初に候補として挙がったのは、他社の契約ツールでした。ただ、前職の経験から、一つ一つの契約書を素早く締結して管理する体制を敷くことだけが法務の果たすべき役割ではないとを感じていました。ライセンス契約にしても何にしても、1つの契約には同時に様々な会社や担当者が絡むため、関連契約や関連書類が無数に紐付くのです。これらをまとめてデータベース化し、誰でも契約関連書類を探し出せるシステムあってこそ、来たるJリーグの事業成長にバックオフィスが追いつける環境が整うはずだ、ということを確信していました。
この要望をかなえる唯一のソリューションが、総務の責任者が見つけてきた「ContractS CLM」でした。作成・承認・締結・管理はもちろんのこと、様々な契約を一度にまとめて管理できるインフラとしての機能を持ち合わせていて、できることの幅の広さを知った時、法務としてとても興奮しました。どうしても契約業務について日頃関心が深いのはバックオフィスに限られるため、当時、現場ではその魅力にピンと来た者はほとんどいなかったのですが、これは現場の社員にも間違いなく有益なツールだと確信しました。そして、ほぼ時間をかけることなく、総務と連携して着々と社内における導入提案を進め、「ContractS CLM」を導入するプロジェクトを本格的に進めていきました。
社内勉強会を通して、現場社員の活用を推進。
―「ContractS CLM」導入時に感じたハードルとは。
助川様:なにより、現場の社員に活用してもらうための働きかけですね。そもそも、これまでJリーグの組織では契約システムを使ったことがなく、私が入って本格的に法務体制が敷かれるまでは日々の契約案件は各関連会社の各事業部の各担当者に委ねられていたので、これだけの数の社員に機能性の高いITシステムを使ってもらうのは、非常に困難を極めるわけです。
特に、数万人を抱える大企業でも、数人の中小企業でもない、「中間」であるJリーグの規模ってとても特殊なんですね。大企業の様に法務組織が整っているわけではないので、法務に契約のオペレーションを任せることもできません。他方で、中小企業の様に限られた契約案件をシンプルに管理できる状況でもないのです。だからこそ、これまで一人一人の担当者が本業の合間を縫って、ドラフトを作り、顧問弁護士に相談しながら外部と交渉して進めていた日々の努力に対し、突如新しく来た法務が「このシステム使ってやってください」と指示するのは、現場目線では決して歓迎的なものではないと思うのです。
―現場社員にも活用が広がったきっかけとは。
助川様:代表的な取り組みは、現場社員に向けた勉強会を2回実施したことです。最初の勉強会では「そもそも契約とは何か。それをマネジメントするとはどういうことか」という話から始めました。そこでは、「契約書」という”点”の書類だけで契約を捉えることがいかに本質的でないかをお話しました。契約書には様々な関連情報が紐づいているという発想を持つことはなかなか難しいことです。しかし、この関連情報が契約を適切に履行するためには必要不可欠ですし、万が一トラブルになった場合でも、裁判で証拠となりうるからしっかりと契約書とあわせてマネジメントしましょう…と、コンプライアンスの話とも絡めて説明することで、重要性を伝えられたかなと思います。
更に、契約をマネジメントすることの重要性がある程度啓蒙できたタイミングで実施したのが、社内向けの導入勉強会です。実際にデモ画面を現場社員にみせながら、特定の契約業務をケースに、各現場担当に向けて具体的な使い方を伝えていきました。
「ContractS CLM」は「1通の契約書業務を効率化する」ではなく、「様々な契約をマネジメントする」高度なシステムです。最初から急にその説明をしていたらきっと現場社員は苦手意識を抱えたと思いますが、「契約マネジメントの必要性」という課題を認識してもらった上で、ソリューションとしての「使い方」を説明したことで、社員からは「契約業務が自分ゴトで捉えられるようになった」などの好意的な声も挙がり、導入推進も軌道に乗っていきました。
社内向けの導入勉強会の様子
情報の一元化で、現場から「2周目の契約業務が楽になった」という声も。
―現場社員からはどのような声が挙がりましたか。
助川様:初期段階で契約業務を「ContractS CLM」にのせて行う際は、使い慣れていない担当者からは「使い方が複雑で、部署内で説明し直すのが大変」など、ネガティブな問合せも受けました。しかし、その声がポジティブなものに変わったのは、同じ様な契約を結ぶ時、つまり契約業務が「2周目」に回ったタイミングからです。例えば、似たような案件が発生した時や、外部から問合せがあった時に、『前に「ContractS CLM」にのせて対応した契約書を見たら全部分かった』という声が出てきたんです。
弊社は、毎年同じ契約案件が発生する場合ももちろんあり、それはプロジェクトとして一定の準備期間を要するため、そろそろ来年のことを考えなきゃ…という時に、「去年の契約ってどうしていたんだっけ?」となります。その時に、「ContractS CLM」を開くだけで最終版のWordの契約書がすぐに見つけられたり、契約交渉の流れが見えたりするのは、法務はもちろん、担当者目線でも大幅な時間短縮になります。
―法務の目線で感じる「ContractS CLM」のメリットとは。
「ContractS CLM」があることによるメリットというよりも、「ContractS CLM」がないことでいかに不便だったか、を実感したことでその必要性が身に染みたことが大きいです。
例えば、契約に関する情報のデータベースとその対象となる契約書PDFが別の場所で管理されていると、結局一つ一つの契約書を見に行かねばならないという二重作業が発生してしまいます。これが常に紐づいて管理されていることはものすごく負担が減りますし、情報の抜け漏れも防げるんですよね。
更に言えば、最近「契約書の電子化」がよく叫ばれてますが、ファイルストレージで契約書を管理するだけでは、結局キャビネットで管理していることと変わらないんですよね。一つ一つの契約書はもちろんのこと、関連資料もバラバラに管理されているので、それを整理しようと思えばファイル分けに膨大な管理作業が想定されるわけです。
一方で、「ContractS CLM」は、To-Do管理はもちろんのこと、人・情報・ファイルの全てが一つのクラウドサービス上で集約されるので、誰でもデータベースを適切に管理することができるのです。これは、まさに「属人化」の課題を一掃してくれるサービスだと思っています。
大勢の社員が関わるプロジェクトのマネジメント業務にもテスト的に応用開始。
―今後はどの様な場面で活用していきたいですか。
実際に”活用し始めている”といった話になるのですが、「1つの契約案件」ではなく、それを大勢の社員が関わるプロジェクトのマネジメント業務にもテスト的に応用を開始しています。
弊社は、年1回のペースでJリーグに関する規定を見直しているのですが、その規定は20種類以上あり、全部門から改定事案を募集し一つ一つ議論しながら改定内容を決めているため、膨大な労力がかかっています。また、その作業期間は8月から12月までと、半年近くかかる膨大なPJTであるため、メールベースでの見直しでは管理しきれない問題が生じていました。
そこで、「ContractS CLM」を使って、以下の様に一つ一つの作業段階にあわせてタスクをチケットに切って管理し始めたことで、タスクの進捗はもちろん、関係者や関連ファイル、その他の情報を一元的にマネジメントすることができるようになりました。
利用画面イメージ
今後は、この規約改定プロジェクトに限らず、各種契約案件を、「ContractS CLM」を通して様々なプロジェクトにまとめて管理することも視野に入れたいですね。その意味でも、様々なプロジェクトをツリー状にまとめたり、柔軟にフォルダ分けや階層分けができる機能などを拡充していただけると嬉しいです。
―これから導入を検討される方に向けてメッセージをお願いします。
助川様:これから導入を検討される方には、「どのような契約オペレーションを想定してContractS CLMの製品を導入推進するか」を具体的に描いておくことを非常にお勧めします。契約オペレーションというのは、組織の体制や経営者の考えによって、管轄するのが法務なのか現場なのかは、各社大きく異なると思います。しかし、企業の事業が成長するにつれて、現場社員がオペレーションに関わらざるを得ないフェーズはいずれにせよ必ずやってきます。だからこそ、システム導入の先、すなわち「活用」できている理想の契約オペレーションの状態をできる限り具体的に描いておくことは大事です。ContractS CLMの製品は、その様な企業様にはきっと「導入のその先」まで、力強く伴走してくれるはずです。導入推進者として現場の声を聴き、社内を巻き込む貴重な学びが得られるため、是非ともContractS CLMの導入をお勧めします。